
小林製薬の大株主である香港の投資ファンド「オアシス・マネジメント」が、紅麹サプリメント問題の責任を問い、当時の経営陣7名を相手取る株主代表訴訟を提起しました。4月3日、大阪地方裁判所に提出された訴状では、約135億円の損害賠償を会社に対して行うよう求めています。
訴訟の対象となったのは、創業家出身の小林一雅特別顧問(前会長)、小林章浩取締役(元社長)、山根聡前社長など、問題発生当時の役員7名です。
10%超の株式を保有するオアシス・マネジメントは、「アクティビスト(物言う株主)」として知られ、創業家色の強い経営体制からの脱却を求めてきました。
これまでファンド側は会社に対して当時の経営陣への損害賠償請求を要求していましたが、小林製薬側は訴訟提起を拒否。さらに、3月の定時株主総会では小林章浩氏ら4名の取締役選任案に対するファンド側の反対にもかかわらず、賛成多数で可決されています。
この訴えに対し小林製薬は、「現時点で訴状が届いていないので、コメントは差し控える」とのコメントを発表しています。紅麹問題による企業統治のあり方を問う法的闘争が始まりました。
小林製薬の創業家 訴訟の焦点となる経営陣
小林製薬の紅麹問題で株主代表訴訟の対象となった経営陣は、同社の長い歴史の中で重要な役割を担ってきた人物たちです。
小林一雅氏は1976年(昭和51年)に四代目社長に就任し、同社の成長期を牽引しました。株式上場や事業拡大など重要な経営判断を行っています。
長期にわたり経営トップを務めた後、会長に就任し、現在は特別顧問として創業家の求心力を保ち続けてきました。今回の訴訟では、紅麹問題当時の会長として最高責任者の立場にあった点が問われています。
小林章浩氏は2013年(平成25年)に六代目社長に就任。創業家の血を引く経営者として、国際展開や製品ラインナップの拡充に尽力しました。
紅麹事業については、2016年(平成28年)にグンゼ株式会社から事業譲渡を受けた際の意思決定者でした。現在は取締役として残っており、3月の定時株主総会でも再任されています。
山根聡氏は、2024年(令和6年)に七代目社長に就任した非創業家出身の経営者です。しかし紅麹問題の発覚を受け短期間で退任し、現在の豊田賀一社長(八代目社長)にバトンを渡しました。
これら創業家中心の経営体制は、香港の投資ファンド「オアシス・マネジメント」が問題視する「創業家依存」の具体例とされ、今回の訴訟の背景となっています。