
経営危機に直面している日産自動車は、11月6日に2025年9月中間連結決算を発表し、同時に横浜市にあるグローバル本社ビルを970億円で売却することを決定しました。この決定は、経営再建計画「Re:Nissan」の重要な施策として位置付けられており、企業の存亡をかけた再建戦略の一環です。売却先は、台湾系の自動車部品大手ミンスグループなどが出資する特別目的会社(SPC)である「MJI合同会社」です。本社ビルは2009年から使用されており、企業の象徴的資産としての側面も強いだけに、この売却決定は日産の経営状況の深刻さを物語っています。
売却後、日産は「セール・アンド・リースバック」という手法を活用します。これは、ビルを売却した後に賃貸契約を結び直すことで、引き続きグローバル本社として建物を利用するというスキームです。リース期間は20年間に設定されており、日産は従来通り本社機能を維持しながら、固定資産を現金化することが可能になります。この方式により、従業員の業務や事業に影響を与えることなく、必要な資金を確保することができるのです。2026年3月期の連結決算では、この売却に伴い約739億円の特別利益が計上される見込みです。売却によって得られた資金は、デジタル化の推進やAI技術の導入、研究開発費などに充当される計画です。
一方、日産の経営状況は極めて厳しい状態が続いています。9月中間連結決算では、純損益が2219億円の赤字となり、5年ぶりの中間期赤字を記録しました。売上高は前年同期比で6.8%減少し、5兆5786億円となっています。このような急速な業績悪化の背景には、複合的な経営課題があります。まず、世界的な販売不振が挙げられます。国内市場では10%を超える販売減となり、中国市場でも同様の傾向が続いています。加えて、米国のトランプ政権による自動車への追加関税が、日産に大きな負担を強いています。26年3月期の営業利益見通しは2750億円の赤字となる予測であり、このうち関税の影響だけで2750億円の営業利益を押し下げるという状況です。さらに為替変動の影響も1150億円の減益要因となっています。
日産は経営再建を急速に推し進めるため、大規模なリストラクチャリングを実行しています。国内外の7つの工場での生産打ち切りと、2万人の人員削減を予定しており、総額5000億円のコスト削減目標を掲げています。既に2000億円分の削減案が創出され、実行段階に移っているなど、経営陣は再建への決意を示しています。経営陣は、これらの施策により2026年度中に自動車事業の営業利益とフリーキャッシュフローを黒字化することを目指しています。
再建への課題と今後の展望
日産の再建が成功するかどうかは、依然として不透明な状況にあります。販売市場の回復が急速に進まない限り、コスト削減努力だけでは限界があるとの指摘もあります。ただし、わずかながら好転の兆しもあります。北米市場は25億円の黒字に転じており、集客力の改善やブランド信頼の回復が進んでいるようです。国内市場でも、約3年ぶりの新型軽自動車「ルークス」が9月中旬に発表され、わずか6週間で1万5000台の受注を記録する好調ぶりを見せています。中国市場ではプラグインハイブリッド車など3種類の新型車を年内に投入し、販売回復を見込んでいます。本社ビル売却という大胆な経営判断とともに、新製品投入による売上回復が、日産の経営再建の鍵を握ることになりそうです。








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