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ベンツ・ポルシェの聖地「シュトゥットガルト」に立ち込める暗雲…。自動車産業の凋落から脱却するカギ

先日、シュトゥットガルトの高級デパートに勤めるドイツ人の友人から面白い話を聞きました。
「ここに住む金持ちは最近、ベルリンとか他の大都市に行ってお金をたくさん使うんだって。そこでは知り合いがいないから、妬まれることもなければ、自分の財力について噂されることもない。シュトゥットガルトで感じるような風当たりがないからだってさ」
実際、彼の勤めるBreuninger(ブロイニンガー)というデパートはブランドのテナントが多く入る、日本の伊勢丹のような位置付け。地元で活躍するサッカー・ブンデスリーガの選手も立ち寄ります。しかし最近、売り場はガラガラの日が多いことが気になります。
シュトゥットガルトの気質は、非常に実直で勤勉とされる一方、「大変ケチな金持ち」とも揶揄されます。 これは、住民が地元の高級デパートでお金を使いにくい心理的背景のひとつとも考えられますが、本当に理由はそれだけなのでしょうか。
<目次>

変化しつつあるシュトゥットガルトの「光の側面」
他のドイツ人からしてみれば、シュトゥットガルトはお金持ちが多い都市です。不況とはいえ、大きくて新しい大型ショッピングモールや商業施設が建てられています。
シュトゥットガルト中心駅を地下化して、鉄道網・空港アクセスを一体化する計画「シュトゥットガルト21」も現在進行中。これは周辺の都市開発も含めた巨大プロジェクトで、ヨーロッパでも有数の大規模鉄道プロジェクトです。
これを受け、優秀な人材や企業も世界中から集まってくると予想されています。しかし建設は長期化しており、その嵩張る費用や環境影響、住民反対などで議論がもつれています。
そんなシュトゥットガルトには現在暗雲が立ち込めています。たとえば筆者は先週、市立図書館に行きました。本を借りるのに、年間26ユーロのお金がかかるとのこと。もしくは毎月5ユーロで分割払いもできる、と言われました。
市立図書館は本来ならば私たちの税金で成り立っているはずだし、まさかそんなにも会員費がかかるとは思っていなかったため、とても驚いたのを覚えています。また別の例として、非常に重要な人件費が削られていることを感じます。
たとえば、ドイツの学校に障害のある子供が通う場合、両親は自分の子供一人につき専用の Schulbegleiter-/-rin(シュールベグライター・学習支援補助者)を手配し、学校にいる間にさまざまなサポートを受けることができます。
この費用は国や州の教育・福祉制度による公的支援 でカバーされ、親が直接負担する必要はありません。子供の学習や日常生活を手助けする非常に意味のある職業で、特別な資格がなくても登録制で働くことができ、パートタイムとして多くの人に仕事の機会を提供してきました。
しかし今年になり、シュトゥットガルト市からの援助が突如完全に停止されたため、親は自分でプライベートに人を雇わなければならなくなりました。現在、新しい構造で支援体制を再構築しているところだと市は説明していますが、どうなるでしょうか。
最近ではガソリン代も上がり(3月21日現在、約1.9ユーロ / リットル)、整備費も部品もびっくりするほど高騰しています。シュトゥットガルトは丘陵地にあるので、坂道が多く、駐車場を作りにくい土地柄であることが駐車場が少ない原因のひとつとして挙げられ、料金が非常に高いのです。
環境政策を積極的に進めていることもあり、大型の駐車場を意図的に設置しなかったり、交通渋滞対策として都市中心部で路上駐車の制限を強めたりしていることも原因のひとつです。
車は「金食い虫」ですが、しかし車に乗らなくても公共のバス・電車も今年に入って値上がりしましたし(月の定期代「ドイツ全国チケット」は63ユーロ)、便利を謳う割にはしょっちゅうストライキが起きます。以前は勤務先の企業が交通費を満額で負担してくれることも普通でしたが、最近では州公務員の教師でさえ、雇用主がその25%しか負担しかしてくれません。

グラつき始めた車産業
シュトゥットガルトはポルシェ、メルセデス、ボッシュの本拠地で、街はその税金収入で長年潤ってきました。しかしポルシェは2025年に営業利益が前年から約91〜98%減少するなど苦戦しているという報道もありますし、メルセデス・ベンツの2025年の純利益は約48〜49%減少し売上も落ち込んでいます。
また自動車部品大手のボッシュも2024年に営業利益が約3割減少、利益率が低下していると伝えられています。バイプリンゲンというところにある工業は2028年までの完全撤退を4ヶ月前に発表、70年にも及ぶ歴史に幕を閉じると同時に、560人の失業者を出すことが決まりました。
これらの動きはバーデン=ヴュルテンベルク州での自動車・機械産業全体の構造変化を大きく反映させるだけでなく、ドイツ全体の税収基盤の弱体化と財政への影響を懸念させます。
ドイツ最大の自動車メーカーであるフォルクスワーゲンも2025年度の利益が前年から約44%減少したため、グループ全体でドイツ国内の約50,000人の雇用を削減する計画を発表しました。
フォルクスワーゲングループといえばアウディなどもこの傘下にあり、その存続が危ぶまれます。これは2030年までかけて実施される予定ですが、この数が全世界ではなくドイツ国内だけで解雇されるものだとするならば、かなりの数が削られることになります。自動車産業はドイツの雇用の中核ですが、1949年以来の大不況を迎えていると、多くの経済アナリストなどが危機を煽っています。

