
全国で病院を運営する法人の収益環境が急速に悪化していることが明らかになりました。東京商工リサーチが実施した「病院経営法人」業績動向調査によると、「病院」を経営する6266法人の最新期の医業収入合計は18兆9140億円と前期比1.0%増にとどまる一方、利益合計は前期の978億円の黒字から1135億円の赤字へと転落しました。調査対象の約半数にあたる3021法人(48.2%)が赤字となっており、赤字法人率はコロナ禍以降3年連続で上昇、5割に迫る水準に達しています。
コロナ禍が本格化した4期前(2020年4~2021年3月期)以降の推移を見ると、医業収入(売上高)は一進一退で横ばい圏を推移する一方、利益は3期前(2021年4~2022年3月期)をピークに減少が続いています。東京商工リサーチは、コロナ禍対応の政策支援や各種補助金によって一時的に利益を確保できた3期前に比べ、利益水準は1兆円以上落ち込み、「採算悪化が深刻化している」と指摘しています。
法人ごとの収益動向では、増収となった法人は2952(47.1%)、減収は3301(52.6%)で、減収法人が増収法人を5.5ポイント上回りました。減収となった3301法人のうち、売上高伸長率がマイナス5%未満の法人が1853(56.1%)で最多となり、マイナス5%以上10%未満が811法人(24.5%)、マイナス10%以上の大幅な減収に見舞われた法人も637(19.2%)に達しました。一方、増収となった2952法人では増収率5%未満が1988(67.3%)とボリュームゾーンを形成し、5%以上10%未満が600法人(20.3%)、10%以上の大幅増収は363法人(12.2%)でした。
損益別にみると、黒字法人は3245(51.7%)、赤字法人は3021(48.2%)で、赤字法人率はコロナ禍が吹き荒れた3期前の23.8%を底に2期前26.0%、前期35.0%と上昇を続け、最新期には半数近くにまで達しています。赤字が恒常化する法人も増えており、東京商工リサーチは「人件費や光熱費、医療材料費などのコスト増に診療報酬の伸びが追い付かず、地域医療を担う病院の経営体力がじわじわと削られている」と分析しています。
赤字拡大の背景と診療報酬改定への期待
今回の調査結果は、コロナ禍を経た医療提供体制の「ひずみ」が病院経営に顕在化していることを示しています。感染症対応の最前線となった急性期病院を中心に、病床確保や人員増強などに伴うコスト増が続く一方、外来・検査需要の戻りは地域差が大きく、収入の伸びは限定的です。加えて、人手不足を背景にした医療職の賃上げや、電気代・ガス代の高騰、医療機器・医薬品価格の上昇など、固定費を押し上げる要因が経営を圧迫しています。
2026年度の診療報酬改定では、医療従事者の処遇改善を大きな柱として本体部分が3.09%のプラス改定となり、約30年ぶりの大幅な引き上げと評価されています。しかし、物価高や人件費の上昇ペースを踏まえると、このプラス改定がどこまでコスト増を吸収できるかは見通せない状況です。東京商工リサーチは、赤字法人率がすでに5割近くに達している現状を踏まえ、「今後も赤字が続けば、設備投資の抑制や人員削減、病床削減や統廃合など、医療提供体制そのものに影響が及ぶ懸念がある」と警鐘を鳴らしています。
政府は地域医療構想や医師偏在対策を通じて医療提供体制の再編を進めていますが、足元では経営難に直面する病院が地方を中心に増加しており、地域医療の担い手をどう維持・支えるかが一層重要になっています。診療報酬の議論に加え、エネルギーコスト対策や人材確保支援など複数の政策を組み合わせた支援策が求められており、調査結果は医療制度の持続可能性を問う警鐘となっています。












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