
総合繊維メーカーのセーレンが、超小型人工衛星の量産体制を武器に宇宙関連事業の拡大を加速させています。 製造コストが低く機動的に打ち上げが可能な超小型衛星に特化し、スタートアップの技術力と自社の資金力・生産基盤を組み合わせることで、競合の少ない市場での顧客開拓を進めています。 2031年3月期には宇宙事業の売上高を60億円規模まで伸ばし、自動車関連に続く新たな成長事業に育成する計画です。
2025年12月には、超小型衛星スタートアップのアークエッジ・スペース(東京都江東区)と、超小型衛星の多数機製造に向けた連携強化の覚書を締結しました。 主に10キログラム以下の超小型衛星を対象に、従来を大きく上回る多数機製造体制の構築に挑戦し、コスト低減と納期短縮を通じてコンステレーション運用向けの需要を取り込む狙いです。 アークエッジ・スペースは既に超小型衛星6機の製造をセーレンに発注しており、これらは地球観測や通信などの用途で運用されてきました。
セーレンは2009年に宇宙ビジネスへ参入し、まずは繊維技術を生かしてロケット内部の衝撃緩和材を開発、日本の大型基幹ロケット「H3」への供給実績も積み上げてきました。 福井県の支援を受けながら人工衛星分野にも乗り出し、2019年には東京大学・中須賀真一教授の研究室と共同で超小型衛星の開発に成功するなど、技術とノウハウの蓄積を進めています。 山田英幸社長は、世界各地に展開する自社工場の製造機械を、将来は衛星から遠隔監視・制御する構想も視野に入れており、衛星開発が自社のデジタル生産体制の高度化にもつながると述べています。
一方で、同社の営業利益の約8割は依然として車両資材事業が占め、衛星を含むエレクトロニクス事業は1割強にとどまっています。 自動車産業の景気変動に左右されにくい収益構造を目指すうえで、宇宙関連は中長期的な成長が見込める有望分野と位置づけられています。 大型衛星中心の市場に比べ、超小型衛星は新規参入が可能な余地が大きく、セーレンはここを「第二の柱」として育てる方針です。
スタートアップ連携で量産ノウハウを横展開 試験サービスなど新ビジネスも
宇宙ビジネスをゼロから立ち上げたセーレンにとって、大学やスタートアップとの連携は事業拡大の鍵となっています。 衛星開発の高い技術力を持ちながらも資金力や量産ノウハウに課題を抱えるスタートアップに対し、セーレンは自社工場の生産基盤を提供し、部材レイアウトや配線(ハーネス)の集約など、量産を前提とした設計改善を進めてきました。 その結果、部品点数や配線本数を減らしながら信頼性を確保する設計が実現し、コスト削減や納期短縮に貢献しているといいます。
アークエッジ・スペースとの連携強化では、コンステレーション運用を見据えた超小型衛星の多数機製造に向け、企画・設計から製造、運用までを包括的に支える体制づくりが進んでいます。 数百〜数千基規模の衛星網が前提となる時代において、いかに速く、安く、高精度に量産できるかが競争力の源泉となるため、長年の繊維事業で培った品質管理や生産技術が衛星製造の現場でも生かされています。
セーレンは、衛星の設計・開発・製造だけでなく、宇宙空間で部品や材料を実証したい企業向けに、超小型衛星を活用した試験サービスの事業化も見込んでいます。 宇宙環境での耐久性検証や新素材の評価など、地上では再現が難しい試験ニーズを取り込み、衛星プラットフォームをサービスとして提供することで、収益機会の拡大を図ります。 超小型衛星が宇宙ビジネスの「実験場」として機能することで、製造業全体の技術高度化にもつながる可能性があります。
こうした取り組みにより、セーレンは130年以上培ってきた「ものづくり」の強みを宇宙分野へと横展開し、地方製造業の新たな成長モデルを提示しようとしています。 今後、コンステレーションの本格運用や月面・深宇宙向けのインフラ構築など、超小型衛星の用途が広がるなかで、量産対応力を持つプレーヤーとしてどこまで存在感を高められるかが注目されます。












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