天然ダイヤモンド市場に変革の波 合成ダイヤが引き起こす価格下落

天然ダイヤモンド市場に変革の波 合成ダイヤが引き起こす価格下落

合成ダイヤモンドの急速な普及により、天然ダイヤモンド市場に大きな変化が訪れています。技術革新によって製造される合成ダイヤモンドは、天然ダイヤモンドと化学的・物理的特性が全く同じでありながら、価格は天然の15分の1程度まで低下しています。この状況を受けて、天然ダイヤモンドの価格は2022年比で約30%下落し、過去5年間で最低水準を記録しています。

市場データによると、合成ダイヤモンドの市場占有率は2015年の約1%から2024年には約20%にまで急拡大しました。特にZ世代を中心とした若年層は、エシカル消費や環境配慮を重視する傾向が強く、手頃な価格で入手できる合成ダイヤモンドへの関心を高めています。実際、1カラットの高品質天然ダイヤモンドが約100万円で取引される一方、合成ダイヤモンドは6万円台で購入できるようになりました。このコストパフォーマンスの高さが、合成ダイヤモンドの需要拡大を後押ししています。

天然ダイヤモンド業界を長年牽引してきたデビアス社も、この変化に対応を迫られています。同社は2018年に合成ダイヤモンド事業「ライトボックス」に参入しましたが、合成ダイヤモンドの卸売価格が90%以上下落したことを受けて、2025年5月に事業からの撤退を発表しました。デビアス社の2024年決算は、売上高が前年比23%減の32億9000万ドル、純損失2億8800万ドルという厳しい結果となっています。

撤退後、デビアス社は米国で大規模な天然ダイヤモンド販売促進活動を開始しました。米国の著名歌手テイラー・スウィフト氏と連携し、「自然界で10億年の歳月を経て作られる」という天然ダイヤモンドの希少性を強調する戦略に転換しています。この動きは、天然ダイヤモンド市場が「富裕層向けの超高級品」と「大衆向けのコモディティ」への二極化を迎えていることを示しています。

鉱山閉鎖の動きも相次いでいます。ダイヤモンド産業に経済を大きく依存するボツワナでは、ダイヤモンドが歳入の30%、輸出の82%、国内総生産(GDP)の24%を占めています。天然ダイヤモンド価格の下落は、こうした産出国の経済に深刻な影響を及ぼす可能性があります。過去にも2009年、世界的な不況の影響でボツワナ政府とデビアス社の合弁会社デブズワナがダイヤモンド鉱山2か所の操業を一時停止した事例があり、今後も同様の生産調整が続くとみられています。

日本市場においても変化の兆しが見えています。日本のラボグロウンダイヤモンド市場は、2024年の5億1100万米ドルから2033年には22億4290万米ドルに達すると予測されており、年平均成長率は16.77%と高い成長が見込まれています。これは天然ダイヤモンド市場の成長率(約4.5%程度)を大きく上回る数字です。持続可能性や倫理的な調達を重視する消費者層の拡大が、この成長を支えています。

市場の今後と二極化の進行

専門家の間では、今後の市場動向について明確な見解が示されています。ダイヤモンド専門家のエダン・ゴラン氏は「合成ダイヤの価格は引き続き下落が予想される。天然ダイヤへの需要が一定程度継続すれば、天然ダイヤはより希少なものとなり、価格が上昇する可能性もある」と指摘しています。

実際、市場では価格の二極化が進行しています。高品質で大粒の天然ダイヤモンドは、その希少性から今後も価値を維持し、むしろ価格が上昇する可能性があります。一方、小粒のメレダイヤや標準グレードの天然ダイヤモンドは、合成ダイヤモンドとの競合により価格下落が続く見通しです。業界専門家は「合成ダイヤモンドの供給増加傾向が続く中、天然ダイヤモンドの価格は需給バランスが改善されない限り、今後も調整局面にとどまる可能性が高い」と分析しています。

天然ダイヤモンド業界は、一部の高級品市場を除いて厳しい状況が続く可能性があります。デビアス社の親会社であるアングロ・アメリカンは、ダイヤモンド事業から撤退し、銅や鉄鉱石などの中核事業に経営資源を集中させる方針を打ち出しています。2023年と2024年に合計約45億ドルもの減損処理を実施したことからも、ダイヤモンド市場の変化がいかに深刻であるかが伺えます。

今後、天然ダイヤモンドは需要に応じて生産調整が進み、供給が減少していくとみられています。一方、合成ダイヤモンド市場は技術革新と価格競争力を武器に、さらなる成長が期待されています。消費者にとっては選択肢が広がる一方で、ダイヤモンド産業全体は大きな転換期を迎えています。

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