放射性廃棄物が宇宙探査の新電源に 原子力機構が画期的な活用法を開発

日本原子力研究開発機構が、廃棄物として扱われてきたアメリシウムを宇宙探査機の電源として再利用する革新的な小型原子力電池の開発に乗り出しました。JAXAからの委託を受け、産業技術総合研究所との共同プロジェクトとして2029年初頭のプロトタイプ完成を目指しています。

この技術は、太陽光が届かない深宇宙や月の夜間など、従来の太陽光発電が機能しない環境で活動する探査機にとって画期的な電源となります。

米国では1960年代からプルトニウムを用いた原子力電池が「ボイジャー」などに搭載されていますが、日本では厳格な法規制のため代替手段が求められていました。

原子力機構NXR開発センターの高野公秀研究主席によると、アメリシウムはウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の原料粉末から分離可能で、資源確保の見通しは良好であるとのことです。

安全性にも配慮し、ロケット爆発時にも飛散しない特殊なペレット化・金属封入技術も既に確立されています。

実験段階では、アメリシウムの放射崩壊熱を半導体で電気に変換し、LEDを点灯させることに成功。高野公秀研究主席は「実用化できれば、探査機の各種機器の半永久的電源となる」と期待を寄せています。

日本原子力研究開発機構(JAEA)とは?

日本原子力研究開発機構(JAEA)は、日本の原子力に関する総合的な研究開発を担う国立研究開発機関です。「カーボンニュートラルな社会」と「低資源・高効率な社会」の実現を目指し、多岐にわたる研究開発活動を展開しています。

JAEAの研究領域は原子力エネルギーの安全利用に留まらず、高温ガス炉、高速炉、放射性廃棄物処理、医療用アイソトープ生産など多様な分野に及びます。特に最近では、アメリシウムなどの放射性廃棄物を宇宙探査機用の小型電池として有効活用する革新的研究も進めています。

全国各地に研究施設を有し、原子力科学研究所(茨城県)、J-PARCセンター、大洗原子力工学研究所、福島廃炉安全工学研究所など、目的別に特化した拠点を設置。また、幌延深地層研究センター、東濃地科学センターでは地層処分技術の研究を行っています。

国際協力にも積極的で、米国、フランス、イギリスなど世界各国の原子力関連機関と連携し、地球規模の課題解決に取り組んでいます。

2024年4月時点で約3,200人の職員を擁しており、そのうち約700人が研究職として最先端の原子力技術開発に従事しています。

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