第3回ライティングコンテスト佳作

「マイルドヤンキー」という言葉を聞いた事があるだろうか。

聞いて名の通り、「マイルドなヤンキー」のことである。いや、だからなんやねんそれ。というツッコミが入りそうなので少し補足しておくと、「本当に非行に走っている訳ではないが、地元愛が特に強くて、地元の友達との仲間意識が強く、都会に憧れることも特にない、ずっと地元で暮らしている人のこと」である。

あ、半分わたしのことじゃん。と思った。

私の生まれ育った東京都八王子市は、そのマイルドヤンキーの聖地とも言われている。つまり、マイルドヤンキーは八王子のような都心からちょっと外れているが生活するのに不便はしない郊外に発生するのではないかと予想した。

八王子は、「ほぼ山梨でしょ?」「神奈川県八王子市だよね?」などと揶揄されて、とんでもない田舎町だと思われている(駅前は栄えてますよ)。そのくせ雪予報の時だけ「交通の便が良い雪の降りそうな地域」だと、記者が押しかけてきたりする。

天気予報も八王子だけ東京都から仲間外れにされている。このように東京だと認めてもらいにくい孤立感からか、いつの間にかわたしたちは、心の中に「八王子王国」を築いてしまっていたのだ。

「マイルドヤンキーの特徴」のような記事を読んでいたら、自分、そして周りの友達の行動に当てはまることが多すぎた。

よく、「学生時代、どの時が一番楽しかった?」という質問をされることがあるが、0.1秒で「中学!」と答えてしまう。そして私たちは、中学校を卒業して15年経った今でも、月1で集まるほどのマイルドヤンキーっぷりを見せている。

そして今でも成人式の思い出や、修学旅行の思い出について毎回毎回15年間同じネタで爆笑している。話せば話すほどマイルドヤンキーでちょっと赤面する。このように頻繁に地元で集まるのもマイルドヤンキーの特徴らしい。

入籍した友達夫婦は、二人とも勤務先は新宿の方なのに、今でも八王子に住んでいる。住むところは八王子が良いらしい。一組だけではなく、そういう友達夫婦がたくさんいるのだ。

思い返してみれば、高校生の時なんかは、良く制服のまま都会に遊びにでかけていたが、憧れの109を一周したら、すぐに「夜ごはんは八王子で食べよっか」と、中央線に乗っていた。八王子の持つ引力が強すぎることを、今改めて実感した。

ここまでのエピソードを読むと、完全に私も八王子に染まり切ったマイルドヤンキーであるが、冒頭で、わたしは「マイルドヤンキーって、半分わたしのことじゃん」と記した。

なぜならば、私は今、八王子を出て都会で一人暮らしをしているのだ。

私の実家は、駅から徒歩40分。もはや最寄り駅などない僻地に佇んでいる。今の一人暮らしの家は、新宿や渋谷で終電を逃しても、タクシー代で涙を流さずに済むような土地なのだ。

ここまで読んでもらった人は分かってくれると思うが、わたしは本当に八王子が大好きだ。あの雑多とした街、ドープな雰囲気、「我等友情不滅也卍」な仲間たち。

自分のファンの人と八王子でオフ会を開いたこともある。今でもほとんどの友達が八王子で暮らしていたり、はたまた都会に住んでいたのに結婚を機に八王子に戻ったりしている。なのに、みんなの流れに逆らうように、鮭の滝登りのように、私はなぜか都会で一人暮らしを始めた。

その理由として、わたしは芸能の仕事をしていることもあって、「一回一人で東京(八王子も東京です)に飛び出してみた方が良いのではないか!!!」とでも言っておこうか。なんとも単純明快で好奇心旺盛な理由である。

そして八王子を離れた生活はどうなのかというと、これはこれではちゃめちゃにエンジョイしてしまっている。仕事や撮影で夜遅くなってもすぐに帰れるし、高いビルの間を颯爽と歩いている自分に酔ったりする。今まで実家では母におんぶに抱っこだった生活だが、生活能力もかなりついたと思う。

だけど、こうやって都会でブイブイ言わすことができるのも、あったかい八王子の街と、大好きなマイホーミーがいつも両手を広げて待っててくれるからなのだ。「次はいつ帰ってくるの?」なんて言われた日にはちょっと涙が出ちゃったりもする。わたしの帰る場所は、マイルドヤンキーたちの中にあるのだ。

都会で暮らす私も、八王子で暮らす私も、どちらも好き。

だけど、わたしの心の中には、一生八王子のマイルドヤンキー魂が轟いている。

ライター:永瀬花帆

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