マサチューセッツ総合病院は3月21日、遺伝子を改変したブタの腎臓を末期腎不全を患う62歳の男性患者に移植し、成功させたことを報告しました。生きた患者への移植としては、世界初の事例です。
手術は3月16日に、4時間にわたって実施されました。手術後の経過は良好で、手術を受けたリチャード・スレイマン氏はすでに退院しています。リチャード・スレイマン氏は手術に合意したことについて、「移植を必要とする多くの人の希望になる」との考えを述べています。
この革新的な移植に用いられたブタの腎臓は、米バイオ企業イージェネシスによって提供されました。同社は、拒絶反応を引き起こす遺伝子を取り除き、特定のウイルスを不活性化させるなどで、移植時のリスクを最小限に抑えています。
同病院の河合達郎医師は「臓器移植が容易になり、将来的に人工透析の必要がなくなる可能性がある」と述べ、この手術の重要性を強調しています。ネット上では、「日本でも臨床試験を早期に進めてもらいたいです」「医療の名のもとに他種の動物の腎臓使ってまで生きようとするんだから人間って貪欲」「臓器提供させるって、かなり残酷だよな」などの意見が寄せられています。
男性患者は4月3日に退院 「最も幸せな瞬間の1つ」
マサチューセッツ総合病院は4月3日、遺伝子を改変したブタの腎臓を移植したリチャード・スレイマン氏が同日に退院したことを発表しました。リチャード・スレイマン氏は、退院して帰宅できたことは人生において「最も幸せな瞬間の1つ」とコメントしています。
ブタの臓器の移植手術は、過去に同様の試みが失敗に終わっていたにもかかわらず、移植分野での歴史的な転換点として科学界から高い評価を受けています。過去にはブタの心臓移植が行われており、その手術を受けた患者2人は数週間後に死亡しています。
また、リチャード・スレイマン氏は以前、死亡したドナーから腎臓を移植しましたが、その腎臓は2023年に機能を停止しました。その際、医師団は遺伝子改変ブタの腎臓移植を提案したとのことです。
この革新的な手術は、米食品医薬品局(FDA)の特別なプロトコルにより許可を得ており、マサチューセッツ総合病院による過去の臓器移植の成功と長年にわたる研究が基盤となっています。
「長年にわたり私の生活の質に影響をおよぼしてきた透析という負担から解放され、家族や友人、愛する人たちとまた時間を共有できることに興奮している」と、リチャード・スレイマン氏は語りました。