新NISA開始から1年半で口座数2,600万超 「貯蓄から投資へ」は本当に進んでいるのか

新NISA

2024年1月にスタートした新NISA制度が、日本人の資産形成のあり方に大きな変化をもたらしています。非課税で投資できる枠は年間最大360万円、生涯では1,800万円まで拡大され、これまで投資に踏み出せなかった層にも門戸が開かれました。

金融庁と日本証券業協会の調査によれば、2025年6月末時点でNISA口座数は約2,696万に達し、累計買付額は63兆円を突破しています。

しかし、日本の家計金融資産全体を見渡すと、預金・現金が占める割合は依然として半分を超えており、「貯蓄から投資へ」の流れが本格化したと言い切るには時期尚早かもしれません。新NISA時代の実態と、その先に見える課題を読み解きます。

<目次>

新NISAで何が変わった?制度拡充のポイントを整理

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新NISAにおける最大の変更点は、非課税で運用できる枠が大幅に広がったことです。

旧制度では「一般NISA」と「つみたてNISA」のどちらかを選ぶ必要があり、一般NISAなら年間120万円・非課税期間5年、つみたてNISAなら年間40万円・非課税期間20年という設計で、両者を同時に使うことはできませんでした。

2024年からの新制度ではこの2つが統合され、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」という形に再編されています。つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円で、合わせると年間360万円まで非課税での投資が可能になりました。

生涯を通じた非課税保有限度額は1,800万円に設定されており、このうち成長投資枠として使えるのは1,200万円までという上限はあるものの、旧制度と比較すれば格段に余裕のある設計といえるでしょう。

もう1つ見逃せないのが、非課税保有期間の無期限化です。旧制度では期限を常に意識しながら売却のタイミングを計る必要があり、長期投資を志向する人にとっては使いづらい面がありました。

新制度ではその制約が取り払われ、数十年単位での保有を前提とした資産形成がしやすくなっています。

口座開設期間も恒久化されたため、結婚や出産、住宅購入といったライフイベントに合わせて、自分にとって最適なタイミングで投資を始められるようになりました。

さらに、保有していた商品を売却した場合には翌年以降に非課税枠が復活する仕組みも導入されています。一度枠を使い切っても、状況に応じて再投資できる柔軟性が加わったことで、より実践的な資産運用が可能になったのです。

口座数2,600万超、買付額63兆円 数字で見る新NISAの浸透度

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新NISAがどれほど浸透しているのか、具体的な数字で確認してみましょう。

金融庁の調査によると、2025年6月末時点での全金融機関におけるNISA口座数は約2,696万口座に達しています。新制度が始まる直前の2023年12月末には約2,125万口座であったため、わずか1年半で約571万口座が新たに開設された計算です。

月平均にすると30万口座以上のペースで増え続けていることになり、この勢いは当初の想定を大きく上回っています。

買付額の伸びも顕著で、2025年6月末時点での累計買付額は約63.1兆円に達しました。2023年12月末時点では約35.3兆円でしたので、新制度開始後だけで約28兆円もの資金がNISA口座に流入したことになります。

2025年1月から6月までの半年間だけを切り取っても、成長投資枠で約7.4兆円、つみたて投資枠で約3.1兆円の買付が行われており、投資への関心の高まりが数字にはっきりと表れています。

政府は「資産所得倍増プラン」のもと、NISA口座数を5年間で約1,700万口座から3,400万口座へ倍増させる目標を掲げていました。現在のペースが続けば、その目標は期限を待たずに達成される見込みです。

制度設計の段階では「本当にここまで使われるのか」と懐疑的な声もありましたが、蓋を開けてみれば予想以上の反響だったといえるでしょう。

30〜50代の現役世代が牽引|なぜ今「投資を始める人」が増えているのか

投資でグラフをチェックする30代男性

新NISAの利用者層を年代別に見ると、30代から50代の現役世代で特に伸びが顕著です。

金融庁の調査では、50代の口座数が約525万と最も多く、続いて40代の約516万口座、30代の約472万口座となっています。働き盛りの世代がNISA利用の中心を担っている構図がはっきりと見て取れます。

では、なぜ今これほど多くの人が投資を始めるようになったのでしょうか。背景には複数の要因が重なっています。

まず挙げられるのが、将来の年金制度に対する漠然とした不安です。少子高齢化が進む中で、自分たちが受け取る年金がどれほどの水準になるのか見通しが立たないと感じている人は少なくありません。

公的制度だけに頼るのではなく、自分自身で老後の資金を準備しなければならないという意識が、特に現役世代の間で広がっています。

インフレへの危機感も大きな要因です。長らくデフレが続いた日本でも、2022年以降は物価上昇が顕著になりました。

銀行に預けているだけではお金の価値が目減りしていくという現実に直面し、「このままでは資産を守れない」と感じた人が投資へと動き出しています。

SNSやインターネットを通じて投資に関する情報が手軽に入手できるようになったことも、参入障壁を下げる役割を果たしました。かつては証券会社の窓口に出向いて口座を開設し、難解な書類を読み解く必要がありましたが、今ではスマートフォン1つで取引をスタートできます。

投資は一部の富裕層や金融リテラシーの高い人だけのものではなく、誰でも始められる身近な選択肢として認識されるようになったのです。

それでも預金は51% 「貯蓄から投資へ」はどこまで進んだか

ブタの貯金箱とお金

新NISAの普及が進む一方で、日本の家計金融資産全体を俯瞰すると、まだまだ道半ばであることも見えてきます。

日本銀行の統計によれば、家計が保有する金融資産の総額は約2,195兆円にのぼります。このうち預金・現金が占める割合は依然として約51%、金額にして約1,121兆円です。

株式や投資信託への資金流入が進んでいるとはいえ、家計資産の半分以上が銀行口座に眠っている状況に大きな変化はありません。

国際比較をすると、この偏りはより鮮明になります。米国では家計金融資産の約5割を株式や投資信託が占め、現預金は1割程度にすぎません。欧州でも株式・投信と現預金がそれぞれ3割超で、比較的バランスの取れた配分になっています。

もちろん、変化の兆しがないわけではありません。株式の残高は前年比19.3%増の317兆円、投資信託は21.1%増の153兆円と、いずれも過去最高を更新しています。

個人向け国債の2025年の販売額も計5兆2,803億円と前年から約3割増加し、リーマン・ショック前の2007年以来となる高水準を記録しました。金利上昇の恩恵を受けられる円建て保険を選ぶ人が増えているという声も金融機関からは聞こえてきます。

ただ、こうした動きはまだ一部にとどまっているのが現実です。資産形成の機会を活かせる人とそうでない人の間で、将来的な経済格差が拡大するリスクを秘めています。

まとめ

投資関連のグラフ

新NISAの登場によって、投資は一部の人だけのものではなくなりつつあります。口座数2,600万超、累計買付額63兆円という数字は、制度が多くの人に受け入れられていることの証明といえるでしょう。

とはいえ、日本の家計金融資産に占める預金の割合は依然として高く、「貯蓄から投資へ」の流れが本格化したと断言するには時期尚早かもしれません。新NISAはあくまで入り口であり、長期的な視点で資産形成に取り組み続けることが何より重要です。

制度を使い始めた人がそのまま投資を継続できるかどうか、そして今はまだ踏み出せていない層にどう届けていくか。新NISA時代の真価が問われるのは、むしろこれからなのかもしれません。

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