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「モバイルバッテリー騒動」に見舞われた2025年…安全性が低下した製品の回収を国はどう取り組むか?

モバイルバッテリーが大騒動とも呼ばれる事態が広がった2025年。モバイルバッテリーは、今やスマートフォンやタブレットの普及とともに、生活必需品となっています。しかし、その内部に使われているリチウムイオンバッテリーは、使用による劣化と共に発火しやすくなると指摘され始めました。
また、衝撃に弱いため固い地面に落下させたことで発煙事故を起こすなど、製品としての脆弱性も露呈しています。実際に火災の原因になり、数百人の乗客が一度に死亡してしまう航空事故につながるなど、安全性への不安は一気に高まっていると言えるでしょう。
旅客機や電車の中でこうした火災が発生した場合、現場に居合わせた人の逃げ場はありません。そこで日本も含む世界各国は、使い古しのモバイルバッテリーの回収を目的として政策の導入が進められています。身近で便利な製品が抱えるリスクに、社会はどう向き合うべきなのでしょうか?
<目次>
相次ぐ発火事故が発生した2025年

私たちはいま、「製品を充電するための製品」を日常的に持ち歩く時代を生きています。
音楽を聴く際に使うワイヤレスイヤホンも充電ケースが付属され、スマートフォンも充電を切らさないように、普段から予備の電源を携帯するのが当たり前になりました。
しかし、近年ではそんなリチウムイオンモバイルバッテリーの出火事故の多発が問題視されています。
2025年8月22日、東海道新幹線の東京~新大阪間の「のぞみ」車内で、座席背面ポケットに入れられていた乗客のモバイルバッテリーから出火する事故が発生しました。
さらに、その1週間経たないうちに、今度は大宮~上野間の上越新幹線「とき」で乗客のキャリーケースに収納されていたモバイルバッテリーが発火する事故が発生。こちらは軽傷とはいえ、負傷者が出る事態となってしまいました。
こうした事故は、旅客航空機でも発生しています。2025年3月20日、中国・杭州発の香港航空115便でモバイルバッテリーが火元と思われる火災事故が発生。乗員と乗客が荷物棚に水をかける様子を収めた動画がSNSで拡散され、大きな波紋を呼びました。この事故をきっかけに、各国の交通当局は航空会社に対して「収納棚へのモバイルバッテリー収納禁止の徹底」を呼びかけています。
同じ県でも市町村によって異なるモバイルバッテリーの処理基準

