実業家のイーロン・マスク氏は人工知能(AI)について、2025年末ごろに人類よりも賢いAIが登場すると予測しました。半導体などのハードウェア供給が持続可能であれば実現するとしていますが、変圧器や電力の供給が将来的な課題になりうるとの見解も示しています。
この発言は、8日に行われたノルウェー銀行インベストメント・マネジメントのニコライ・タンゲン氏とのオンライン対談で行われました。イーロン・マスク氏は「最も賢い人間より賢いのがAGIと定義するなら、来年末か2年以内だろう」と予測しました。さらに、AIが人類全体の集合知を超えるのは5年後と予想しています。
2023年7月には、イーロン・マスク氏が自身のAI企業「xAI(エックスエーアイ)」を立ち上げ、その発足時にはAGIが2029年ごろに登場する可能性があると発表しました。彼は以前、人気の対話型生成AI「ChatGPT」を手掛けるOpenAIIの設立に関与していましたが、現在はOpenAIに対抗する形でxAIを推進しています。
最近の動向として、xAIが開発中の新AI「Grok(グロック)」について、5月に新たな基盤技術の完成を目指していることが明らかになりました。また、イーロン・マスク氏は米エヌビディア製のAI半導体「H100」を2万個使用し、AIのデータ学習を大規模に進めていると述べています。
ネット上では、「ついにターミネーターの時代が来てしまったか」「人間が考えもつかないような方法で、人間のコントロールを脱しそうだね」「賢いの定義はさて置きそのAIを人間より賢いAIと誰がどう評価するのか」などの意見が寄せられています。
10万個のH100半導体が必要 数年後には電力供給が主要な課題
最新のテクノロジー開発において、イーロン・マスク氏は次世代の基盤技術の開発に必要な資材として、10万個のH100半導体が必要だと述べました。2024年に入り、AI半導体の供給問題が解決する一方で、データセンターでの変圧器の不足が新たな課題として浮上し、数年後には電力供給が主要な課題になると指摘しました。
生成AIの発展には大量の電力が必要であり、これが一般的なインターネットサービスと比べて消費電力が多い理由です。さらに、イーロン・マスク氏はAIの高度化に伴う学習データの不足を懸念しています。
世界中のあらゆる書籍やネット上の動画だけでは不十分で、現実世界の映像やAIが生成する合成データの活用が重要になるとも述べています。また、彼がCEOを務めるテスラにおいて、車載カメラが撮影する周囲の映像データが、AI開発においても重要であることを強調しました。
電気自動車(EV)市場についても言及し、「最終的にEVの勝利は不可避だ」と主張しました。この背景には、全車両の電動化が時間の問題であるというビジョンがあります。海外での展開を強化している中国のEVメーカーを称賛し、「最もタフな競争相手」と評しています。