「架空名義口座」で詐欺マネー追跡へ 犯収法改正案を閣議決定、口座売買や「送金バイト」を厳罰化

政府は3日、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺の被害金のマネーロンダリング対策を強化するため、「犯罪収益移転防止法」の改正案を閣議決定しました。 改正案には、警察が金融機関の協力を得て開設した「架空名義口座」を捜査に活用する新手法の導入や、預貯金通帳などの不正譲渡の厳罰化、いわゆる「送金バイト」への罰則新設が盛り込まれています。 背景には、匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」などが、第三者名義の口座を悪用して資金を移動し、摘発を逃れている実態があります。
警察庁によると、2025年の1年間に発生した特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の被害額はあわせて約3241億円に達し、過去最悪を更新しました。 SNSを通じて投資話や恋愛感情を装って金銭をだまし取る「SNS型投資・ロマンス詐欺」は急増しており、2024年の認知件数は1万164件、被害額は約1268億円と前年比で大幅な増加となっています。 こうした被害の拡大を受け、政府は資金移動の段階で詐欺グループの資金を捕捉し、被害の拡大を未然に防ぐ枠組みづくりを急いでいます。
改正案では、金融口座や預貯金通帳の不正売買などに対する罰則を、現行の「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」から、「3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」へと大幅に引き上げます。 継続的に業として口座売買を行った場合は、「5年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金」と、さらに重い罰則が科されることになります。
これまで口座や通帳の売買は「小遣い稼ぎ」と安易に考える若者もいましたが、警察や弁護士は「自分名義の通帳やキャッシュカードを譲渡する行為自体が犯罪であり、詐欺などの重大犯罪に関与したとみなされる」と強く警鐘を鳴らしてきました。 政府は今回の厳罰化によって、口座の不正譲渡に対する抑止効果を高めたい考えです。
「送金バイト」にも新罰則 「架空名義口座」で資金を凍結・返還
改正案のもう一つの柱が、報酬と引き換えに被害金を指定口座へ移す「送金バイト」への罰則新設です。 犯罪グループなどはSNS上で実行役を募集し、実行役の口座にだまし取った金を振り込んだうえで別の口座を指定し、実行役に資金を移動させる手口を用いてきました。改正案では、こうした「送金バイト」を依頼する側と依頼を受けて実際に送金する側の双方を対象に、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金を科す規定を新設します。 SNSで簡単に応募できるアルバイト感覚の勧誘に応じた若者が、知らぬ間にマネーロンダリングに加担して逮捕される事案が相次いでおり、政府は抑止を強化する狙いです。
さらに、改正案は警察が開設した「架空名義口座」を用いた新たな捜査手法の導入も定めています。 「架空名義口座」とは、警察が金融機関の協力を得て実在しない人物名義で開設する口座で、捜査員が素性を隠してSNSなどを通じて犯罪グループに接触し、この口座を渡すことで資金の流れを追跡する「おとり捜査」のような仕組みです。犯罪グループから被害金がこの口座に振り込まれた時点で口座を凍結し、被害者が特定できれば速やかに被害金を返還することが想定されています。 被害者が特定できない場合でも、他の被害者への給付金や各都道府県の犯罪被害者支援の費用に充てるよう努めるとされており、被害金を犯罪グループに再び利用させない仕組みづくりが進められます。
匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」などによる特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺は、被害額だけでなく犯行態様も巧妙化しています。 福井県内では2025年、特殊詐欺とSNS投資・ロマンス型詐欺の被害額が計14億円を超えるなど、地方でも深刻な状況が続いています。専門家からは、今回の改正案が資金移動の段階で犯罪グループの摘発につながる一方で、「SNSを通じて若者を実行役に取り込む構図は変わらない」として、教育現場や金融機関による啓発活動の一層の強化が必要だとの指摘も出ています。 政府はこの改正法案を今国会に提出し、早期成立を目指す方針で、実務の現場でどのように運用されるかが今後の焦点となります。








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