EV化、半導体不足、材料費上昇
大きな企業が利益減少となれば、雇用を削減、税収減の影響はこのようにありとあらゆる部門に及ぼします。昔のように自動車をインハウスで製造していた時代に比べ、現在の車は超ハイテク化し、非常に複雑なサプライチェーン依存型になっています。
そのため、部品調達でどこかにトラブルが起きると、それが連鎖的に世界中に影響を及ぼすことになります。また、部品や材料が特定の国に偏りすぎるほど、その国の情勢が生産量や納期に大きな打撃を与えます。本来はジャストインタイム方式が効率性を高めるはずで、誰もがトヨタ式に憧れました。
しかし依存度が高まり、サプライチェーン自体が必ずしも盤石なものではなくなって来たのです。その結果、安定した供給が難しくなり、労働コストや品質の問題が生じ、それがしいては安全性そのものにも影響することがあります。サプライチェーンは本来合理的であるはずなのに、人間的な感情がグッと入りすぎていると感じます。
それを考えると、車産業に大きく頼った日本ももはや「対岸の火事」とはいえなくなりました。ポルシェやメルセデスなどは自社の持つ高級ブランドにしがみつきすぎた「大企業病」を患い、もしかしたら何らかの企業努力を怠っていたのかも知れません。中国製電気自動車(EV)との競争や米国による高関税政策で、経営が悪化してきたのはもちろんなのですが、それでもあまりにも早く訪れた時代の速すぎる波に乗れなくて、試行錯誤しているかのようです。
中国での富裕層相手のビジネスがあまりに成功していることで、その成功体験や慢心が、戦略でのバランスを崩したようにも思えます。現在の状況の激しさを考える時、過去からの危機管理を怠り、敷いては将来へつながる意思決定の遅さに繋がったのかもしれません。
あるいは台頭してきたテスラのような超高級ブランドを一般市民が簡単に手にすることはほぼ不可能だとし、早くに敵外視したこともあるかもしれません。事実として、そのプラグステーションの数が圧倒的に足りません。
しかしながらそういった他社のマーケティングの穴にあぐらをかき、オウンブランドのあり方に誠実であり続けなかったこと、それが一番大きな原因なのかもしれません。そうした背景を踏まえ、同じ過ちをしないために、これからの自動車産業はEV化やソフトウェア開発、さらに高い安全性の追求が重要になります。
日本の自動車産業はドイツと類似する部分が多くありますが、あえてその共通点を見つめ、もっとさらなる技術投資を行い、「日本の車は安全だ」というのを企業単位の主張にとどめず、日本国全体のブランドとして車産業で協力して示していく姿勢が求められると思われます。

緑の党が躍進した理由
2026年3月8日のバーデン=ヴュルテンベルク州議会選挙で、緑の党が圧倒的な強さで勝利しました。この選挙を踏まえ、これからの日本の車産業はこれからどうあるべきなのか、そのヒントを得たような気がしました。
緑の党の候補として党を勝利に導いたのは、チェム・オズデミル議員。トルコ系としては初めて州首相に就く見込みの政治家で、政治的キャリアの非常に長く、大変人気の政治家です。彼の人として魅力はもちろんですが、移民をバックグラウンドとした人々から、特に支持を得ました。
この街に住む外国人の比率は2025年時点で28.1% です。両親など移民背景のある比率を含めた場合には40〜44%となり、ここシュトゥットガルトはドイツの大都市の中では移民背景の割合が高い方だと言えます。年代別に言えば、これからの未来を作っていく16歳から24歳までの支持層でも27〜28%の票を緑の党が獲得、これはドイツ全国でも見られる極めて顕著な傾向です。
つまり生き残るには、これらの世代との連携が大事です。彼らに支持されるために企業は表面的な変化をするのでなく、車産業全体で環境・脱酸素政策や、世界的な製造業の暗い行末の課題にきちんと真摯に向き合い、彼らの声に対応し続けるビジネスモデルを作ることが大切です。
エネルギーは永遠にあるわけではありません。生き残りを図るには、電気自動車や新素材、あるいは新世代の省エネ技術への開発が必須であり、そしてそれを行うことにより人々に雇用の安心を与え、陳腐な言い方かもしれませんが、人々や世界を平和に導く企業でなければならないということです。ただしそれが平和を口実にした武器開発や、間違った方向に転じないよう、慎重であることが求められます。
奇跡は一夜にしてなりません。従来型のものと新技術融合を常に目指し、争い合うことにエネルギーを投資するのでなく、コミュニケーションが一方通行にならない社会を目指すべきなのです。




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