
デンマークの国営郵便「ポストノルド」が2025年末をもって手紙配達サービスの完全終了を発表しました。これにより、400年にわたる手紙配達の歴史に終止符が打たれることになります。
背景には、急速に進むデジタル化の波があります。デンマークでは21世紀初頭から手紙の取扱量が劇的に減少し、かつて年間14億通あった郵便物は2024年にはわずか1億1,000万通まで落ち込みました。
この流れを受け、国内に設置されている1,500基の郵便ポストも6月から順次撤去されることになります。トマス・ダニエルセン運輸相は国民に理解を求めつつ、民間の自由市場が存在するため手紙のやり取り自体は引き続き可能だと説明しています。
ポストノルド側は今後、小包配達に経営資源を集中させる方針で、2024年から今年にかけて購入された郵便切手については2026年の特定期間内に払い戻しを行う予定です。
この決定は従業員にも大きな影響を及ぼします。現在の4,600人の従業員のうち約1,500人が職を失う見通しです。
ドイツでもドイツポストが8,000人規模の人員整理を発表し、「社会的に責任ある方法」と述べていますが、従業員代表はさらなる人員削減を懸念しています。
ネット上では、「日本も想定以上に早くこうなるんだろう」「デンマークでサービス終了は評価できる」「デジタルに頼らない方法も訓練はしておいたほうが良いと思う」などの意見が寄せられています。
郵便サービス廃止、高齢者に影響か 高齢者団体が警鐘鳴らす
デジタル化先進国デンマークの郵便サービス廃止は、社会の弱者にしわ寄せが及ぶ懸念が広がっています。国民の大多数がデジタルサービスに移行する中、約27万人が今なお紙の郵便に依存しており、その多くが高齢者です。
「定期的に手紙が配達されることをとても頼りにしている人が大勢いる」と高齢者団体の代表が警鐘を鳴らす状況です。昨年赤字に転落したポストノルドにとって、手紙配達継続は経営的に困難な選択でした。
背景には、2024年導入の新郵便法による市場開放があります。郵便への付加価値税導入で料金が高騰し、一通あたり620円もの費用が発生。ポストノルド幹部のキム・ペダーセン氏が指摘するように、料金上昇が需要をさらに減少させる悪循環に陥っていました。
国会では民営化政策そのものを問題視する声も上がり、特に地方在住者への影響が懸念されています。デンマークとスウェーデンの共同運営である同社の今後の展開に注目が集まっています。