モバイルバッテリーは再充電を前提にする製品ではありますが、それは半永久的に使用できるわけではありません。一般的に、リチウムイオンモバイルバッテリーの寿命は500放充電サイクルとされ、それ以上の利用は安全上の懸念があるとされています。
では、こうした「使い古しのモバイルバッテリー」は、どのように処分すべきなのでしょうか?
現状、モバイルバッテリーの捨て方に関しては自治体によってルールが異なります。たとえば、静岡市では2026年1月からモバイルバッテリーの回収に関する新しい方法が加わり、リチウムイオン・ニカド・ニッケル水素は全て不燃・粗大ごみとして収集することになりました。
・戸別収集区域(安倍6地区以外)は、単体でも申込が可能です。
・電池の取り外せない家電は、本体ごと不燃・粗大ごみとして収集します。袋に入る小さなものは、中身が見える袋にまとめて「充電池」「不用」「氏名」を表示してください。袋に入らない大きなものは、本体に「充電池」「不用」「氏名」を表示してください。
・集積所収集区域(安倍6地区)は、申し込み不要です。袋に入る小さなものは、中身が見える袋にまとめて「充電池」と表示してください。袋に入らない大きなものは、本体に「充電池」と表示してください。
・膨張や破損がなく、リサイクルマークが付いているものは、一般社団法人JBRCの協力店でも回収しています。
引用:ごみ・リサイクル 静岡市
一方、同じ静岡県下の自治体でも熱海市は公式サイトで以下のように説明しています。
スマートフォンやパソコン、デジタルカメラなどに使われている充電式電池(ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池)は、主に一般社団法人JBRCで回収し、リサイクルなど適正処理を行っています。そのため、市では回収しておりません。
引用:電池の捨て方 熱海市
どうやら、市町村ごとに処理施設の有無や処理能力が異なることが、回収方法の「温度差」を生んでいると言えそうです。
しかし、住民の立場から見れば「住んでいる場所によって捨て方が違う」という状況は分かりづらく、利便性を損なうだけでなく、誤った廃棄による発火事故のリスクも高めかねません。回収を徹底し、事故を未然に防ぐという観点からも、制度のばらつきは大きな課題でしょう。
ではこの問題は、中央省庁で議論されているのでしょうか?
環境省の見解
そこで今回は、この問題をどう受け止め、どのような対策を検討しているのかを探るため、環境省と経済産業省にメールを通じて取材を行いました。
まずは、環境省の回答から紹介します。
Q:「リチウムイオンモバイルバッテリーの捨て方」について、消費者に対してどのように呼びかけているのでしょうか? そうした周知活動等は既に実施されているのでしょうか?
A:リチウムイオン電池やその使用製品に起因する廃棄物処理施設等での火災事故を防止するためには、リチウムイオン電池の発火のリスクや適切な廃棄方法等を、市民に周知啓発することが重要です。
環境省では、これまでも自治体等が活用可能なポスターや動画の啓発ツールの作成や、環境省とJリーグの連携協定を活用し、Jリーグ及び自治体と連携し、試合会場におけるモバイルバッテリーの回収イベント等を行いました。また、令和7年度は、9月から12月の4か月間を「リチウムイオン電池による火災防止強化キャンペーン」、特に11月を「リチウムイオン電池による火災防止月間」として、周知啓発の強化を図りました。
また、昨年12月に関係省庁で取りまとめた「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」にも記載しておりますが、国民・事業者向けにリチウムイオン電池を使用した製品を扱う際の心がけとして、「賢く選ぶ」(Cool choice)、「丁寧に使う」(Careful use)、「正しく捨てる そして資源循環」(Correct disposal with better recycling)の「3つのC」を呼びかけていくこととしています。
Q:現状、モバイルバッテリーの回収の仕方・手順は、自治体によって異なってしまうのが現状だと思われます。これを統一化するための動きや施策等はありますか?
A:一般廃棄物の処理は、廃棄物処理法に基づき市町村がその責任主体となる自治事務として実施しています。そのため、御指摘のとおり、家庭から排出されるモバイルバッテリーを含めたリチウムイオン電池に関しても、自治体によって回収方法を検討し実施していただいており、ごみステーションでの回収や、公民館、小売店等に設置したボックスでの回収など、様々な方法があると承知しています。
環境省では、令和7年3月に市区町村において、リチウムイオン電池及びその使用製品の適切な回収を更に促進する観点から、家庭ごみの標準的な回収方法等を示した「市町村における循環型社会づくりに向けた一般廃棄物処理システムの指針」を改訂し、リチウム蓄電池を1つの分別回収区分として設定しました。また、令和7年4月には市区町村に対して安全な回収・処理体制の構築に向けた通知の発出を行いました。
引き続き、全ての自治体においてリチウムイオン電池等の分別回収が行われ、リチウムイオン電池等による火災事故が防止されるよう、取組みを進めております。
引用:市町村における循環型社会づくりに向けた 一般廃棄物処理システムの指針 環境省
今年4月に施行される改正資源有効利用促進法では、モバイルバッテリーと携帯電話、電子タバコが「指定再資源化製品」に追加されます。これにより、メーカーや輸入業者には自主回収及び再資源化が義務付けられます。
参考:資源の有効な利用の促進に関する法律の一部改正について 環境省
ただし、「自治体が主導するモバイルバッテリー回収の仕組みづくり」となると、やはりそう簡単な話ではないようです。やはり前述のように、個々の自治体が抱える事情や背景があります。処理施設の有無や体制の違いが大きく影響するため、中央省庁がトップダウン方式で絶対的な指示を下すということが現状では難しいことがわかりました。
経済産業省の見解
次に掲載するのは、経済産業省への問い合わせとその回答です。
Q:モバイルバッテリーの回収についてこれを製造・販売するメーカーにはどのように呼びかけているのでしょうか? メーカーが何かしらの方法で回収を行うよう経済産業省が指示を出す、というようなことはしているのでしょうか?
A:これまで開催した審議会及び開催後等における各報道機関による報道等をいただいたほか、それを見た事業者からの問合せが多数寄せられたところであり、現時点で何かしら特段の呼びかけは考えておりません。
今後、取組状況の調査等をするなかで、適宜、周知していくことは考えております。
また、回収方法について、具体的な方法は、事業者が自分の製造・輸入販売する製品に対する効果的な方法が何か考えて取り組んでいただくものであり、このような方法で回収しなければならないというような指示は考えておりません。今後、効果的な取組事例があれば、当省ウェブサイトで掲載するなど紹介することは考えられるところです。
経産省は、製品安全4法(消費生活用製品安全法、ガス事業法、電気用品安全法、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律)に関連する製品を流通させている事業者で、一定期間連絡が取れていない企業を抜粋したリストを公開しています。これは実質的に、経産省からの連絡に応じないモバイルバッテリーメーカーの一覧になっています。
こうした具体的なアクションを起こしつつも、「日本ならではの限界」をも感じることができるのではないでしょうか。
日本の中央省庁とその担当大臣は、民間企業に対して強い権限を行使できる立場にいるのではなく、できることとしては「協力要請」と「指針の作成(法的強制力はありません)」、「周知活動」、そして「法整備の検討(それに向けた有識者会議の編成)」に限られます。
これは、日本独自の合議を重んじる姿勢がここにも表れていると言えるでしょう。しかし、そのような枠組みのなかにあっても、いま現実に起きている事態をきちんと認識し、問題の解消に向けた姿勢を示している点は、明記しておく必要があるのではないでしょうか。

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