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「ちょっと小腹が空いたからスナック菓子をつまんで、気づいたら一袋空っぽになっていた」
そんな経験がある方は多いのではないでしょうか。
他に健康的で美味しいものはあるのに、なぜ健康に良くなさそうなスナック菓子がやめられないのか。それは、脳にある「報酬回路」が関係しています。
今回は、報酬回路について解説し、その一例として、スナック菓子が報酬回路に与える影響について検討した研究を紹介します。
論文について
ドイツ・マックスプランク代謝研究所のSharmili Edwin Thanarajah氏らが、Cell Metabolism誌に2023年4月4日に報告した論文です。
報酬回路とは
報酬回路の「報酬」とは、快感や満足といった幸福につながる感情のことを指します。脳内の神経回路システムの中で、この報酬に司る部分のことを報酬回路といいます。「報酬」にはいいことがあったり、褒められたりするなどの精神的な快感や、美味しいものを食べる、性行為をするなど、肉体的な快感が含まれます。脳はこの「快感(=報酬)」を条件反射のように記憶します。これにより、また同じ快感を得られるように、同じ行動を好むようになるのです。
生き物が繁殖するうえで、重要な役割を果たしていると考えられ、食事をして生命たもつ、性行為をして繁殖する、といった生命の基本的な営みに関わっている部分といえます。
研究が行われた背景
過去の研究で、食べ物の摂取が、脳内の報酬回路、特にドーパミンに関連するシステムに影響を与えることが示されています。特に、甘くて脂肪が多いような食べ物は、報酬回路をより強く刺激し、快楽的な感情を引き起こして食欲を促進することが明らかになっています。しかし、習慣的にこれらの食品を摂取することによる影響については、まだはっきりと解明されていませんでした。この研究は、甘くて脂肪分の多いスナックを日常的に食べることが、長期的にどのような影響を与えるかについて評価することを目的に実施されました。
研究の方法
標準体重の参加者を、以下の2つの群にランダムに振り分けました。
- 通常の食事に加えて高脂肪・高糖質のスナックを8週間摂取する群
- 低脂肪・低糖質のスナックを8週間摂取する群
この2つの群で観察を行いました。
研究結果
2つの群に分けた被験者を8週間観察した結果、以下のような結果が得られました。
脳の報酬回路の変化:高脂肪・高糖質の食品摂取を続けると、高カロリー食品への報酬回路の反応が強化されました。脳が、より高カロリーの食品を求める状態になり、より高カロリーの食品に対して、快楽的な反応を示すようになったということがいえます。
食品嗜好の変化:高脂肪・高糖質の食品を繰り返し摂取したあと、低脂肪食への嗜好が大きく減少しました。食品選択の際に、低脂肪食を無意識に避けてしまうことに繋がり、より高脂肪・高糖質の食事を選びやすくなります。これらの変化は、体重の増加や代謝状態との変化とは無関係に起こったことも分かっています。つまり、カロリー摂取量の総量が同じで体重が増えていなかったとしても、高脂肪・高糖質の食品は脳の報酬回路に影響を与えて、食事摂取の傾向に影響を与えるということが示されています。
この研究から分かったこと
肥満対策では、カロリー摂取量を下げることがメインになりがちで、とにかく食事量を減らそうとする人が多いのが現状です。しかし、ただ単に食事の摂取量を減らすだけで、高脂肪・高糖質のものを食べていると、脳の報酬回路が変化してしまい、将来的な食品の選択に大きな影響を及ぼす可能性が示唆されました。高脂肪・高糖質の食事を繰り返すと、脳の報酬回路に変化が起こり、高脂肪・高糖質の食事に対する快楽が高まり、食生活を変えるのが難しくなっていくのです。
つまり、ダイエットをしたいという人は、まずカロリーを減らすために、シンプルに食事量を減らすのに先立ち、同じカロリー摂取量でも低脂肪・低糖質の食事に切り替えて、高脂肪、高糖質の食事の影響を断ち切り、そこから食事摂取量を下げてダイエットをすることが重要です。これにより、報酬回路への影響がなくなった状態でダイエットをすることができるため、スムーズなダイエットができ、ダイエットを終えた後も脂肪や糖質の摂取を抑えた状態を保つことが容易になり、リバウンドもしにくくなります。
報酬回路に影響を与えるジャンクフードから、しっかりとした食生活への変化を
今回は、脂っこいお菓子が脳に与える影響についての論文を解説しました。
ついつい食べてしまうお菓子ですが、しっかり脳にまで影響を与えているのです。ジャンクフードに手を出す前に、食生活についてしっかりと考えることが重要といえるでしょう。