釧路湿原周辺のメガソーラー建設に批判が集まる「日本エコロジー社」の実態

日本エコロジー社のホームページ

多くの希少生物が生息することで知られる北海道の釧路湿原。その周辺で「株式会社日本エコロジー」(以下、日本エコロジー社)という大阪市の会社が進めてきたメガソーラー(大規模な太陽光発電システム)の建設が昨年来、環境を破壊しているという批判にさらされている。

この問題が大きく報道されるなか、意外に見過ごされているのが「そもそも、日本エコロジー社はどんな会社なのか?」という根本的な疑問だ。その答えを探し、独自に調べてみた。

(ノンフィクションライター・片岡健)

<目次>

意外と知られていない「渦中の会社」の実態

自然界に存在し、二酸化炭素(CO2)を排出しない太陽光や水力などの「再生可能エネルギー」は2010年代以降、急速に普及が進んだ。政府がそうなるような政策をとってきたのに加え、2011年の東日本大震災時に起きた原発事故もこの流れを後押しした。

しかし、この流れの中で全国各地に次々と建設されたメガソーラーは、森林伐採による土砂災害への不安や景観の破壊、生態系への悪影響など種々の問題が指摘され、建設地では住民とのトラブルも続発。環境に優しかったはずの太陽光発電のイメージもすっかり悪くなってしまった。

そんななか、日本エコロジー社のメガソーラー建設が批判されるようになったきっかけは、一人の男性が声を上げたことだった。釧路市を拠点に置く「猛禽類医学研究所」の代表で獣医師の齊藤慶輔氏がその人だ。

斉藤氏は昨年6月以降、メガソーラー建設で森林が伐採された釧路湿原周辺のドローン映像をSNSで公開。現地で生息するタンチョウやキタサンショウウオなどの希少生物の生態系が脅かされていると訴えた。

「猛禽類医学研究所」代表の齊藤慶輔氏が運営するYouTubeチャンネル
「猛禽類医学研究所」代表の齊藤慶輔氏が運営するYouTubeチャンネル

この訴えが拡散されるなか、呼応した登山家の野口健氏ら著名人も次々にSNSなどでこのメガソーラー建設を批判。メディアでもこの問題が大きく取り上げられるようになると、政治家たちも現地を視察するなどして介入し、さらに問題への注目度が高まった。

この間、釧路市も建設現場での希少生物の調査が不十分だとして、日本エコロジー社に何度も行政指導し、工事の停止を要求。対する日本エコロジー社側も、釧路市の要求は事業を阻害するものだとして損害賠償請求訴訟を起こす可能性を示唆するなど、問題は深刻化の一途をたどっている。

もっとも、日本エコロジー社はここまで社会の注目を集める会社になったにもかかわらず、その実態はまだ十分に周知されているとは言い難い。そのため、同社と誤認された複数の同名企業がホームページで注意を呼びかけないといけない事態になっている。

この問題を考えるうえでは前提として、日本エコロジー社がどんな会社なのかを知っておく必要があるだろう。

注意をよびかける同名企業のホームページ
注意をよびかける同名企業のホームページ

会社の実態がわかりにくいホームページ

まず、日本エコロジー社のホームページにアクセスしてみた。

そのトップページは、太陽光パネルが広範囲に並んだ場所の周辺に複数の風車も立っている「太陽光と風力のハイブリッド発電所」の写真と、子育てをしている若い家族の幸せそうな写真が大きく掲載され、いかにも爽やかなイメージだ。「事業内容」のページを見ると、「再生可能エネルギーの可能性を広げる 脱炭素ソリューション」という見出しのもと、以下のように自社が紹介されている。

「日本エコロジーは太陽光発電や風力、水力、バイオマス発電所建設など、再生可能エネルギーの普及拡大を目的としたビジネスを通して脱炭素社会の実現に向けたソリューション提案を行っています」

さらに「代表者挨拶」というページを見ると、メディアによく登場している松井政憲社長が「再生可能エネルギーでZEROカーボンの未来をつくる」という経営理念を熱く語っている。

ただ、「会社概要」や「営業所・支店」のページを見ると、ほとんど何も記載されておらず、所在地や設立年、資本金などの基本的な情報もわからない。

「採用情報」のページを見ると、「勤務地」の項に「大阪本社 大阪府大阪市中央区南船場1丁目13番20号 リアライズ南船場ビル6F」と記されているが、大阪本社以外の本社の有無や、営業所・支店がどこにあるのかなどは不明だ。

