レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラの戦闘員らが所持するポケベルが17日に一斉に爆発し、大惨事となりました。中東メディアによると、少なくとも9人が死亡し、2,750人が負傷したとのことです。
映像には、ポケベルを手にした人物の手元から破片が飛び散る様子が捉えられています。発煙などの予兆はなく、突然の大きな破裂音とともに、周囲に衝撃が広がりました。
欧米メディアは米当局関係者の話として、爆発したポケベルは台湾のメーカー製で、レバノンに輸入される前にイスラエル側が約5,000台に爆発物を仕込んだと報じています。遠隔操作で爆発するよう仕組まれていた可能性が指摘されており、情報端末のサプライチェーン(供給網)への侵入が、安全保障上の新たなリスクとして浮上しています。
公共政策調査会の板橋功研究センター長は、「例えばポケベルのソフトウエアに侵入口となるバックドア(裏口)などを仕込んでおき、特定の通信を受信した際に爆発物が起動するよう仕組むことは技術的には可能だ」と述べています。
今回の事件は、情報機器を悪用したテロの脅威を浮き彫りにしました。サプライチェーンの各段階で、セキュリティ対策の強化が急務となっています。
ヒズボラの指導者ナスララ師、「(イスラエルによる)宣戦布告だ」と非難
板橋功研究センター長は、「通信機器を使った爆破テロは過去にもあったが、供給網を狙って数千台規模の爆破を起こした事例は初めてではないか」と指摘。同様のテロが続く可能性を懸念しています。
情報端末へのバックドア仕込みのリスクは以前から指摘されていました。2022年の北京冬季五輪では、中国政府が推奨するアプリを介した情報流出の恐れから、米政府が選手団に重要データを入れないスマホを持ち込むよう警告したこともありました。
IoT機器の普及で、通信機能を備えた自動車や家電が増加する中、製造や流通の過程で不正な機能が組み込まれる危険性は高まっています。今回はポケベルが標的となりましたが、より高度な端末も同様のリスクを抱えているといえるでしょう。
ヒズボラの指導者ナスララ師は19日のテレビ演説で、一連の爆発を「(イスラエルによる)宣戦布告だ」と非難し、報復を宣言しています。ヒズボラの幹部やインフラに大きな被害はないと述べつつ、「戦争を止める唯一の道は、イスラエルがガザ地区の戦闘をやめることだ」と主張しました。