
2025年10月6日、国立高等専門学校機構が設置した第三者調査委員会が、東京工業高等専門学校の男子学生自殺事件について「教員の指導に問題があった」とする報告書を公表しました。この事案は2020年10月に発生し、教員のアカデミックハラスメントが要因となって18歳の学生会長が命を絶った深刻な社会問題です。
2020年10月5日、東京工業高等専門学校3年生で学生会長を務めていた野村陽向さん(当時18歳)が自宅で自殺しました。野村さんは電子工学科の学生で、2020年6月には新型コロナウイルス感染拡大を理由に文化祭の中止を決定していましたが、これを巡って男性教員から「学生会が暴走している」「ただでは済まない」「信用が落ちる」などの批判を受けていました。
野村さんは学生主事補からのハラスメント行為を受けたとして、学校長宛に「ハラスメント申入書」を作成していました。男性教員は謝罪したものの、その後も野村さんは精神的な圧迫を受け続けていました。
自殺の直接的なきっかけとなったのは、学生会の会計監査でした。野村さんが担当していた物品購入に関する不適切な事例があるとして、教員が監査委員を務める学生に監査を指示しました。2020年10月2日夜、監査委員が野村さんに対してTeamsを使った深夜までの監査を実施し、その3日後に野村さんは自殺しました。
第三者調査委員会は、教員の指導について「あまりにも教育的配慮を欠いたもの」と厳しく批判し、「少なくとも未成年に該当する年齢の学生に対し、あまりにも教育的配慮を欠いたものであるといわざるを得ない」と指摘しました。報告書は、適切な対応を取っていれば「学生の自殺という悲劇は防ぎ得た」との見解も示しています。
さらに、第三者委員会の設置過程でも不適切な対応がありました。高専機構は「第三者性に疑いのある委員を選任・委嘱したり、遺族に不快な思いを抱かせる内容のメールを送付したりした」として謝罪しています。委員の途中交代や機構幹部職員による遺族への不適切な発言もあったとされています。
遺族の苦痛と学校側の対応不備が浮き彫りに
野村さんの父親である正行さんは、報告書について「すごく丁寧に調べていただいて8割は満足している」と述べつつ、男性教員について「今の状態で講義や学生指導をやらせていていいんでしょうか」と心境を打ち明けました。遺族は現在も男性教員と東京高専を相手に損害賠償訴訟を継続しています。
東京高専は5日の記者会見で「大切な学生の命を守ることができなかった」と謝罪し、今後は「学生に寄り添った環境づくりを徹底する」と表明しました。高専機構も第三者委員会の設置・運営に関する不適切な対応を認め、遺族に謝罪しました。
この事案は、教育現場におけるハラスメントの深刻さと、未成年学生に対する教育的配慮の重要性を改めて浮き彫りにしました。第三者委員会は学校側に対し、適切な教育相談・学習相談・メンタルケアを含む学生相談体制の整備や、高校生世代が在籍する教育機関であることを踏まえた規定・組織の整備を提言しています。









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