一方、「施工事例」というページを見ると、奈良、京都、三重、大阪、岐阜、和歌山という2府4県で同社が施工した計16の太陽光発電の設備が写真で紹介されている。「事業内容」のページを見ると、同社は企業向けに太陽光発電設備の導入を提案し、施工から運用まで全面的に携わっているようだ。

このようにホームページの情報を見る限り、同社の事業内容にとくに不審な点は見受けられない。だが一方で会社の実態はわかりにくい。

日本エコロジー社のホームページの「企業情報」のページ
日本エコロジー社のホームページの「企業情報」のページ

旧ホームページや登記事項から見えてきた同社の実態

さらに調べを進めたところ、閉鎖された同社の旧ホームページの2017年6月頃から2024年2月頃までのアーカイブが見つかった。これに加え、登記事項証明書(履歴事項証明書と閉鎖事項全部証明書)を確認したところ、新たに色々とわかることがあった。

同社の設立は2012(平成24)年1月24日。現在の本店所在地は、ホームページに公開していた上記の「大阪本社」の住所と同じだった。

現在の資本金は9,900万円。資本金が1億円以下であれば、法人税法上は「中小企業」として扱われ、税務上の優遇措置を色々受けられると言われる。9,900万円という同社の資本金の額は、そういう意味合いの金額かもしれない。

取締役として現在登記されているのは代表取締役の松井社長だけだ。同社に関する報道では、松井社長より年上に見える大井明雄氏という営業部長もよく登場しているが、同氏は取締役兼任の営業部長ではなく、純粋な従業員の立場で働いているようだ。

事業の「目的」としては現在、以下の12点が記されている。

1.太陽光発電システムの販売
2.オール電化製品の販売
3.リフォーム工事
4.建設工事及び内装工事
5.左官、塗装及び防水工事
6.土木工事
7.人材派遣業
8.広告、宣伝業
9.自然エネルギーによる発電及び売電事業
10.不動産の売買、賃貸、仲介及び管理
11.飲食店の営業
12.前各号に付帯関連する一切の業務

この中で目を引くのは、「11.飲食店の営業」だ。1から10については、メガソーラーの建設などの太陽光発電関係の事業と何らかの関係がありそうに思えるが、飲食店の営業については、関係性を見出しにくい。同社は今後、何らかの飲食店を営業する計画があるか、あるいはすでに何らかの飲食店を営業しているかだと思われる。

ちなみに履歴事項証明書の「公告をする方法」の欄には、「官報に掲載してする」と記載されている。そこで国立印刷局の官報情報検索サービスで同社の決算公告を探したが、検索にヒットせず、同社の財務状況を確認することはできなかった。 

日本エコロジー社の履歴事項全部証明書の全2枚の1枚目(※一部修正)
日本エコロジー社の履歴事項全部証明書の全2枚の1枚目(※一部修正)

設立当初の事業は「古物の売買」と「産業廃棄物の処理」がメインか

ここからは主に閉鎖事項全部証明書と旧ホームページのアーカイブをもとに、同社の設立からの歩みをたどってみたい。

2012年の設立当初、同社の資本金は500万円。取締役として登記されているのは当時も代表取締役の松井社長だけだ。その後、2014(平成26)年5月31日に森本賢二氏という人が取締役に就任しているが、2019(令和1)年12月26日に死亡しており、それ以降は現在に至るまで取締役は松井社長だけだ。

報道では、松井社長はタフそうな人に見えるが、実際に会社を設立以来、フル回転で事業を切り盛りしてきたのではないかと思われる。

閉鎖事項全部証明書では、設立当初の「目的」の欄に次のように記載されている。

1.古物の売買
2.産業廃棄物の処理
3.建築工事及び内装工事
4.左官、塗装及び防水工事
5.ビルメンテナンス及び管理
6.人材派遣業
7.太陽光発電システムの販売
9.リフォーム工事
10.前各号に付帯関連する一切の事業

ここで第一のポイントは、現在は登記事項証明書の「目的」の欄に記載されている「自然エネルギーによる発電及び売電事業」と「不動産の売買、賃貸、仲介及び管理」という2つの事業が記載されていないことだ。この2つは、日本エコロジー社が企業向けに太陽光発電設備の導入を提案し、施工から運用まで全面的に携わっている事業のことだと思われるので、同社は設立当初、このような事業を行っておらず、将来的に行う計画もなかったのだろう。

