H3ロケット7号機打ち上げ成功 新型補給機「HTV-X」がISSへ出発

H3ロケット7号機打ち上げ成功 新型補給機「HTV-X」がISSへ出発

宇宙航空研究開発機構は2025年10月26日午前9時00分15秒、鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターから国際宇宙ステーション向けに食料や実験装置を運ぶ新型無人補給機「HTV-X」1号機を搭載したH3ロケット7号機の打ち上げを実施しました。ロケットは順調に飛行を続け、打ち上げから約14分後にHTV-Xを予定軌道へ分離し、打ち上げは成功しました。

HTV-Xは、2009年から2020年まで9回のISS補給ミッションを成功させた「こうのとり」の後継機として開発された新型宇宙ステーション補給機です。今回の1号機には、二酸化炭素除去装置や各種実験装置、生鮮食品、NASAの宇宙食、窒素・酸素補給タンク、水補給タンクなどが搭載されています。開発費は初号機が打ち上げ費用を除き356億円で、全長約8メートル、太陽電池パネルを開くと幅約18メートルに達します。

先代の「こうのとり」と比較して、HTV-Xは輸送能力が大幅に向上しています。こうのとりの輸送能力は物資を入れる棚の重さ2トンを除き4トンでしたが、HTV-Xでは5.85トンへと約1.5倍に増加し、現行の米露の補給機を上回る世界最大級の輸送能力を実現しました。容積も60パーセント増え、大型の荷物も搭載できるようになりました。

さらに、打ち上げ直前の物資積み込み期限が80時間前から24時間前へと大幅に短縮され、生鮮食品など温度管理が必要な物資を新鮮な状態で届けられるようになりました。また、飛行中に搭載物資への電源供給が可能となり、冷凍庫や冷蔵庫を稼働させながら輸送できる機能も追加されました。ISS係留期間も最長2カ月から半年へと延長され、利便性が大幅に向上しています。

外見上の大きな変化として、こうのとりが円筒形の機体側面に太陽電池パネルを貼り付けた構造だったのに対し、HTV-Xは人工衛星のように左右に2枚の太陽電池パネルを展開する形態を採用しました。これにより発電量が1.5倍に増加し、長期間の技術実証ミッションにも対応可能となりました。太陽電池パネルは「く」の字型に角度を持たせることで、一年中いつでも打ち上げ可能で効率よく発電できる設計になっています。

今回の打ち上げで使用されたH3ロケット7号機は、固体ロケットブースターSRB-3を4本搭載した「H3-24W形態」と呼ばれるH3ロケットの最大構成での初飛行となりました。これまで打ち上げられた5機のH3ロケットはすべて固体ロケットブースターが2本の22形態でしたが、7号機では重い補給機を運ぶため4本に増強され、H3ロケットとして最も打ち上げ能力が高い「最強形態」での打ち上げとなりました。また、HTV-X専用のワイドフェアリングを採用し、打ち上げ直前まで貨物を積み込み可能な大型アクセスドアや、分離時の衝撃を抑える専用分離部も導入されました。

HTV-Xは打ち上げ後、順調に飛行を続けており、27日には高度調整のための初回のエンジン噴射を実施し、高度400キロのISSを目指して計画通りに飛行を続けています。ISS到着は日本時間10月30日午前0時50分頃の予定で、ISS長期滞在中の油井亀美也宇宙飛行士がロボットアームを操作してHTV-Xを捕捉し、ISSにドッキングさせる計画です。

打ち上げ後の記者会見で、JAXAの山川宏理事長は「HTV-X初号機はこうのとりの技術と経験を基に、またH3はH2Aの実績を引き継ぎ、宇宙輸送システムとしてさらに磨きをかける。自律性の維持、技術力の強化、産業振興への貢献、国際競争力確保を果たすべく、引き続き真摯に取り組んでいく」と述べました。H3ロケット開発を率いたJAXAの有田誠プロジェクトマネージャは「HTV-XはISSに向かうため、打ち上げに1秒の遅れも許されなかった。天候による延期を除きジャスト・オン・タイムで打ち上げられホッとしている」と安堵の表情を見せました。

「二刀流」補給機として新たな役割を担うHTV-X

HTV-Xは従来の物資輸送に加え、ISSを離脱した後も最長1年半にわたって宇宙空間を飛行しながら各種技術実証実験を行う「宙飛ぶ実験室」としての役割を持つ「二刀流」の宇宙船です。物資を届けた後もすぐに大気圏突入せず、ISS離脱後約3カ月間の技術実証ミッションフェーズにおいて、3つの主要な技術実証ミッションを実施する計画です。

1号機では、HTV-Xの特長である自在な飛行能力を活かし、ISSより高い高度約500キロメートルから日本大学の超小型衛星「てんこう2」を放出するH-SSODミッションを実施します。高度が高ければ衛星の運用期間が延長され、実用的な利用ミッションへの適用が可能となります。

また、世界初となる衛星レーザ測距用小型リフレクター「Mt. FUJI」を搭載し、地上からレーザ光を照射して反射光を観測することで、宇宙機の姿勢運動を推定する実験を行います。さらに、展開型軽量平面アンテナの軌道上実証「DELIGHT」と次世代宇宙用太陽電池の軌道上実証「SDX」も実施予定です。

HTV-Xは将来的に、米国主導の国際月探査「アルテミス計画」で月上空に建設される基地「ゲートウェイ」への物資輸送や、ISS運用終了後の地球低軌道の民間宇宙基地への補給も視野に入れて開発されました。2号機以降では国際標準の自動ドッキング技術の実証も計画されており、宇宙飛行士が常時滞在していないゲートウェイでの無人ドッキングに必要な技術を獲得する予定です。HTV-XはISSへ2029年度までに計5回の補給ミッションを想定しています。

今回の打ち上げ成功により、H3ロケットは5機連続の成功を達成し、成功率は80パーセントから83パーセントに向上しました。三菱重工業は2027年以降、フランスのユーテルサット社をはじめとする商業衛星打ち上げの複数契約を獲得しており、今後の商業市場での競争力強化が期待されています。

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