松任谷由実、AIと共生した40枚目アルバム 新たな音楽表現へ

松任谷由実、AIと共生した40枚目アルバム 新たな音楽表現へ

日本を代表するシンガーソングライター・松任谷由実が、11月18日に通算40枚目となるオリジナルアルバム「Wormhole / Yumi AraI」をリリースしました。同アルバムは、「AIと人間の共生」をテーマに制作された意欲的な作品です。

松任谷の声を学習したAIによる音声を活用し、新たな歌声合成技術「Synthesizer V」で制作した楽曲を収録しており、AIによる「第三の声=Yumi AraI」の創出は業界内でも注目を集めています。​

アルバムの制作では、荒井由実名義を含む松任谷の数百のボーカルトラックをAIに学習させました。「別次元の荒井由実」ともいえる新たな声が生成されたのです。しかし、松任谷が重視したのは、AIを手段として活用しながらも、創造の本質は人間にあるというメッセージです。実際、作詞や作曲にはAIを一切使用していません。

松任谷は制作過程のインタビューで、ChatGPTで歌詞作成を試したが「私風ではあるけれど、まったく新鮮味がない」と指摘。「日本語には行間があり、音律と一緒になったとき、その隙間に受け手が自分のリアルを重ねることができる。それをAIは学習できない。人の心を動かせるのは人でしかない」と語り、AIとの線引きを明確にしています。

全12曲を収録するアルバムには、TVアニメ「伊藤潤二『クリムゾン』」のオープニング主題歌「烏揚羽」、テレビ朝日系ドラマ「魔物」のサウンドトラック楽曲「岩礁のきらめき」、ニッポン放送開局70周年テーマソング「LET’S GET IT STARTED!」などを収録。複数のコンテンツとのコラボレーション楽曲が含まれています。

全国72公演ツアーで人力ボーカルを披露

アルバムの発売にあわせて、全国72公演に及ぶ大型ツアー「THE WORMHOLE TOUR 2025-26」が11月17日にスタートしました。ツアーは、2026年12月にかけて全国で展開される予定です。ツアーではアルバムに収録されたAI音声「Yumi AraI」を使用せず、松任谷が自身の声で歌唱します。そのため、アルバム制作の過程で約1オクターブ半をカバーするまでに音域を取り戻したそうです。

松任谷は、同プロジェクトを通じて、「AIは目的ではなく手段であること、そして創造の本質はあくまでも人間にある」というメッセージを発信しています。ツアーでの人力ボーカル演奏は、そうした思想を実践する形となっており、AIの可能性と人間の価値を問い直す試みとして注目されています。

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