第65回全国矯正展に38,000人が来場。拘禁刑時代の幕開けにふさわしい活気あふれる会場をレポート

「第65回全国矯正展」の横断幕

2025年12月に東京国際フォーラムにて「第65回全国矯正展」が開催されました。主催は法務省の「社会を明るくする運動」中央推進委員会・公益財団法人矯正協会です。

当日は1時間以上も前から開場を待つ人もおり、見える範囲だけでも500人以上が入場を待つほどの盛況ぶり。開場15分前にはホール周囲に長い行列ができており、関心の高さがうかがえました。

来場者数は2日を通して約38,000人。子どもから大人まで幅広い年代の方が訪れた当日の様子をレポートします。

<目次>

懲役刑の代わりに導入された拘禁刑がテーマに

開場を待つ来場者の行列

「全国矯正展」は、全国の刑務所や少年院などの矯正施設で作られた製品を販売・展示し、矯正活動を広く知ってもらうためのイベントです。更生に対する社会の理解と協力の促進を目的としています。今年のテーマは「新たな拘禁刑時代へ〜Correctional Reform in the new era〜」です。

2025年6月、懲役刑・禁錮刑が一本化され、拘禁刑へと切り替わりました。これにより、受刑者1人ひとりに合わせた教育が重視され、社会復帰に向けた取り組みが強化されています。

総出品数は約2,250品目、総出品点数は約6万4,000点。矯正施設で作られた木工、革工、洋裁製品をはじめ、野菜やパンといった人気の食品まで、並ぶ製品は多岐にわたります。昨年よりも100品目、3,000点増え、一層充実したラインナップとなりました。

<2025年全国矯正展の内容>

  • 刑務所作業製品の即売・展示
  • 全国刑務所作業製品審査会における受賞製品や出品製品の展示
  • 矯正広報によるパネル展示
  • 刑務作業体験コーナー
  • プリズングルメコーナー
  • ステージイベント(全国刑務所作業製品審査会授賞式、保護犬プロジェクト)など

期待と熱気に包まれたオープニングセレモニー

オープニングセレモニーに先立ち、法務大臣の平口洋氏が会場を視察し、各地の製品について説明を受けていました。広い会場には全国の矯正施設から集まった製品や展示が並び、短い時間で回りきれないほどの充実ぶりです。

販売ブースを視察する法務大臣の平口洋氏

特設ステージではオープニングセレモニーが行われました。登壇したのは、法務大臣の平口氏、俳優である杉良太郎氏、俳優の石田純一氏、タレントのコロッケ氏、歌手のPaix²のメンバーである井勝めぐみ氏、北尾真奈美氏です。

ステージでテープカットに臨むゲストと法務大臣

法務大臣の平口氏は、「取り組みが広く知られることで、立ち直りを支援する場が広がってほしい」とコメント。杉氏も「刑務所で作った良いものを安く提供して、来場者の期待に応える矯正展にしていくことが大切」と述べました。

テープカットが行われると、会場は大きな拍手に包まれ、全国矯正展がスタートしました。

横浜刑務所のパスタに行列!全国の矯正施設で作られた製品が集結

全国矯正展では、さまざまな製品を目で見て確認し、高品質なものを安く購入できます。各施設にはそれぞれ特色があり、地元企業との連携で生まれた製品や地域の原材料を活かした製品など、その土地ごとの取り組みが反映されています。

津軽塗螺細タンブラー

入口付近では新製品がまとめて展示されており、各ブースを回る前に気になる製品をチェックできます。また、各売り場では新製品にポップがつけられ、目立つような工夫がされていました。

新製品展示ブースに並ぶマル獄エプロンや鞄などの商品

全国の矯正施設では、手に取ってもらえる製品を作りたいという想いから、市場を分析して新しい製品を開発しているとのこと。どの製品もクオリティにこだわり、丁寧に製作されています。

矯正展で人気の製品には多くの人が集まります。横浜刑務所のパスタには長い行列ができ、いくつも購入する人の姿が見られました。

横浜パスタを求める来場者の行列

横須賀刑務所では、毎年人気のブルースティックの新商品として、プレミアムとオレンジスティックが新登場。プレミアムは従来品の性能に加えて除菌剤2倍で消臭を強化しており、オレンジスティックは油汚れに強いそうです。

ブルースティックの新商品プレミアムとオレンジスティック

函館少年刑務所のブースでは「マル獄」の文字が目を引きます。「『マル獄』って有名だよね」「おしゃれなんだよ」と行き交う人が口にしており、多くの人がリュックやエプロンなどをじっくりと見て選んでいました。

函館少年刑務所ブースのマル獄商品

伝統工芸の技術を継いだ受刑者の作品も展示

手織りのじゅうたんである「堺緞通(さかいだんつう)」は江戸時代から続く伝統工芸品です。民間での後継者不足により、現在は大阪刑務所の受刑者のみが製作を担っています。クオ・ヴァディス「謎の絵画」を堺緞通で再現したタペストリーは、細やかな技法が光る職人技の作品。織り上げるのに2年10カ月を要したといいます。

