JR東日本とJALが旅客分野で包括提携 チケット一体化で訪日客を地方へ

JR東日本とJALが旅客分野で包括提携 チケット一体化で訪日客を地方へ

東日本旅客鉄道(JR東日本)と日本航空(JAL)は、旅客分野における包括提携を発表しました。両社は共同で旅行商品を開発し、鉄道と航空のチケット一体化を目指します。国内旅行者が減少傾向にある中、長年競合関係にあった鉄道と航空が協業に転じることで、訪日外国人客を中心に地方への観光誘致を強化し、日本の観光競争力を底上げする狙いです。

提携に向けて、両社の役員が参加する検討組織を発足させました。この組織では100以上のテーマで協業の可能性を探り、段階的に実施していく計画です。第1弾として地方創生を目的とした連携を進めます。具体的には、北海道南部と北東北を一体のエリアとした旅行商品を開発し、行き帰りは空路か新幹線を選べるようにします。割安な運賃設定とすることで、観光需要の取り込みを図ります。

JR東日本は2025年10月、野村総合研究所と共同で地域活性化を目的とした新会社「地域みらいブレインリンク」を設立しており、JALもこの新会社への参画を検討しています。地域創生に向けた取り組みを強化する構えです。

両社はすでに貨物輸送では連携しています。JR東日本の特急や新幹線の空きスペースを使って運んだ東北の産品を、JALの国際旅客便に積み替えてアジアに輸出する取り組みを2025年秋に開始しました。2026年1月13日からは、JR東日本の列車荷物輸送サービス「はこビュン」とJALの国際線航空貨物輸送を組み合わせた新輸送サービス「JAL de はこビュン」の販売も始まっています。こうした連携を土台に、旅客輸送を含めた包括的な提携へと進化させる方針です。

チケット一体化で利便性向上、2029年度導入目指す

両社は鉄道と航空のチケット一体化についても協議に入りました。必要なシステムの改修などを行った上で、乗客が1回の予約で航空便と鉄道移動を1枚のチケットのみで済むようにします。2029年度以降の導入を目指しています。これまでもJALのウェブサイトからJR東日本のチケットを購入できましたが、チケットは別々でした。一体化により、予約の手間が省けるだけでなく、航空便が遅延した際の列車変更にも対応しやすくなると期待されます。

欧州では航空と鉄道の連携が先行しています。ドイツではルフトハンザドイツ航空とドイツ国鉄が「AIRail」サービスを提供し、フランスでは「TGV Air」として複数の航空会社とフランス国鉄が連携しています。これらは航空と鉄道のコードシェアにより、一体的なチケット購入や乗り継ぎ保証を実現しています。JR東日本とJALの提携は、日本でこうした取り組みを本格化させる初の試みとなります。

JR東日本は2031年度に羽田空港への新線「羽田空港アクセス線」の開業を予定しており、東京駅から羽田空港まで最短18分で結ばれる見込みです。この新線開業により、JAL便とJR東日本の新幹線の接続がさらに強化され、チケット一体化の利便性が高まることが期待されます。

両社がタッグを組む背景には、国内の人口減少があります。観光庁によると、2024年の国内延べ旅行者数は約5億4000万人と、2017年より1億人強減りました。JR東日本の東北地方の在来線利用者も減少傾向にあります。競争より連携を優先し、国内需要の減少を訪日外国人で補う必要性が高まっています。

JALは2025年3月に公表する次期中期経営計画で、2028年度までに国内線に占める訪日客比率を現在の3%から10%程度に高める方針を盛り込む予定です。JR東日本との連携を活用し、地方への訪日客誘致を加速させる構えです。2024年の訪日外国人の延べ宿泊者数は、北海道の928万人泊に対し、東北は210万人にとどまっています。チケット一体化などで利便性が高まれば、東北の宿泊者が増える可能性があります。東北6県では2024年に外国人延べ宿泊者数が229万人泊と過去最多を記録しましたが、まだ成長余地は大きいとみられます。

主な生活拠点とは別の特定地域で暮らす「2拠点居住」の推進組織の設立も検討しています。JALはすでに北海道で「JAL 2地域居住クラブ」の実証実験を行っており、JR東日本も新潟県三条市などで二地域居住の取り組みを進めています。両社の連携により、移動と滞在を組み合わせた新しいライフスタイルの提案が期待されます。

航空と鉄道は旅客輸送で長年のライバル関係にありました。東京-大阪間ではJR東海とJAL・全日本空輸(ANA)が利便性を競い合ってきました。JR東日本も東京-秋田間などで航空便と競合関係にあります。しかし、人口減少という共通の課題を前に、両社は協業による新たな価値創出を選択しました。今回の提携が実現すれば、日本の交通インフラのあり方に大きな変革をもたらす可能性があります。

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