子どものコミュニケーション教育5選 多様性のある人々とともに社会に貢献する

「子どものコミュニケーション教育5選 多様性のある人々とともに社会に貢献する」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

「うちの子、他の子と比べて話すのが苦手みたいで、友達ができないのが心配…どうしたらいいですか?」
「子どもが思いや感情をうまく表現できず、イライラしてしまうことが多いんです。コミュニケーション能力を上げる方法はないでしょうか?」
「先生からコミュニケーションが苦手だと言われてしまって、どう接すれば子どもの自信を取り戻せるか悩んでいます。」

子どものコミュニケーション力について悩んでいるお母さんお父さんが、本当に増えています。

しかし、今後間違いなく重要視されるのがこの「コミュニケーション力」。
そして、コミュニケーション力は社会人としてのスキルだけでなく、子どもの心の健康にも大きく影響します。

2022年に発表された論文では、従来、青年期のメンタルヘルスには、「語彙を増やす」こと、特に感情的語彙を増やして、感情をラベリング、言語化するなど知識を増やすことが大事だと考えられていましたが、それだけでは、メンタルヘルスには貢献しません。
それよりも、コミュニケーションをとる。
すなわち、気持ちを理解してもらう。

否定ではなく受け入れてもらう方が重要ということが明らかになっています。
これは、2022年に発表された大規模な縦断研究でも、「1人暮らしはうつ病のリスク因子」であることが明らかです。

実際、子どもの頃に育んだコミュニケーション力は、脳の成長にも欠かせないことが、医学論文でも証明されているのです。

今回、子どものコミュニケーション力に焦点をあてて、いかにコミュニケーション力が子どもの成長に重要かを、医学論文によって見ていきます。
そして、コミュニケーション力を実際に育む方法「5選」をご紹介します。

ぜひ参考にしてみて、子どものコミュニケーション力を一緒に鍛えていきましょう!

これからの社会に必要な「コミュニケーション力」

近年、グローバル化やテクノロジーの進化が急速に進んでおり、コミュニケーション力は、これからの社会でますます重要視されています。
世界中と繋がり、異なる文化や価値観を持つ人々と共に働く機会が増える中で、より円滑なコミュニケーションが求められるようになっているのです。

また、AIやロボットが人間の仕事を奪い始める時代において、機械では代替できない人間らしいスキルの1つが、コミュニケーション力です。
感情や状況に応じて適切な対応ができる柔軟性は、これからの働き手にとって、価値ある資質となります。

企業も新卒採用者の選考にあたって、特に重視した点として、コミュニケーション能力をあげているなど、コミュニケーションに関する能力の育成を求める社会的要請が高まっています。

1コミュニケーション能力81.6%
2主体性60.6%
3協調性50.3%
4チャレンジ精神48.4%
5誠実性38.9%
表1. 新卒採用選考にあたって特に重視した点ランキング5(複数回答)
日本経済団体連合会「新卒採用(2010年3月卒業者)に関するアンケート調査結果」(2010年4月14日)

実際、世界保健機関(WHO)の報告書では、特にコロナ禍から「メンタルヘルスを保つためには、SNSなどのインターネットの情報を鵜呑みにせず、リアルなコミュニケーションを持つことが大切である」としています。

また、後述しますが、子どもの頃に培われたコミュニケーション力は、今後の子どもの成長に欠かせないばかりか、大人になってからの社会的スキルの基礎になります。

仕事がどんどん機械化・AI化していくことは、誰の目にも明らかです。
そして、今後、人間に求められる要素は「人間らしさ」になってきます。
人間らしさの根本がコミュニケーション力ですから、今後ますます重要視されていくのも納得です。

(参照:World Health Organization「Looking after our mental health」

医学的に証明された子どものコミュニケーション力が脳に与える効果は?

社会的にも重視されるコミュニケーション力ですが、コミュニケーションは脳の発達にも欠かせません。
実際、子どものコミュニケーション力が成長や脳の発達に重要であることは、多くの研究で証明されています。

例えば、コミュニケーション能力や感情的なボキャブラリーの数と、学童期のメンタルヘルスの関連性を調べた論文によると、社会的コミュニケーション能力が高い方が、行動的メンタルヘルス問題が起きにくいと言われています。

また、子供の言語能力やコミュニケーション力は、脳の機能や神経回路の発達そのものに、大きな影響があることが示されています。
例えば、虐待や暴言などで正しいコミュニケーションが取れなかった子どもは、そうでなかった子どもと比較すると、疑似的な自閉症気味になったり、注意欠如多動症(ADHD)様症状の障害がでてくると言われています。

