子どもにサプリメントは必要?思春期の男女に不足しやすいカルシウム

「子どもにサプリメントは必要?思春期の男女に不足しやすいカルシウム」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

私たちの食生活の中で足りないものを気軽に補うための方法として、広く普及しているサプリメント。

最近は、子どもにもサプリメントを飲ませているという人もいらっしゃいます。
子どもにサプリメントを飲ませることが良いことなのか、悩む親は多いのですが、成長の段階で必要な栄養素の違いや、それぞれの子どもの状況(好き嫌いや偏食の有無、スポーツなどの生活習慣の違いなど)もあり、これを飲んでおけばいいと、万人に勧められるサプリメントはありません。

サプリメントを飲むのか、何を飲むのかは子どもの状況に合わせて考えていく必要があります。
今回は、子どものサプリメントについて解説していきます。

サプリメントの利用実態

環境省「エコチル調査」という子どもの健康と環境に関する全国調査の一環で、子どものサプリメント利用率が調査されています。

全国の小学生の子どもがいる母親4933人が解析対象となり、その結果、小学生のサプリの利用率は6.8%でした。
この調査では、サプリメントの利用率と優位に関連する因子として、「スポーツの実施頻度」「健康状態」「世帯年収」「母親の教育歴」が挙げられていました。

この結果を見ると、子どもにスポーツをさせている親のサプリメント利用率が高いことがわかります。

健康状態については、スポーツを行うなど、サプリメント以外の健康習慣も関わっているものと考えられます。
また、子どもにスポーツをさせたり、サプリメントを飲ませたりするのにはコストがかかることから、サプリメント利用者の世帯年収は相対的に高くなるようです。

この論文からは、子どものサプリメント利用率はまだ高いとは言えず、スポーツなどをする子どもの栄養強化などが主な目的となっていることがわかります。

参照:Kazue Ishitsuka,Satoshi Sasaki,Hidetoshi Mezawa. Dietary supplement use in elementary school children: a Japanese web-based survey. Environ Health Prev Med
. 2021 Jun 5;26(1):63. doi: 10.1186/s12199-021-00985-7.

サプリメントありきではなくまずは食事の見直し

サプリメントは、不足する栄養分を食事に追加して「補助」をする役割の食品です。

そのため、食事の摂取状況から不足するものがあれば、利用を検討するべきです。
先述した調査のように、スポーツなどにより特定の栄養成分を多く摂取する必要がある場合や、偏食などがあり、特定の栄養分の摂取が著しく不足する場合に利用を検討しましょう。
無計画にサプリメントの接種を行うと、過剰摂取の危険があります。

特に有害だと考えられていないビタミンでも、過剰摂取すると有害になるものもあります。
多くのビタミンは水に溶ける水溶性です。
これらは、過剰摂取しても尿から排出されるので特に問題になることはないのですが、ビタミンA、D、E、Kは脂溶性ビタミンと呼ばれるもので、尿から排出されず体に蓄積されます。
そのため、食事が十分取れている子どもにビタミン剤を多量に飲ませると、体に有害になることがあります。

サプリメントを無計画に飲ませるのではなく、まずはバランスの良い食事を心がけて、その上で必要な栄養素が足りない場合に、サプリメントを飲ませることを考えましょう。

子どもの時に不足しやすい栄養素は?それを補う食事は?

子どもの時に不足しやすい栄養素として、ビタミンA,B1,B2,Cカリウム、カルシウム、鉄が挙げられています。
これは2022年に、保育所に在籍する3~6歳児の幼児798名を対象に、休日と平日の習慣的な栄養素摂取量を算出し、保育園の給食を食べていない休日に、推定平均必要量未満の割合が多かった栄養素を調べた研究の結果によるものです。また、特に思春期ではカルシウム不足、思春期女児では鉄不足が指摘されています。
ここでは、カルシウムの摂取量について表にまとめました。

      摂取推奨量摂取平均量
12-14歳男子1000mg/日725mg/日
12-14歳女子800mg/日660mg/日
表1.カルシウム摂取量
※牛乳給食のない日の10~11歳のカルシウム摂取量の平均値は、568±176mg/日(平均±S.D.)と極端に少ない。

参照:
酒井亜,由田克士,高橋孝子,他.日本栄養・食糧学会誌 2023;76:33-41.
厚生労働省.国民健康・栄養調査(平成 22 年,23 年).
厚生労働省.
Nozue M, Jun K, Ishihara Y, et al. How does fortification affect the distribution of calcium and vitamin B1 intake at the school lunch for fifth-grade children. J Nutr Sci Vitaminol 2013;59:22-28

これらを不足させないためにはまず、1日3食をしっかり食べる習慣をつけることが重要です。
特に近年は、朝食を食べない子どもが増えていますが、朝食を食べないことで体重増加、筋肉量減少、メタボリックシンドロームリスク増大などのさまざまなリスクを負うことになります。
1日に必要な栄養素を3回の食事でなく、2回で補おうとするのは、かなり無理があります。
朝食を食べずにサプリメントを利用するのは、本末転倒と言えるでしょう。

参照:Kohei Kiriyama,Mizuki Yamamoto,Daeun Ki,et al. Br J Nutr
. 2022 Dec 28;128(12):2308-2319. doi: 10.1017/S0007114522000356. Epub 2022 Mar 11.

子どもの場合は、おやつでも必要な栄養を意識することが重要です。
例えば、カルシウムを補うのに牛乳やヨーグルトといった乳製品が効果的です。
カルシウムを吸収するために必要な、ビタミンDも含んでいる小魚も良い選択肢です。ビタミンを摂りたい場合には、フルーツを取り入れるのが良いでしょう。

毎日の献立では、味噌汁などの汁物、肉魚卵などタンパク質を含むおかずと、野菜などビタミンや食物繊維を含むおかずを揃えると、必要な栄養はほぼ取れます。
毎回揃えるのは簡単ではないので、1品料理の時に、多めの品目の食事を取り入れることを意識しましょう。

これらのことが実行できていれば、サプリメントを無理に取る必要はありません。

例えば、身長を伸ばすことに関するサプリメントの存在に関し、日本小児内分泌学会は警鐘を鳴らしています。

参照:日本小児内分泌学会. 「身長を伸ばす効果がある」と宣伝されているサプリメント等に関する学会の見解.

ただし、偏食があったり、何かしらの疾患がある場合には、ある栄養素が不足することがありますので、サプリメント利用に関しては、ぜひ医師と相談の上検討してみてください。

まとめ

今回は、子どものサプリメントについて解説しました。

サプリメントは、不足しがちな栄養素を摂る手段として手軽に利用できます。
しかし、まずは日々の食生活で、栄養が不足しないようにすることが重要であり、その上で、補助として使用するのがサプリメントの本来の使い方です。

食生活を見直した上で、不足している栄養素があれば医師と相談の上賢く利用しましょう。

秋谷進医師

投稿者プロフィール

小児科医・児童精神科医・救命救急士
たちばな台クリニック小児科勤務

1992年、桐蔭学園高等学校卒業。1999年、金沢医科大学卒。
金沢医科大学研修医、国立小児病院小児神経科、獨協医科大学越谷病院小児科、児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科、東京西徳洲会病院小児医療センターを経て現職。
専門は小児神経学、児童精神科学。

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