将来の年金は本当にもらえるのか?膨張する社会保障費と世代間格差の実態

将来の年金は本当にもらえるのか?膨張する社会保障費と世代間格差の実態

日本の国家予算における社会保障関係費の割合は、1970年代の約5%から現在は25%へと急拡大しています。この50年間で5倍に膨れ上がった背景には、世界に例を見ない速度で進行する人口高齢化があります。

現役世代の多くが「自分たちは年金をまともに受け取れるのか」「老後資金が足りないのではないか」という不安を抱える中、2025年には新たな制度改正が実施されました。

しかし改正内容を詳しく見ると、現役世代の負担増が先行し、将来給付の改善は不透明なままです。少子高齢化が加速する日本で、「私たちの老後生活はどうなるのか」をデータと制度の実態から検証していきます。

<目次>

人口構造の激変が招いた財政危機

激変する日本の人口構造

戦後日本の社会保障制度は、経済成長と人口増加を前提に設計されてきました。1970年当時、日本の総人口は約1億400万人で、そのうち65歳以上は約730万人、高齢化率は7%程度でした。

働く世代約9人で高齢者1人を支える「胴上げ型」の人口構造であり、年金財政には余裕がありました。

ところが半世紀を経た現在、状況は一変しています。総人口は約1億2,300万人とわずかな増加に留まる一方、65歳以上の人口は約3,600万人に達し、高齢化率は29%を超えました。

現役世代約2人で高齢者1人を支える「騎馬戦型」となり、さらに2040年には1.5人で1人を支える「肩車型」へ移行すると予測されています。

この人口動態の変化が、社会保障費の膨張を引き起こしているのです。1970年度の社会保障関係費は約3兆円でGDP比5%程度でしたが、2025年度にはGDP比25%に達する見通しが示されています。

また、年金制度における保険料と給付の変化は顕著です。国民年金保険料は1970年度に月額450円(年額4,800円)だったものが、2003年度には月額1万3,300円(年額15万9,600円)へと約30倍に上昇しています。

一方、老齢基礎年金の満額は2004年度に月額6万6,208円(年額79万4,500円)だったものが、2025年度には月額6万9,308円(年額83万1,700円)となっています。

22年間でわずか数%の増加に留まっており、物価上昇を考慮すると実質的な給付水準はほぼ横ばいか微減傾向にあるのが現状です。

保険料を納める現役世代(20〜64歳)の人口は、1995年の約8,000万人をピークに減少を続け、現在は約7,300万人となっています。

収支バランスの悪化を補うため、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が約200兆円を株式や債券で運用し、その運用益を給付に充てていますが、人口構造そのものが変わらない限り、制度の持続可能性は根本的に改善しない見込みです。

世代別の損得格差と給付水準の低下

年金を受給している老夫婦

年金制度における世代間の損得を分析すると、明確な格差が浮かび上がってきます。複数の研究機関による試算では、現在の高齢世代は生涯で納める保険料総額に対し、受け取る年金総額が約2〜8倍になるとされています。

ところが現在40代の世代ではこの倍率が2倍程度にまで低下し、30代では約1.4倍、20代以下になると1.0〜1.1倍、つまりほぼ「払った分しか戻ってこない」か、場合によっては払い損になる可能性すら指摘されているのです。

さらに問題なのは、将来の給付水準引き下げが既に制度に組み込まれている点です。「マクロ経済スライド」と呼ばれる調整の仕組みにより、物価や賃金が上昇しても年金額の増加はそれより低く抑えられ、実質的な購買力は徐々に目減りしていく設計となっています。

厚生労働省が5年ごとに実施する財政検証の2024年結果では、現役世代の手取り収入に対する年金額の割合が、現在の約61%から将来的には50〜44%程度まで低下すると試算されています。

さらに受給開始年齢の引き上げも議論されており、現在の原則65歳から68歳または70歳への引き上げを検討する動きもあります。平均寿命が延びているとはいえ、受給開始が遅れれば生涯受給総額は確実に減少する見通しです。

2025年改正の中身と負担増の実態

年金手帳

2025年6月に成立した年金制度改正法は、「多様な働き方への対応」と「高齢期の生活安定」を掲げています。しかし改正内容を精査すると、現役世代の負担増が色濃く反映されています。

改正の柱の1つは、パートタイム労働者への社会保険適用拡大です。現在は「従業員51人以上の企業」「週20時間以上勤務」「月収8万8,000円以上」という条件を満たす場合に社会保険加入が義務付けられています。

