AVメーカーの船井電機が倒産したことで、インターネット広告大手のサイバー・バズにも大きな影響が及んでいます。船井電機の倒産が報じられた翌日、サイバー・バズの株価が急落しました。
サイバー・バズは2023年4月から、船井電機の連結子会社だった脱毛サロン「ミュゼプラチナム」のアフィリエイト広告を担当。ところが2023年12月以降、ミュゼプラチナムからの支払いが滞り始めました。
2024年5月、サイバー・バズは22億円もの売掛金が取立不能、または取立遅延の恐れがあると公表しました。この影響で、2024年9月期第2四半期決算では20億円近い純損失を計上し、自己資本比率も大きく低下しました。
一方、船井電機は2023年4月にミュゼプラチナムを連結子会社化。美容機器事業とのシナジー効果を狙った買収でしたが、わずか1年後の2024年3月には、クーポンサービス「Cポン」を展開するKOC・JAPANへ売却しています。
この間、ミュゼプラチナムの代表取締役会長を務めていたのは、船井電機の当時の代表だった上田智一氏でした。つまり、広告費の未払いについては、船井電機側も把握していたことになります。
船井電機の倒産により、サイバー・バズの債権回収の目途が立たなくなったことで、10月25日のサイバー・バズ株は一時16.7%安の1,050円をつけるなど、市場の懸念も広がっています。
船井電機の資金動向が判明 約300億円もの資金が流出
破産手続きが開始された船井電機の内部から、出版社による買収後の不透明な資金の動きが明らかになりました。秀和システムによる買収以降、約300億円もの資金が流出し、破産申請時には117億円超の債務超過に陥っていたとのことです。
準自己破産の申立人は、2023年3月に取締役に就任した創業家関係者の船井秀彦氏でした。債権者は524人に上り、負債額は約474億円に達していました。
買収時、秀和システムがりそな銀行から借り入れた180億円は、船井電機の定期預金を担保に供されており、2024年5月には回収済みだったことも判明しました。
さらに、前社長の上田智一氏が主導した多角化戦略の一環で買収したミュゼプラチナムに関連し、横浜幸銀信用組合から33億円の借り入れが簿外債務として発覚。ミュゼプラチナムへの資金支援や、関連会社への貸し付けなども行われていたようです。
こうした資金流出により、買収前に約347億円あった現預金はほぼない状態に。保有する関係会社株式も大幅に価値を失い、「継続的に弁済することができない状態」に陥ったとされています。
主力のテレビ事業の不振も重なり、2024年4月以降は毎月3億〜8億円の営業赤字が続いています。従業員の給与支払いにも事欠く状況だったことが浮き彫りになりました。