
韓国のソウル中央地裁は19日、2024年12月に「非常戒厳」を宣言した行為などをめぐり、内乱首謀などの罪に問われた尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領被告(65)に無期懲役の判決を言い渡しました。 検察側は内乱首謀罪の重大性を強調し、1月の論告求刑公判で死刑を求刑していましたが、裁判所は量刑で一段軽い無期懲役と判断し、死刑は回避されました。
起訴状などによりますと、尹前大統領は2024年12月3日、戦争などの非常事態でないにもかかわらず「非常戒厳」を宣言し、国会周辺に軍を動員するなどして、国の憲法秩序を乱す目的で暴動を起こした内乱首謀などの罪に問われていました。 韓国の内乱首謀罪の法定刑は死刑または無期懲役などとされ、過去には全斗煥元大統領に死刑が求刑され、最終的に無期懲役が確定した例があり、今回も歴代政権をめぐる重大事件として注目されてきました。
尹被告はこれまでの公判を通じて起訴内容を全面的に否認し、「非常戒厳は大統領の国家緊急権の行使であり、内乱には当たらない」と主張してきました。 これに対し、特別検察官は「権力を独占し、長くその座にとどまろうとする欲のために軍や警察を動員した反国家的な憲法秩序破壊事件だ」と厳しく非難し、「反省もなく量刑上酌量すべき事情はない。死刑しかない」と訴えていました。
19日の判決公判で、ソウル中央地裁は「内乱罪は国家の存立と憲法的機能を破壊しうる特に重い犯罪である」としつつも、個別の行為態様や結果、他の関係者の処分状況などを総合的に考慮し、死刑ではなく無期懲役とする判断を示しました。 一方で、尹被告側は「非常戒厳は国家危機に対する対応だった」として無罪を主張しており、判決を不服として高裁に控訴する見通しで、今後は控訴審での審理に舞台が移ることになります。
尹前大統領をめぐっては、「非常戒厳」宣布後の2025年1月に、韓国の高官犯罪捜査庁と警察でつくる合同捜査本部が内乱容疑で身柄を拘束しており、現職大統領として初の逮捕事例となったことでも波紋を呼びました。 その後、国会は弾劾訴追案を可決し、憲法裁判所が罷免を決定したことで尹氏は任期途中で失職し、今回の刑事裁判につながっています。
妻・金建希氏にも実刑判決 韓国政界にさらなる打撃
尹前大統領をめぐる一連の捜査では、妻の金建希(キム・ゴンヒ)被告に対しても実刑判決が相次いでおり、韓国政界に大きな影響を与えています。 ソウル中央地裁は1月28日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)から高級ブランド品の提供を受けたなどとしてあっせん収賄などの罪に問われた金被告に対し、求刑15年に対して懲役1年8か月の実刑判決を言い渡しました。
裁判所は判決で、金被告が高級ブランド品の提供を断ることができず「自分を飾ることに取り憑かれていた」と指摘する一方、品物を自ら要求した事実や、依頼を夫の大統領に実現させようとした行為は認められないとして、あっせん収賄の一部を有罪、その他の株価操作などの罪は証拠不十分で無罪と判断しました。 判決直後、特別検察官は「到底納得できない」として控訴する方針を表明し、弁護側も控訴を含めて対応を検討するとしており、こちらも高裁での審理に移る見通しです。
韓国では、尹前大統領に対する内乱首謀事件の裁判で死刑が求刑され、世論調査でも「死刑相当」とする意見が多数を占めていたと報じられるなど、憲政史上まれにみる強い関心が集まってきました。 それだけに、1審で無期懲役とされた今回の判断をめぐっては、今後も与野党や市民の間で評価が分かれる可能性が高く、最高裁まで争われる長期の訴訟となることも予想されています。
尹政権は、「非常戒厳」を通じて野党の議会運営を「内乱を企てる反国家行為」と批判し、自由民主主義と憲政秩序を守るための措置だったと正当性を主張してきましたが、弾劾と刑事訴追によって歴代政権のなかでも極めて厳しい審判を受ける形となりました。 今回の無期懲役判決と金建希被告への実刑判決は、韓国の民主主義における大統領権限のあり方や司法の独立性を巡る議論を一段と加速させることになりそうです。








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