
話題のオリジナルアニメ映画『ホウセンカ』が2025年10月10日に公開され、エンターテインメント業界で大きな注目を集めています。『オッドタクシー』で予測不能なストーリー展開により話題となった木下麦監督と此元和津也脚本のコンビが再びタッグを組み、無期懲役囚のヤクザが人生の「大逆転」に挑む物語を描いた本作は、世界最大規模のアニメーション映画祭「アヌシー国際アニメーション映画祭2025」の長編コンペティション部門に正式出品され、国際的な評価を獲得しています。
本作は独房で孤独な死を迎えようとしていた無期懲役囚の老人・阿久津実に、人の言葉を話すホウセンカの花が「ろくでもない一生だったな」と声をかけるところから物語が始まります。ホウセンカとの会話を通じて阿久津は自身の過去を振り返り、1987年の夏にパートナーの那奈とその息子・健介とともに過ごした幸せな日々と、組の金庫から3億円を強奪しようとした事件の真相が明らかになっていきます。
制作を担当したのは『映画大好きポンポさん』『夏へのトンネル、さよならの出口』で国内外から高い評価を受けたアニメーションスタジオCLAPです。脚本家の此元和津也氏は本作について「帰る場所をなくした男と恋人の空白へ、その花が静かに割って入り、止まった言葉を芽吹かせる物語」とコメントしており、長い沈黙を経て語られる男の愛の物語が描かれています。
声優陣には実力派俳優が集結しました。主人公・阿久津実の現在と過去を小林薫と戸塚純貴がそれぞれ演じ、W主演として二つの時代を体現しています。阿久津のパートナー・那奈役を満島ひかりと宮崎美子が、謎に包まれた言葉を話すホウセンカの声をピエール瀧が担当しています。さらに安元洋貴、斉藤壮馬、お笑い芸人の村田秀亮(とろサーモン)、中山功太も声の出演に名を連ねています。
音楽面では、音楽的快楽とストーリーテリングの巧みさを併せ持つ3人組バンドceroが全編の音楽を担当しました。高城晶平、荒内佑、橋本翼のメンバーが手掛けたオープニングテーマ「Moving Still Life」は9月5日に先行配信されており、映像とのシンクロ効果が高く評価されています。
本作の国際的な評価は特筆すべきものです。2025年6月12日にフランス・アヌシーで開催されたワールドプレミアでは、映画祭最大のスクリーンとなるボンリュー劇場の949席が即完売し、当日券を求める人々が会場前に列を成す盛況ぶりでした。上映中はテンポよく笑いが起こる場面も多く、やがて静かな感動が会場を包み込みました。上映後には会場中央で見ていた木下監督と松尾亮一郎プロデューサーを割れるようなスタンディングオベーションが迎え、観客の熱気は冷めやらず、監督がその場でサインに応じる一幕もありました。
翌日には公式サイン会が実施され、フランスのみならずイギリス、アメリカ、タイ、台湾など世界各国から集まった老若男女のファンで長蛇の列をなし、「今日のためにイギリスから来た」というファンもいるほど、木下監督への国際的な注目度が色濃く表れていました。会場で作品を見た観客からは「素晴らしい芸術品です」「美しいストーリーで構成が素晴らしかった」「最後まで見ると、大逆転に至るまでの全ての過程が理解できます。終わりは本当に最高潮に達し、感動的でした」「とても感動し、息を呑むような体験でした」と大絶賛の声が寄せられました。
『オッドタクシー』から進化した人間ドラマ
木下監督は舞台挨拶で「この作品は、美しさと純真さを大切にして作りました。美しさは人生を豊かにします。美しさは日常生活の身の回りに実はありふれています。しかし、我々は見過ごしてしまうことが多いんです。ただ、この映画はそこに向き合って、美しさとはなにか、純真さとはなにかを突き詰めて考えた作品です」と作品に込めた思いを語り、「これを見た人は今日はとてもいい気持ちになると思います。今晩、寝る前にまた思い出して欲しいのですが、今日はいい日だったな、と思うはずです。僕はその自信があります」と出来栄えへの自信を示しました。
日本での公開後、観客からは様々な反響が寄せられています。上映館数は99館と比較的小規模ながら、平日公開にもかかわらず普段アニメを観なさそうな層が多く、年齢層はやや高めで男性が多いという特徴的な客層が見られました。これは主人公がヤクザという設定が「大衆に媚びない作品」であることを示していると分析されています。









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