子どもにとってゲームは良い影響?悪い影響?アメリカではIQが上昇する研究報告

「子どもにとってゲームは良い影響?悪い影響?アメリカではIQが上昇する研究報告」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

e-sports、オンラインゲーム・・。
様々な種類のゲームそしてTVやポータブルばかりでなく、スマホでもゲーム環境が構築できるようになり、最近、ますます多くの子どもがゲームに触れる機会が増えるようになってきました。

アメリカの大規模調査では、2022年には71%の子どもたちがゲームをしていると答えています。2018年と比較しても4%の増加です。

日本の2021年度の小学生の現状を探る調査でも、登校日にコンピュータゲームをする割合は 78.8%と、2011 年出生児の 64.7%に比べて 14.1 ポイント高くなっています。
さらに、「学年が上がるにつれてゲーム時間が長い」とも報告しており、年齢と共に密接にゲームに関わってくることでしょう。

しかし、子どもにとってゲームは良い影響を与えるか、悪い影響を与えるかは、はっきりしていません。
実際、ゲームへの関わり方について悩まれている親御様も多いでしょう。
ゲームは集中力を増す?
脳を活性化する?
コミュニケーション能力を伸ばす?
様々な憶測はありますが、実際、研究報告ではどうなっているのでしょうか?

そこで今回は、子どもとゲームの影響について最近の論文をもとに検証していきます。

「正しく使えば」子供にとってゲームは脳によい影響を与える

まず、よく誤解されがちですが、正しく使えば子どもにとってゲームは脳によい影響を与える可能性が高いです。

2022年の発表されたアメリカで5,374人を対象にした2年間の追跡調査では、9歳~10歳の知能と11歳~12歳の時の知能を比較したところ、9〜10歳時に平均より長くゲームをプレイしていた子どもは、男女関係なく2年後の測定でIQが平均より約2.5ポイント高くなっていました。

ちなみに、テレビや動画の視聴もわずかにIQ向上と関連がありましたが、親の教育レベルを考慮するとこの関連はなくなっていますので、ゲームだけが知能レベルは向上するといえますね。

ただし、同論文では、意外なことにゲームによる社交性の改善には至らなかったことを報告しています。

さらに、ゲームをする9歳~10歳での脳機能を「fMRI(ファンクショナルMRI)」という脳の活性化する部分を画像化する特殊な装置で解析したところ、視覚能力や注意力、記憶作業力などが活性化することがわかっています。

ミシガン州での12歳を対象とした研究でも、普段テレビゲームをしている子の方が想像力は高かったと報告しています。
この論文では、「現代のゲームでの複雑なストーリー設定は、子どもの問題解決能力を高めて、ゲーム以外の場面で応用することで創造力を高める助けになっているのではないか」としています。

また、よく言われるのが「ゲームをすると暴力的になる」というものですが、東京大学での発表でも「ゲームが攻撃性に与える影響は短期的であった」という指摘もあり、「ゲームをすると暴力性が高まる」とは一概に言えないようです。

このように、ゲームを正しく使えば、子どもの様々な脳機能を活性化する有用なツールとなりうるでしょう。

ここでは、参考までに平日のテレビゲーム実施時間を表にまとめました。
小学6年生も中学3年生も、テレビゲームを2時間以上している子どもが30%以上いることがわかります。

     4時間以上3時間以上、4時間未満2時間以上、3時間未満1時間以上、2時間未満1時間より少ない全くしない
2010年度5.4%5.8%11.6%24.8%34.7%17.8%
2012年度6.4%6.1%11.4%23.1%33.5%19.6%
2014年度8.8%8.1%13.2%24.3%31.9%13.6%
表1.小学6年生のテレビゲームの平日利用時間

     4時間以上3時間以上、4時間未満2時間以上、3時間未満1時間以上、2時間未満1時間より少ない全くしない
2010年度5.3%5.1%10.6%19.3%31.1%28.5%
2012年度5.7%5.3%10.6%18.7%30.3%29.4%
2014年度10.8%9.2%14.9%21.0%27.0%17.0%
表2.中学3年生のテレビゲームの平日利用時間

ゲームは「間違って使ったら」悪い影響を及ぼす可能性があるので要注意

しかし、それはゲームを「正しく」使った場合です。
一歩間違えればゲームは子どもに悪影響を及ぼす可能性があります。
米国小児科学会は2歳未満にはゲームをさせないこと。2-5歳は1日1時間までと定めています。

一番大きいのは「ゲームに時間をとられること」でしょう。
6歳〜9歳の男の子を対象に、ゲームを購入した子と購入していない子に分けて学業成績を比較したところ、購入した子の方が成績は下がったという報告があります。

同論文では、ゲームを購入した子の方がゲームに時間をとられて、ゲーム以外の宿題や読書などの時間がなくなっていたことが原因ではないかと考えられています。

ゲームそのものは脳にとって悪いことではありませんが、子供は時間の使い方を十分熟知しているとはいえません。
ゲームを適切に使って良い影響を与えられるように、親と子供が一緒にゲームとの付き合い方について考えていくとよいですね。

参考文献:
1.厚生労働省. 第11回21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の概況
2.Bruno Sauce,Magnus Liebherr,et.al. The impact of digital media on children’s intelligence while controlling for genetic differences in cognition and socioeconomic background
3.Bader Chaarani,Joseph Ortigara,DeKang Yuan,et al. Association of Video Gaming With Cognitive Performance Among Children
4.Linda A.Jackson,Edward A.Witt,Alexander Ivan Games,et.al. Information technology use and creativity: Findings from the Children and Technology Project
5.玉宮義之,松田剛,開一夫.暴力的なテレビゲームが脳に与える影響 ―表情認知に与える長期的影響と攻撃性への短期的影響―
6.Andrew K. Przybylski, Netta Weinstein. Digital Screen Time Limits and Young Children’s Psychological Well-Being: Evidence From a Population-Based Study
7.Nader Alrahili,Mohammad Alreefi,Issa M Alkhonain,et,al.The Prevalence of Video Game Addiction and Its Relation to Anxiety, Depression, and Attention Deficit Hyperactivity Disorder (ADHD) in Children and Adolescents in Saudi Arabia: A Cross-Sectional Study.Cureus.2023 Aug;15(8);e42957.pii:e42957
8.厚生労働省. 第6回21世紀出生児縦断調査の概況
9.栗谷とし子,吉田由美. 幼児のテレビ・ビデオ視聴時間,ゲーム時間と生活実態との関連. 小児保健研究 2008.72-80
10.文部科学省.家庭教育関連データ

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