ウナギ完全養殖が商業化へ加速 水産庁が7億円投資、今夏に人工ふ化ウナギのかば焼き試験販売

ウナギ完全養殖が商業化へ加速 水産庁が7億円投資、今夏に人工ふ化ウナギのかば焼き試験販売

ウナギの完全養殖技術が向上し、商業化に向けた取り組みが本格化しています。水産庁は2025年度補正予算で「ウナギ安定供給緊急総合対策」を打ち出し、ウナギの人工種苗研究と社会実装の加速に向けて7億円を計上しました。現在、ウナギは100%天然で採捕した稚魚を養殖しており、輸入依存度も高い状況です。この現状を変えるため、知的財産の国外流出を防ぎながら、民間事業者への技術移転を進める方針を掲げています。今夏には人工ふ化のウナギを使ったかば焼きも、初めて試験販売される見込みです。

国立研究開発法人水産研究・教育機構(横浜市)が開発した完全養殖技術を民間へ普及させるため、意欲ある企業が量産試験を実施する場合の水槽などの設備導入や専門家の派遣による技術指導の経費を支援します。同機構のウナギ研究拠点では、視察を積極的に受け入れており、2025年10〜12月だけでも3社が来訪しました。完全養殖への参入について社内協議が進み、担当者も決めている企業であれば、業種を問わず歓迎しているとのことです。採卵や飼育の現場を案内し、12週間の研修も可能となっています。

同機構は2010年、世界初のニホンウナギの完全養殖に成功しました。人工種苗の生産コストは2016年度には1匹4万円と高額でしたが、ヤンマーホールディングスや不二製油など民間の協力を得ながら、より安定的に量産する技術を磨いてきました。2024年度には同1800円、2025年度には一段と下がり、2027年度には1匹1000円を確実に下回る見通しです。経費の大部分は水温調節の光熱費や給餌・掃除の人件費のため、温泉の熱や廃熱などを活用すれば、より低コストを実現できると期待されています。

2026年は販売面でも大きな進展がありそうです。現在、ウナギ養殖は天然資源を守るため国の許可制で、飼育していい稚魚の上限数も決まっています。完全養殖のウナギは天然資源への負荷がないものの、現在は販売や養殖のルールが整っていないため、水産庁は制度面の見直しを検討しています。

山田水産が今夏に試験販売へ、近畿大学や東洋水産も参入

ウナギ養殖大手の山田水産(大分県佐伯市)は、環境が整い次第、今夏にも人工ふ化したウナギをかば焼きなどにし、消費者に試験販売することを目指しています。実現すれば世界初となります。同社は水産研究・教育機構の研究者が開発した技術が、民間の養殖事業者の手でも再現できるか検証するため協力してきました。専門の担当者や施設を置き、採卵や人工授精、ふ化などで一定のノウハウを習得し、2024年以降年1万匹以上の人工種苗を安定生産しています。2026年の丑の日商戦を目標に直営店「うなぎの駅」(鹿児島県志布志市)や電子商取引(EC)サイトで販売し、消費者の声を聞きながら一段の食味向上や量産も検討していく方針です。

ウナギの完全養殖は東洋水産や近畿大学もそれぞれ独自の技術で成功しています。近畿大学は2023年に大学として初めて完全養殖に成功し、現在も研究を継続中です。制度が整えば商業目的で養殖や販売もできるようになります。

2025年、ワシントン条約締約国会議でウナギを国際取引の規制の対象にするか議論されました。今回は否決されましたが、世界最大の消費国である日本に世界から厳しい目があることに変わりありません。ウナギは生態に謎が多く、完全養殖は魚介類の中で最難関のひとつとされてきました。60年以上多くの研究者がバトンをつなぎ、悲願の商業化まであと一歩のところまでこぎつけています。

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