第二のポイントは、1、2番目に記載されている「1.古物の売買」と「2.産業廃棄物の処理」だ。具体的にどんな事業を行っていたのかは不明だが、古物の売買や産業廃棄物の処理は正しく行われれば、環境保全にも資する事業だ。日本エコロジー社はこの2つの事業をメインに行う会社として設立され、社名もこの2つの事業から着想されたのかもしれない。

日本エコロジー社の閉鎖事項全部証明書の全3枚の1枚目(※一部修正)
日本エコロジー社の閉鎖事項全部証明書の全3枚の1枚目(※一部修正)

太陽光発電関連事業は設立2年目から注力か

会社設立の翌年(2013年)8月7日、同社は事業の目的を以下のように変更し、「1.古物の売買」と「2.産業廃棄物の処理」を事業目的から外している。

1. 太陽光発電システムの販売
2.オール電化製品の販売
3.リフォーム工事
4.建築工事及び内装工事
5.左官、塗装及び防水工事
6.人材派遣業
7.広告、宣伝業
8.前各号に付帯関連する一切の事業

ここでポイントは、設立当初は7、8番目に記載されていた「太陽光発電システムの販売」と「オール電化製品の販売」が1、2番目の記載に変更されたことだろう。これは、同社が太陽光発電に関連する事業に力を入れるようになったからだと思われる。

その後も事業の「目的」は年1回、部分的に変わっているが、「自然エネルギーによる発電及び売電事業」と「不動産の売買、賃貸、仲介及び管理」は、それぞれ2015年と2016年に事業の「目的」に加えられている。同社はこのあたりから、企業向けに太陽光発電設備の導入を提案し、施工から運用まで全面的に携わる事業に取り組み始めたのだろう。

旧ホームページの2017年6月30日頃のアーカイブを見ると、現在のホームページで紹介されている16の太陽光発電設備のうち、すでにこの時点で11の設備が施工されており、短期間に事業を拡大させたことが窺える。

一方、旧ホームページでは、太陽光発電の経済的メリットと環境保全効果をうたい、企業だけではなく、一般住宅にも太陽光発電システムの導入や、オール電化の生活を勧めている。「取り扱いメーカー」として、三菱(三菱電機のことだと思われる)、東芝、京セラ、シャープ、カナディアンソーラー、ジンコソーラー、ハンファQセルズなど太陽光発電システムを提供している国内外の会社が紹介されており、日本エコロジー社はこれらの会社の太陽光発電システムを販売することにも力を入れていたようだ。

日本エコロジー社の閉鎖事項全部証明書の全3枚の2枚目(※一部修正)
日本エコロジー社の閉鎖事項全部証明書の全3枚の2枚目(※一部修正)

報道されているような問題の多い会社と断定するのは早計だが…

同社は設立当初、発行済株式の総数は100株だったが、2019(令和1)年9月30日に1,300株に増え、同時に資本金も500万円から6,500万円に増えている。さらに2021(令和3)年9月27日、発行済株式の総数が1,980株に増え、同時に資本金も9,900万円まで増えている。株主構成などは一切わからないが、順調に会社が成長している様子が窺える。

旧ホームページは取引先も公開しているが、2017年6月30日頃の時点で大手総合商社の丸紅が名を連ね、2019年10月19日頃の時点でDMM.comの名も加わっている。各社とどんな取引をどれほどしていたかは不明だが、日本エコロジー社はこのような有名企業とも取引できる程度の信用を得られているわけだ。

振り返れば、釧路湿原周辺のメガソーラー建設に関する一連の報道で日本エコロジー社は何かと問題の多い会社であるように伝えられてきた。ただ、報道以外の情報を見る限り、報道の情報のみに依拠し、同社を悪い会社と決めつけるのも早計ではないかと思えた。

とはいえ、現在のホームページに象徴されるように同社の実態がわかりにくいのも確かだ。同社が自ら望んだことではないとはいえ、これだけ社会的注目を集める会社になった以上、情報公開をもっと進めるべきだと思う。

(了)

日本エコロジー社の旧ホームページの2019年10月19日頃のアーカイブ(※一部修正)
日本エコロジー社の旧ホームページの2019年10月19日頃のアーカイブ(※一部修正)

片岡健ノンフィクションライター

投稿者プロフィール

1971年生まれ。新旧様々な事件を取材し、冤罪や見過ごされた事実を発掘している。ひとり出版社「リミアンドテッド」を運営。漫画原作も手がける。

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