
東京23区および武蔵野市、三鷹市を営業区域とするタクシーの運賃が、今春ごろから値上げされます。国土交通省が2026年1月14日、公共料金の適正性を審議する内閣府消費者委員会に改定案を提示しました。改定率は10.14%で、運転手の賃上げ原資として充てられる予定です。今回の運賃改定は2022年10月以来となります。
改定後の運賃は、初乗り運賃(500円)の適用距離が現行の1.096キロメートルから1キロメートルに短縮されます。また、距離あたりの加算運賃(100円)は255メートルから232メートルへ、時速10キロメートル以下での時間分加算(100円)も1分35秒から1分25秒へと、それぞれ短縮されます。東京ハイヤー・タクシー協会によると、運転手の平均年収は502万円で、全産業の平均年収である644万円と比較すると142万円の差があり、賃金改善が遅れている状況です。
運賃改定の背景には、運転手の処遇改善だけでなく、燃料費の高騰による費用増への対応も含まれています。タクシー業界では、原価構成の約8~9%を燃料費が占めており、近年の価格高騰が経営を圧迫しています。また、乗客の利便性向上のための投資も必要とされており、キャッシュレス決済システムの導入やドライブレコーダーの設置など、安全性と利便性を高めるための費用も増加しています。
新型コロナウイルス禍が明けてから、移動需要は着実に回復しています。2022年後半からタクシーの利用者数は徐々に増加し始め、2023年には多くのタクシー会社がコロナ禍前の売上水準まで回復しました。特に訪日外国人観光客の増加に伴うインバウンド需要の拡大は、タクシー業界にとって追い風となっています。多言語対応の配車アプリやキャッシュレス決済の普及も、外国人観光客の利用を後押ししています。
一方で、タクシー業界は深刻な運転手不足に直面しています。全国のタクシー運転手数は2019年末の29万1,516名から2023年3月末には23万1,938名へと、約20.4%減少しました。東京都内でも、2021年度の法人タクシー運転者数は4万9,930人となり、統計開始以来初めて5万人を下回りました。コロナ禍による売上減少で離職した運転手の多くは他業種に転職しており、需要が回復した後も人手不足が続いています。
運賃改定の今後の流れと業界の展望
今回の運賃改定案は、消費者委員会での審議を経て、閣議などの承認手続きを経た上で正式に適用される予定です。一部報道によると、2026年1月30日の実施に向けて、東京ハイヤー・タクシー協会が周知徹底を図り、スムーズな運賃改定を目指しています。
タクシー業界は現在、需要回復と人手不足という相反する状況に置かれています。車両はあっても運転手がいないために稼働できない「休車」の状態が発生しており、特に東京都内では深刻な問題となっています。国土交通省の調査によると、東京都特別区・武三地区では、タクシー車両台数約4万8,000台に対して、実際に稼働できている車両はそれよりも少ない状況が続いています。
今回の運賃改定により、運転手の待遇改善が進めば、人手不足の緩和にもつながることが期待されています。東京23区内では年収1,000万円台の運転手も出現しており、「稼げる仕事」としての認識も広がりつつあります。配車アプリの普及により営業効率が向上し、運転手の収入増加にも寄与しています。
タクシー業界は、デジタル技術の活用や働き方改革を通じて、課題解決に取り組んでいます。多言語対応、キャッシュレス決済、配車アプリの普及など、利便性向上への投資は今後も続くと見られます。2026年春の運賃改定は、業界の持続可能な成長に向けた重要な一歩となるでしょう。
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