現に、虐待により、親と正常に受けられなかった子どもは、併存症として、以下のような数々の脳機能に関わる問題が生じる事がわかっています。

  • 広汎性発達障害:29.1%
  • 注意欠陥多動障害:15.7%
  • 知能障害:8.6%
  • 反応性愛着障害:40.8%
  • 解離性障害:47.1%
  • PTSD:32.3%
  • 反抗挑戦性障害:19.6%
  • 素行(行為)障害:25.3%

このように、子どものコミュニケーション力を育てることは、社会的側面だけでなく、脳機能の面からもとても大切なのですね。

(参照:Tormod Rimehaug,et. al. Communication and Emotional Vocabulary; Relevance for Mental Health Among School-Age Youths. Front Psychol. 2022; 13: 847412.)
(参照:谷口清.アタッチメントの形成と脳 ―パーソナリティ発達のメカニズムを考える ―心理科学 第37巻第2号)

子どものコミュニケーション力を育む方法「5選」

では、コミュニケーション能力を適切に育てるためには、どんなことに気をつければよいでしょうか。
特に重要とされるポイントを5つ挙げてみましょう。

①親子でコミュニケーションを大切にする

まずは、子どもとの会話を積極的に楽しみましょう。

子どもの話を聞くことはもちろん、自分の考えや感情を伝えることも重要です。
親子間のコミュニケーションが円滑であれば、子供は自分の意見を表現する力や他者への理解力を自然と身につけることができますね。

②子どもの興味や関心をサポートする

子どもの興味や関心に対して、親が関心を示し、一緒に活動を楽しむことで、コミュニケーション力UPにつながります。

特に大切なのは適切なタイミングで「ほめる」こと。
子どもの特定の行動を褒めると、子どもはもっと気分が良くなり、どんどん興味があることにチャレンジしていきます。

さらに「よくやった!」と言う代わりに、「特によかった点」をもっと具体的に褒めるようにしてみましょう。

③うまく言えないときも焦らずサポートしましょう

最初はなかなか適切な単語が出てきません。
そんな時、「なに言ってるかわからない!」と、子どもを怒鳴りつけていませんか?
すると、子どもはコミュニケーションに自信が持てなくなってしまいます。

逆に子どもが感情をうまく表現できるように、親がサポートしてあげる姿勢が大切。
感情を理解し、適切に表現する力は、コミュニケーション力の基本です。

子どもが感情を抑え込まず、自然に表現できる環境を作るようにしていきましょう。

④聴く力を養う(アクティブリスニング)

コミュニケーション力を向上させるためには、他者の話を理解し、受け入れる力が必要です。

親は、子どもに対して、相手の話を聞くことの大切さを教え、練習させることが重要です。
そのなかで、最近取り入れられている方法が「アクティブリスニング」と言われる方法。

アクティブリスニングは、「きちんとあなたの話を聴いているよ」と伝えるために、励ましの笑顔や肯定的なうなずきなどのジェスチャーを使用していきます。
そうすることで、子どもはより安心して、親とのつながりを感じられるのですね。

他のアクティブリスニングの技法として、「どうしてそう思ったの?」などの質問をして、相手の話を熱心に聞いていることを示してあげるのも有効です。

アクティブリスニングができると、自然と会話が弾むようになり、友達と会話がしやすくなります。

⑤他者との関わりをうながす

このように親と十分なコミュニケーションの練習ができたら、家族以外の人とも関わる機会を与えてみましょう。
友達や先生、近所の人との交流を通じて、子どもはコミュニケーションスキルや社会性を学びます。

また、チームスポーツやクラブ活動に参加させることも、子どものコミュニケーション力を向上させる手段ですね。
とにかくどんなスキルも数が必要です。
場慣れすることで、どんどんスキルがアップしてきます。

まとめ

子どものコミュニケーション力は、脳の発達やメンタルヘルスに大きな影響を与えます。

この記事では、子供のコミュニケーション力を向上させる方法として、以下の5選をご紹介しました。

  1. 親子の会話を増やす
  2. 子どもの興味をサポートする
  3. 感情表現を促す
  4. アクティブリスニング
  5. 他者との関わりをうながす

お子さんの成長にも欠かせないコミュニケーション能力。
ぜひ普段から活用してみてくださいね。

参考文献:
1.Tormod Rimehaug,Silja Berg Kårstad.Communication and Emotional Vocabulary; Relevance for Mental Health Among School-Age Youths
2.Katharina Kircanski, Matthew D. Lieberman, Michelle G.Feelings into words: contributions of language to exposure therapy:
3.Daolin Wu , Fuwei Liu , Shan Huang.Assessment of the relationship between living alone and the risk of depression based on longitudinal studies: A systematic review and meta-analysis
4.文部科学省. コミュニケーション教育推進会議 子どもたちのコミュニケーション能力を育むために~「話し合う・創る・表現する」ワークショップへの取組~

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