【刑事弁護の最前線】再犯防止に向けた弁護士の役割と社会との連携

【刑事弁護の最前線】 再犯防止に向けた 弁護士の役割と 社会との連携

犯罪の件数が減っている一方で、再び罪を犯す人の割合は高止まりしています。日本の刑事司法が抱えるこの矛盾は、「どうすれば再犯を防げるのか」という問いを私たちに突きつけています。再犯防止というと、警察や刑務所の役割を思い浮かべがちですが、実は弁護士も重要な立場で関わっています。

本記事では、刑事手続きの基本を押さえつつ、情状弁護を通じて弁護士がどのように更生と再犯防止に向き合っているのかを、具体例を交えながら解説します。

<目次>

再犯率49.1%の現実。刑事弁護が担う更生支援という責任

書類を書く弁護士

日本の刑事司法において、再犯の防止は近年ますます重要な課題となっています。警察が認知したする刑法犯の件数自体は少子高齢化の影響もあり減少傾向にあり、令和2年は戦後最少の約61万件となりました(直近の統計資料によると、令和5年の認知件数は70万3351件と、大きく揺り戻しました)。

しかしその一方で、検挙者に占める再犯者の割合(再犯者率)は上昇し、令和2年には49.1%と調査開始以来最悪の水準に達しました。つまり「犯罪全体は減っているが、約半数は以前にも罪を犯した人」という状況になっているのです。このような状況下で、新たな被害者を生まない安全・安心な社会を実現するには、刑事政策の現場で再犯防止に取り組むことが不可欠です。

こうした再犯防止の取り組みにおいては、刑事弁護人(弁護士)の役割も一定の役割を果たしています。「お前たち弁護士は、犯罪者の味方なんだろ!?」という見方をされることもありますが、弁護士も正義の実現を使命としており、再犯の防止は安全な社会を実現するためには重要なことだと考えています。

※参考 弁護士法1条
1項 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
2項 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。

私が所属する弁護士事務所でも、罪を犯した人の更生支援を重要な使命であると考えています。
https://support-bengosi.com/

罪を認める被疑者・被告人に対しては、裁判で適正な量刑を目指す情状弁護を通じて、更生への道筋を設計したり、社会復帰の支援策につなげたりすることを目指しています。また、弁護士が社会のさまざまな機関・団体と連携し、出所者の更生支援に関与することで、再犯の芽を摘むことにもつながります。

刑事事件の手続き(検挙から起訴、起訴後から判決まで)

検察庁

刑事事件の基本的な手続きの流れを解説します。

⑴ 事件の発生から捜査

事件が発生し警察が捜査を開始すると、証拠集めや任意の事情聴取などが行われます。警察の捜査活動の結果、

①刑事事件が発生したこと(犯罪が成立していること)

②事件の犯人が誰であるか

という点について証拠が揃ってくれば、警察は被疑者に対して取調べを実施することになります。被疑者が逃亡したり、証拠隠滅をしたりするおそれがあると判断された場合には逮捕に踏み切られることもあります。

逮捕後、警察は最大48時間以内に事件の記録と被疑者の身柄を検察官に送致しなければなりません。検察官は事件の送致を受けると被疑者に対する取調べを行い24時間以内に勾留請求の要否を判断します。

ここで検察官が「この人は釈放しても構わない」と考えればそこで釈放となりますし、「逮捕を続けて取調べを行うべきだ」と判断すれば裁判所に対して「この人の拘束を10日間延長してください」と請求することになります。

多くの方の誤解があるかもしれませんが、身体拘束に対しては基本的に裁判官の許可が必要になっているのです。また、「逮捕(や身体拘束を受けること)=有罪」というわけではなく、刑事裁判として訴追するかどうかを決める手段として、逮捕や拘束がなされているにすぎません。

検察官からの請求を受け、裁判官が認めれば、まず10日間(延長した場合は20日間)の勾留が決定されます。この勾留中に警察・検察による本格的な取り調べや証拠収集が進められ、最終的に起訴するか不起訴(嫌疑不十分や起訴猶予)とするかが検察官によって決定されます。

⑵ 起訴されてから裁判まで

起訴(公訴提起)されると、被疑者は被告人と呼ばれる立場になり、裁判所での公判が開かれます。公判では検察官が起訴事実を立証し、弁護人がそれに対する反論や情状の主張を行います。

公判の進め方として、被告人・弁護人側は大きく「無実(Ex.犯人でない、法律上犯罪が成立しない、正当防衛が成立する等)を主張する」、「事実は認めて情状酌量(刑を軽くする考慮)を求める」のいずれかの方針をとります。

罪を犯した事実を認めるケースでは、「どれくらいの重さの刑を科すか」が情状面での訴えが審理の中心となります。公判では証人尋問や証拠調べの後、検察官の論告・求刑、弁護人の最終弁論を経て結審します。判決の内容は、有罪か無罪か、有罪であれば刑の内容(罰金、執行猶予、実刑)を決めて言い渡すことになります。

執行猶予とは、拘禁刑(旧懲役刑、禁錮刑)を言い渡すのだけれども、収監するのを一定期間だけ「猶予」する、猶予期間中に新たに犯罪をして執行猶予を取り消されることがなければ元の拘禁刑は執行しない(刑の言い渡しが執行する)というものです。

執行猶予中に再犯するとどうなる?具体例で解説

裁判所

それでは具体例で考えてみましょう。

2025年12月1日に拘禁1年、執行猶予3年の判決が確定したとします。その後3年間、新たな罪を犯すことなく過ごし続けることができれば、元々言い渡された「拘禁1年」の刑の言い渡しは失効します。

この「拘禁1年」で刑務所に入らなくてもよい、ということです。ただし再犯をしてしまうと話は別です。たとえば上の例の続きで、2027年12月に別の犯罪で拘禁2年の刑を受けると、2025年に言い渡された拘禁1年と2027年に言い渡された拘禁2年の合計3年の拘禁刑を受けることになります。

私はよく依頼者の方に対して、「執行猶予判決というのは、すぐに刑務所には入らなくてよいけど、無罪判決ではないですよ。次になにか悪いことをしたら、すぐに刑務所の中に落ちてしまいます。そのことをよく理解して、気を付けて過ごしてくださいね」と伝えています。まさに、執行猶予の期間中は「塀の上を歩いている」という感覚を常に持っておいてほしいです。

足立直矢弁護士

投稿者プロフィール

大阪大学法学部卒,軽犯罪から重大犯罪、経済犯罪や収賄事件に至るまで幅広く担当。情状弁護,再犯事件,非行少年の弁護にも注力。時には厳しいアドバイスをすることもあり、依頼者やその家族からの信頼は厚い。

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