堺緞通で再現されたクオ・ヴァディス「謎の絵画」のタペストリー

1本1本手作業で縫い合わせるため、1日に進むのはわずか0.3mmほどだそう。その場にいた人たちが驚きの声をあげていました。

家具のブースに置かれている製品の数々は、木の温もりが感じられ、手触りがよくツヤのあるものばかり。多くの人が足を止めて見入っており、テーブルを購入する人もいました。

家具ブースを見て回る来場者

おいしい匂いに誘われて 大人気のプリズングルメ

矯正展ではカレーやパスタなどのキッチンカーが出店しており、限定販売のプリズングルメも楽しめます。

プリズンカレーの看板

今年初出店となる岡崎医療刑務所のメニューを再現したキッチンカーでは、施設内で人気のメニューが提供されていました。管理栄養士の黒栁桂子氏が考案し、著書『めざせ! ムショラン三ツ星 刑務所栄養士、今日も受刑者とクサくないメシ作ります』にも掲載されているレシピです。市販の「ピーナツの素」が味の決め手となっているピーナッツ煮、濃いめのミートソースのようなスラッピージョーなど、普段は味わえないメニューが並んでいました。

岡崎医療刑務所のメニューを再現したキッチンカー

全国矯正展の2日目に限定販売された「獄旨ドーナツ」は生地におからを使用し、ココアや抹茶など味のバリエーションも豊富。インパクト抜群のネーミングは、「監獄」と「地獄のように暑い調理場」が由来だそうです。

獄旨ドーナツのココアや抹茶などのラインナップ

限定販売された府中刑務所のパンや北海道の刑務所の野菜は、販売前から長蛇の列ができていました。

府中刑務所のコッペパン

見て、触れて、体験で広がる矯正の世界

刑務作業や性格診断などの体験コーナーもありました。特別機動警備隊指揮官車や白バイ乗車は大人にも子どもにも大人気。刑務官のキッズ制服試着コーナーでは、記念撮影する親子の姿も見られました。

刑務官のキッズ制服を試着し敬礼する女の子

山口刑務所のモザイクアートは、今年初登場の体験コーナーです。色とりどりのパーツを使い自分だけのアートを作り上げる体験で、作る人の個性が光る作品に仕上がります。

モザイクアートに取り組む来場者の手元

革小物の体験コーナーで楽しめるのは「縫わない小財布作り」です。革のパーツを組み合わせて形にしていく工程は、指先を使う繊細なもの。普段体験できない作業に、来場者は真剣な表情で取り組んでいました。

縫わない小財布体験コーナーの看板

授賞式からコンサートまで盛りだくさんのステージイベント

ステージでは、授賞式やコンサート、保護犬プロジェクトの紹介、機動警備隊活動披露などのイベントが行われました。

機動警備隊の活動披露

全国刑務所作業製品審査会で法務大臣賞等を受賞した製品への授賞式では、矯正支援官から表彰状が授与されました。受賞製品の品質の高さが改めて示された形です。

全国刑務所作業製品審査会の授賞式

50年の伝統を誇る刑務官バンド「デビルス」が全国矯正展に初登場。『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマ曲など親しみのある音楽が演奏され、立ち見の人が集まる盛況ぶりです。制服姿で楽器を演奏し、刑務官のイメージとは違った一面を見せてくれました。

府中刑務所の刑務官たちで結成された「デビルス」のバンド演奏

演奏の合間には、刑務所で働くさまざまな職種が紹介されました。刑務官や作業専門官のほか、心理技官や作業療法士など、受刑者の特性に寄り添った支援を行う専門家たちの役割にも触れています。

拘禁刑元年、スローガンは「更生を信じる力でもっと安全で豊かな社会を」。ステージからは、矯正の現場を支える人々の思いが伝わってきました。

知ることで深まる矯正のいま

パネル展示コーナーでは、刑務所の歴史や拘禁刑に関する新しい取り組み、少年院での教育といった矯正施設の幅広い活動が紹介されており、立ち止まって読む来場者の姿も見られました。

刑務所の歴史を紹介するパネル

懲役刑と禁錮刑を廃止した代わりに2025年6月1日から導入された拘禁刑では、受刑者1人ひとりの特性に応じて、作業・教育・医療など適切な支援内容が選択されます。そのため、刑務官や作業専門官だけでなく、心理職などの専門家によるサポートが必要です。

また、少年院では社会復帰に向けた教育や職業訓練が行われています。収容されている少年の背景には、発達・精神障害や被虐待経験などそれぞれ異なる事情があり、個々に寄り添うことが大切だといいます。

少年院で作られた習字や絵画の展示

更生を支える仕組みを知ることができる全国矯正展

にぎわう全国矯正展の会場内

拘禁刑元年となる2025年の全国矯正展では、矯正施設の新たな取り組みや、受刑者の社会復帰を支える人々の想いが会場に溢れていました。

製品の購入が受刑者の励みになり、売上の一部は被害者支援にも役立てられます。「消費者の声を届けることで受刑者は意欲が向上し、日々の生活態度が変わることもある」と担当者は話していました。

こうした変化の積み重ねが、再犯防止につながっていきます。そのためには、社会や地域の協力が不可欠です。

矯正展は、矯正施設の現場を知り、更生を支える社会の仕組みを理解するきっかけになります。知ることから始まるその一歩が、誰かの更生を支える力となるのかもしれません。

<TEXT/佐藤みな>

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