肥満症治療薬の普及で航空業界に追い風、乗客の減量が燃費改善に貢献

肥満症治療薬の普及で航空業界に追い風、乗客の減量が燃費改善に貢献

米国で急速に普及する肥満症治療薬が、航空業界に思わぬ恩恵をもたらす可能性が浮上しています。米金融大手ジェフリーズは2026年1月に発表した分析レポートで、米国の成人が平均で10%減量すれば、航空会社の燃料費が約1.5%削減されるとの試算を示しました。この予測は、注射型に加えて錠剤タイプの肥満症治療薬が市場に登場したことで、米国での利用がさらに拡大し、成人の肥満率が継続的に減少するという前提に基づいています。

ジェフリーズの試算では、ボーイング737MAX8型機を例に、乗客の平均体重が180ポンド(約82キログラム)から162ポンドへと10%減少すると想定しました。荷物などを含めた機体の総重量は約2%減少する計算となり、これが燃料消費の削減に直結します。国際航空運送協会(IATA)によると、航空機燃料の費用は航空会社の運営コストの20~30%を占めており、燃料費は航空会社の業績を大きく左右する最重要コスト項目の一つです。

米格安航空会社(LCC)のサウスウエスト航空は2025年7~9月期の四半期報告書で、航空機燃料の価格が1ガロン(約4リットル)につき1セント(0.01ドル=約1.56円)変動すれば、1四半期の燃料費が数百万ドル単位で増減すると説明しています。このような燃料費の変動が業績に及ぼす影響の大きさを考慮すると、わずかな重量変動でも経営に与える効果は決して小さくありません。​

仮に乗客の体重が10%減少すれば、米航空大手のユナイテッド航空、デルタ航空、アメリカン航空、そしてLCCのサウスウエスト航空の1株当たり利益(EPS)が平均で4%向上する可能性があるとジェフリーズは分析しています。

肥満症治療薬の普及で米国の肥満率が3年連続低下

肥満症治療薬の急速な普及により、試算で示された乗客の体重10%減少の実現性も高まっています。米調査会社ギャラップが2025年10月末に発表した最新の調査結果によると、18歳以上の米成人の肥満率は2025年に37.0%となり、2022年にピークを迎えた40%から3年連続で低下しました。この期間で肥満症の米成人が700万人以上減少したと推計されており、米成人の12%がこうした薬を使用したことがあると回答しています。

2026年1月には、デンマークの製薬大手ノボノルディスクが錠剤タイプの肥満症治療薬「ウゴービ」の米国での販売を開始しました。ノボノルディスクは、服用を続ければ体重の17%を減らすことが期待できると説明しています。肥満症治療薬市場でノボノルディスクとシェアを分け合う米製薬大手イーライ・リリーの時価総額は2025年11月に成長期待から一時1兆ドルに到達し、製薬企業として初めて「1兆ドルクラブ」入りを果たしました。イーライ・リリーも2026年中に経口タイプの肥満症治療薬の発売を目指しています。

関連記事

コメントは利用できません。

最近のおすすめ記事

  1. テスラの自動車
    米電気自動車(EV)大手テスラは、人工知能(AI)やロボティクス分野を中心とした中長期的な成長基盤を…
  2. ChatGPTをインストールしたノートPC
    米AI開発大手のOpenAIは、米国時間9月29日に開催した年次開発者イベント「DevDay 202…
  3. 【医師解説】子どもの溺水による心肺停止 命を救う心肺蘇生と人工呼吸
    子どもの溺水による心停止では、胸骨圧迫だけでなく人工呼吸を伴う蘇生が、予後において重要であると判明し…

おすすめ記事

  1. 岐阜矯正展の入場ゲート

    2026-1-11

    「技術に誇りをもって社会復帰して欲しい」刑務官の願いを込めた「岐阜矯正展」が開催

    2025年で43回目を迎える岐阜矯正展が開催。法務省主唱の「社会を明るくする運動」の一環で、刑務所内…
  2. 大分刑務所

    2025-11-16

    「ガラスペン」で有名な大分刑務所が対話重視の体制へ。法改正による変化の実態を刑務官が語る

    とんぼ玉やガラスペンなどのガラス工芸品を製作している大分刑務所。「ものづくり」に強みを持つ矯正施設は…
  3. 社会復帰支援担当の刑務官

    2025-11-19

    社会の一員としての再出発を目指して。沖縄刑務所が挑む社会復帰支援の最前線

    刑期を終え、社会へ戻る受刑者たち。彼らが再び地域社会の一員として自立した生活を送るためには、単に刑期…

2026年度矯正展まとめ

2026年度 矯正展まとめ

【結果】コンテスト

【結果発表】ライティングコンテスト企画2025年9-10月(大阪・関西万博 第4回)

アーカイブ

ページ上部へ戻る