
人工知能で生成された世界初のAI俳優が誕生し、米国の映画業界に大きな波紋を広げています。英国の映像制作会社が開発したバーチャル俳優「ティリー・ノーウッド」に対し、ハリウッド俳優らは取って代わられると懸念し、猛抗議の声を上げています。
このAI俳優は、ロンドンのAI映像制作会社「パーティクル6」が制作し、2025年5月からインスタグラムに動画や画像を投稿を開始しました。同社の創業者は、米人気俳優のスカーレット・ヨハンソンやナタリー・ポートマンのようになってほしいと語っています。2025年9月28日にはチューリッヒ映画祭で正式に発表され、複数のタレントエージェントから興味を持たれていると制作者が主張したことで、業界全体を巻き込む論争に発展しました。
約16万人が所属する全米映画俳優組合は9月30日に声明を発表し、「創造的な活動は人間が中心であるべきだ」との立場を表明しました。組合は「ティリー・ノーウッドは俳優ではなく、許可も得ず、対価も支払わず、無数のプロのパフォーマーの演技をもとに、コンピュータープログラムによって生成されたキャラクターです」と厳しく批判しています。さらに「人生経験や感情もないAI俳優に観客は魅力を感じないだろう」と主張し、俳優の仕事が奪われるとの危機感をあらわにしました。
著名俳優からも批判の声が相次いでいます。映画『プラダを着た悪魔』や『オッペンハイマー』に出演する俳優のエミリー・ブラントは、「本当に恐ろしいとしか言いようがない」とコメントし、「お願いだから、エージェンシーの皆さん、そんなことはやめて。どうか、人間らしいつながりを奪わないで」と訴えています。人気トーク番組『ザ・ビュー』に出演したウーピー・ゴールドバーグは、「観客は人間と合成俳優の違いをちゃんと見分けられる」との見解を示しました。
制作者は「芸術作品」と反論、エンタメ業界の未来に議論
こうした批判を受け、ティリー・ノーウッドの創作者であるエリーン・ファン・デル・フェルデンは声明を発表しました。「ティリーは人間の代替ではなく、ひとつの創作物――アートなのです」と述べ、 「人間の俳優たちと比較されるのではなく、AIキャラクターのジャンルが作られ、その中で評価されるべきだと考えています」と主張しています。
今回の論争は、AI技術がエンターテインメント業界にもたらす影響の大きさを浮き彫りにしました。制作コストの削減が可能になる一方で、俳優の雇用や著作権、肖像権の問題など、解決すべき課題は山積しています。ハリウッドスターなど約16万人が加入する米映画俳優組合は、AI俳優が人を代替することによる補償を求める可能性もあり、今後の業界の対応が注目されています。










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