カンボジア、「詐欺国家」返上へ 外国人13万人超が出国する中で問われる本気度

カンボジア、「詐欺国家」返上へ 外国人13万人超が出国する中で問われる本気度

国際的な詐欺拠点と指摘されてきたカンボジアで、「詐欺撲滅」を掲げた当局の取り締まりが加速しています。 カンボジア政府は各国からの強い圧力を受け、2026年に入ってからだけでも詐欺拠点とみられる施設約200か所を摘発し、3500人以上を拘束、詐欺への関与が疑われる外国人は累計で約13万人が出国したとしています。 長年、カジノや経済特区を舞台に中国系組織などの国際詐欺ビジネスがはびこってきた中で、汚名返上の試みが本格化している格好です。

首都プノンペンのインドネシア大使館には、摘発を恐れて拠点から逃げ出した人々が押し寄せています。 今年3月下旬、大使館が借り上げた工場には300人を超えるインドネシア人が雑魚寝しながら帰国の順番を待っていました。 彼らの多くは、スマトラ島などから「高収入のIT職」などと誘われて渡航したものの、南部カンダル州や沿岸部シアヌークビルのカジノ施設に連れて行かれ、母国などに投資詐欺やロマンス詐欺の電話をかけさせられていたと証言しています。

インドネシア人男性の一人は、配達員から転職する形で昨年末にカンボジアに渡り、月給600ドル前後と現地物価から見れば高額の報酬を約束されたといいます。 しかし、拠点は中国人組織が実質的に仕切り、誘い文句を間違えたりノルマを達成できなかったりすると、同じインドネシア人の「指導役」から暴力を受けたと打ち明けています。 一帯の摘発が進んだ今年1月、彼は命からがら大使館に駆け込み、「後悔している。普通の生活に戻りたい」と語りました。

米平和研究所などの分析を引用した日本の報道では、カンボジアを拠点とする架空投資やロマンス詐欺などの不正収益は、年間で125億ドル(約2兆円)を超えるとの推計も紹介されています。 被害は欧米やアジア各国に広がり、日本人も標的となってきました。 日本メディアの現地取材によると、タイ国境やシアヌークビル周辺のカジノにはレストランや売店、ヘアサロンまでそろった「城塞都市」のような詐欺アジトがあり、多いところでは1万人以上が共同生活を送りながら詐欺行為に従事していたといいます。

カンボジア政府は2025年半ば以降、国境付近を中心に大規模な一斉摘発を繰り返し、「2026年4月までに特殊詐欺を根絶する」との目標を公言しました。 国境地帯や経済特区ではこれまでに2000人規模の容疑者が拘束されたとの報道もあり、9割前後が中国人だったと伝えられています。 一方で、取り締まり強化が進む一方の裏で、摘発を逃れた組織が他地域や他国に拠点を移す「いたちごっこ」も懸念されています。

政権中枢との癒着疑惑と「構造改革」の行方

カンボジア政府の詐欺撲滅キャンペーンは、国際社会に向けたイメージ回復と投資呼び込みを狙った側面が強いとみられています。 読売新聞などの報道では、こうした国際詐欺拠点が長年放置されてきた背景として、政権中枢と地元有力者、そして中国系犯罪組織との癒着疑惑が繰り返し指摘されてきたと伝えています。 カジノや経済特区の開発利権に絡み、地元当局が見て見ぬふりをしてきた構造を断ち切れるかどうかが、今後の最大の焦点です。

実際、カンボジア当局は2025年6月以降の取り締まり強化で、少なくとも数万人規模の外国人を強制送還し、さらに20万人超が「自主的出国」を余儀なくされたとの統計も現地から報じられています。 しかし、これらの数字には、ブローカーにだまされて現地に連れてこられた人身売買被害者や、自由を奪われて詐欺行為を強要されてきた人々も多く含まれているとされています。 人権団体は、強制労働や拷問に近い暴力が横行してきた実態の全容解明と、被害者の保護・補償が不十分だと批判しています。

他方、日本の警察庁が公表した犯罪収益移転の危険度調査では、東アジアと東南アジアにおけるサイバー関連詐欺の規模は、年間数百億ドル規模に膨らんでいると分析されています。 カンボジア単独の問題ではなく、ミャンマーやラオスなど周辺国にも詐欺拠点が分散しつつある構図が浮かび上がっており、カンボジアの締め付けが進むほど、周辺国に「押し出し」が生じるリスクも指摘されています。

カンボジア政府は「詐欺国家」の汚名を返上し、観光や正規投資を呼び戻したい考えですが、そのためには一時的な摘発の強化にとどまらず、政権に近い権力エリートや治安当局の関与も含めた構造的な腐敗の是正が不可欠だとされています。国際社会や被害国の捜査当局との本格的な情報共有や資金洗浄対策の強化に踏み込めるかどうかが、「詐欺撲滅」が看板倒れに終わるのか、それとも本格的な転換点となるのかを左右しそうです。

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