
トランプ米政権が、連邦政府による人工知能(AI)の調達条件を大幅に見直し、民間企業に対し「あらゆる合法的な用途」での利用を認めることを義務付ける新たな契約指針を策定したと報じられています。 英紙フィナンシャル・タイムズの報道を基にロイター通信が伝えたもので、背景にはAIの軍事利用や監視用途をめぐる米国防総省と米AI新興企業アンソロピックの深刻な対立があります。
国防総省は5日、アンソロピックをサプライチェーン上の「リスク」に正式指定し、米軍向け業務で政府請負業者が同社の技術を使うことを禁じました。 この指定を受け、国務省や財務省などの機関も、対話型AIの基盤モデルをアンソロピックからオープンAI製モデルに切り替える動きを強めていると報じられています。
アンソロピックは、自社AIの軍事利用に明確な「レッドライン」を設け、完全自律型兵器や米国民に対する大規模監視への利用を認めない方針を公言してきました。 同社はこうした制限が人権や安全確保の観点から不可欠だと主張し、国防総省との契約でも例外規定を求めていたとされます。 一方、国防総省は「あらゆる合法的な用途」での利用を契約条件とし、安全対策が「行き過ぎている」とアンソロピック側を批判してきました。
トランプ政権は2025年7月に「America’s AI Action Plan(AI行動計画)」を発表し、政府が調達するAIについて「イデオロギー的な偏向がないこと」を要件とする方針を打ち出しています。 今回の新契約指針は、この行動計画を具体化し、連邦政府一般調達局(GSA)が調達するAIモデルに対し、合法的な範囲での用途制限を認めないことや、「党派的・イデオロギー的な判断を意図的に組み込まない」ことを条件として明記する狙いがあるとみられます。
これまでGSAはオープンAIやメタ、xAIなど複数企業のモデルを政府向けに採用してきましたが、新指針の下では、企業側が初期契約の段階で政府の要求を全面的に受け入れるかどうかを迫られる局面が増えそうです。
アンソロピック、政府排除は「報復」と提訴 AI倫理と国家安全保障の綱引き
アンソロピックは9日、トランプ政権による政府調達からの排除や「サプライチェーン・リスク」指定は不当だとして、カリフォルニア州の連邦地裁に提訴しました。 訴状では、同社が自社AIの「米国民の監視」や「完全な自律型兵器」への利用を拒否したことに対する「報復」であり、憲法が保障する言論の自由を侵害する違法な措置だと主張していると報じられています。
ロイターによれば、国防総省によるリスク指定は通常、敵対国企業など安全保障上の大きな懸念がある相手に適用されるもので、米国内スタートアップへの適用は異例です。指定により政府請負業者がアンソロピック製AIを軍関連業務で使うことは事実上不可能となり、同社にとって政府向けビジネスの打撃は大きいとみられます。一方、国務省が対話型AI「ステートチャット」の基盤をオープンAI製に切り替え、財務省もアンソロピック製AIの使用中止を表明するなど、他社への乗り換えはすでに進みつつあります。
トランプ政権は、州ごとの独自AI規制を制限する大統領令や、AI分野の規制緩和と輸出管理の厳格化を掲げた施策を相次いで打ち出しており、国家主導でAI覇権を維持・強化する姿勢を鮮明にしています。 今回の新たな調達規則案は、倫理上の制約を重視するAI企業に対し、国家安全保障や政策目的を優先する政権側がどこまで圧力を強めるのかを占う試金石となりそうです。










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