これが段階的に拡大され、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上、2035年10月には10人以下の企業へと、今後10年かけて企業規模要件が撤廃される予定です。

さらに月収8.8万円以上という賃金要件も3年以内に撤廃される方向です。この改正により、新たに約300〜400万人が社会保険に加入し、保険料収入は年間数千億円増加すると見込まれています。

月収10万円のパート労働者の場合、厚生年金と健康保険を合わせた社会保険料として約1万5,000円が天引きされ、手取りは8万5,000円に減少する計算となります。

2つ目の改正は在職老齢年金制度の見直しです。現在は年金と給与の合計が月51万円を超えると年金が減額される仕組みですが、2026年4月から基準額が62万円に引き上げられます。

高齢者の就労促進が目的とされますが、実際に恩恵を受けるのは高所得の高齢者層であり、平均的な年金受給者には無関係な改正となっています。

3つ目は厚生年金の標準報酬月額上限の引き上げであり、現在の65万円から75万円へ段階的に引き上げられ、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円となる計画です。

高所得者の保険料負担を増やし、財政基盤を強化する狙いですが、その増収分が現役世代の将来給付増に直結するわけではありません。

これらの改正に共通するのは、保険料収入の増加を図る一方で、将来給付の改善については明確な保証がない点です。世代間格差の本質的解決には至っておらず、むしろ現役世代の不信感を深める結果となっている可能性があります。

自助努力と制度改革の必要性

iDeCo

年金制度への不安が募る中、個人レベルでの老後資金準備の重要性が増しています。公的年金だけに頼らず、私的年金や資産運用を組み合わせた対策を講じることが重要です。

具体的な選択肢として、iDeCo(個人型確定拠出年金)があります。掛金が全額所得控除となり、運用益も非課税、受取時も税制優遇がある仕組みです。

2025年の制度改正でも拡充が図られており、NISA(少額投資非課税制度)も年間投資枠が拡大され、長期的な資産形成手段として注目されています。

ただし、こうした自助努力には限界もあります。低所得者層には投資に回す余裕資金がなく、格差拡大に繋がる懸念があるほか、金融リテラシーの差により適切な運用ができない層も存在します。

根本的な解決には、制度そのものの抜本的改革が不可欠です。専門家からは、現役世代の負担軽減と引き換えに高齢世代の給付を一部調整する案や、積立方式への段階的移行案などが提案されていますが、高齢者の政治的影響力が強い中、実現のハードルは高いのが現状です。

関連記事

コメントは利用できません。

最近のおすすめ記事

  1. 宇宙で半導体製造時代の幕開け:Space Forgeが軌道上で1,000℃プラズマ生成に成功
    SF小説の世界でしか考えられなかった宇宙空間での製品製造が、今、現実の産業として目を覚ましつつありま…
  2. 高市早苗首相、1月23日に衆院解散表明 戦後最短16日間の「超短期決戦」へ
    高市早苗首相は19日、首相官邸で記者会見を開き、23日に召集される通常国会の冒頭で衆議院を解散する意…
  3. 行政の一年は、単にカレンダー上のサイクルで動いているわけではありません。そこには、政策が生まれ、地域…

おすすめ記事

  1. 2023年11月4日(土)に第51回横浜矯正展が開催された横浜刑務所の入り口

    2023-12-29

    『横浜刑務所で作ったパスタ』で大行列!刑務所見学もできる横浜矯正展とは?

    横浜矯正展は、横浜刑務所、横浜少年鑑別所、公益財団法人矯正協会刑務作業協力事業部主催で2023年11…
  2. モー娘。北川莉央、活動休止継続を発表 12月復帰目指し準備進行中

    2025-9-12

    モー娘。北川莉央、活動休止継続を発表 12月復帰目指し準備進行中

    アイドルグループ「モーニング娘。'25」の北川莉央(21)が、当初予定していた今秋の活動再開を延期し…
  3. 2025-8-25

    FC2創業者の高橋理洋被告に執行猶予判決 弁護側は「日米の価値観の違い」主張し控訴へ

    動画投稿サイト「FC2」でわいせつ動画を配信した罪に問われていたFC2創業者の高橋理洋被告(51)に…

2025年度矯正展まとめ

2024年に開催された全国矯正展の様子

【結果】コンテスト

【結果発表】ライティングコンテスト企画2025年9-10月(大阪・関西万博 第4回)

アーカイブ

ページ上部へ戻る