
金沢大学附属病院は、アルツハイマー型認知症の新薬「ドナネマブ」(製品名ケサンラ)を約1年間投与した70代女性患者の脳内から、原因物質とされるタンパク質「アミロイドβ」が消失したと発表しました。国内で投与中の患者で、原因物質の完全な除去が確認されたのは初めてとなります。
女性は石川県白山市在住で、電話の内容を1時間ほどで忘れてしまうといった症状が現れ、軽度認知障害(MCI)の診断を受けていました。その後、アルツハイマー病のごく早期の段階と判断され、2024年11月に発売されたばかりのドナネマブによる治療を同院で開始しました。
ドナネマブは米製薬大手イーライリリーが開発した抗アミロイドβ抗体薬で、脳内に蓄積したアミロイドβに結合し、免疫細胞がそれを除去することで病気の進行抑制を狙った薬です。
国内では2024年に「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制」を効能として承認され、原則18カ月間、4週間に1回の点滴投与を行うとされていますが、アミロイドβが十分に減少した場合は約12カ月で終了できる仕組みになっています。女性も月1回、45分前後の点滴を積み重ね、MRIやアミロイドPET検査で経過を確認しながら治療を続けてきました。
今年11月末に実施したアミロイドPET検査では、アミロイドβの蓄積を示す赤い部分が大きく減少しており、画像解析による数値も「陰性」判定に振り切ったといいます。同院の小野賢二郎教授は「完全に除去されている」と判断し、予定より早い1年でドナネマブ投与の終了を決めました。女性には脳のむくみや出血といった重大な副作用は見られず、今後は3カ月に1回の検査で経過を観察する方針です。
小野教授は、病気の進行を遅らせる効果が画像で確認されたことに関して「患者さんや医療現場にとって大きな福音になる」と強調しており、今後も症例を積み上げて有効性や安全性について検証していく姿勢を示しました。
新薬に高まる期待と同時に、費用・副作用・体制整備が課題に
ドナネマブや先行薬のレカネマブ(製品名レケンビ)は、病気を根治する薬ではなく、進行を遅らせる治療薬です。ドナネマブを17.5カ月投与した場合、認知機能の低下をおよそ5〜7カ月分抑制したと報告されており、日常生活の自立期間の延長が期待されています。
一方で、脳のむくみや微小出血などのいわゆるARIAと呼ばれる副作用リスクが指摘されており、国内では投与施設や対象患者の厳格な限定、定期的なMRI検査の実施といった慎重な運用が求められています。加えて、高額な薬価や医療機関の負担も大きな課題です。
今後、金沢大学附属病院を含む各地の医療機関で現場データが蓄積されれば、どのような患者にどの薬をどう組み合わせるのが効果的なのか、より具体的な指針が見えてくると期待されます。そのうえで、地方でのアクセス確保や医療・介護費全体への影響を踏まえた制度設計が必要です。

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