長崎原爆の日(8月9日)の平和祈念式典をめぐり、先進7ヶ国(G7)の米欧6ヶ国の駐日大使が式典に参列しないことが8日に明らかになりました。参列しない原因は、長崎市がパレスチナ自治区ガザとの戦闘を続けるイスラエルを招待しない方針を決めたこととされています。
鈴木史朗長崎市長は「政治的な理由ではない」と説明し、「平穏かつ厳粛な雰囲気のもとで円滑に式典を実施したい」と判断の背景を語りました。市は6月に、ウクライナ侵攻を踏まえロシアとベラルーシの招待を見送り、7月31日にはイスラエルも招待しない方針を発表していました。
市長はG7各国とEUの駐日大使らに口頭で説明を試みましたが、十分な理解は得られず、7月19日付の書簡で「共通の懸念」が表明されました。書簡は、イスラエルをロシアやベラルーシと同等に扱うことへの懸念を示し、イスラエルを招待するよう求めています。
中東情勢が緊迫する中、長崎市は式典の平穏な開催を最優先に判断を下しました。平和祈念の場が外交的緊張に晒される異例の事態となっており、関係国の理解を得るための努力が続けられています。
平和祈念式典、2年ぶりに屋外開催 100ヶ国の代表が参列
長崎市の平和公園では、平和を祈る式典が2年ぶりに屋外で開催されました。被爆者や遺族ら約3,100人が集い、鈴木史朗市長は「長崎平和宣言」で、国際情勢の緊迫化で揺らぐ核不使用の規範に警鐘を鳴らし、世界が連帯して核廃絶に取り組むよう訴えました。
式典には、岸田首相や国連の中満泉事務次長らが出席。核保有国を含む過去最多の約100ヶ国の代表が参列し、被爆地・長崎の思いに耳を傾けました。
一方、長崎市が平和祈念式典にイスラエルを招待しなかったことで、G7の米欧6ヶ国とEUの駐日大使が出席を見送りました。この決定をめぐり、被爆者からは複雑な思いが聞かれます。
長崎県被爆者手帳友の会副会長の三田村静子氏は、核保有国である米国の大使らの欠席に悲しみを隠せない様子です。市の判断に理解を示しつつも、大使らに被爆者の生の声を聞いてほしかったと話す方もいました。
東京大学の鈴木一人教授は、西側諸国の過剰反応を指摘しています。一方で、一橋大学の秋山信将教授は、原爆の日は平和を祈念する日であり、国際情勢による影響は残念だと述べました。
米国務省のマシュー・ミラー報道官は、ラーム・エマニュエル駐日大使の式典欠席について、イスラエル大使の招待を重要視していたと説明。原爆の日を重視する米国の立場に変化はないと強調しています。