
6月18日夜、日本製鉄が米国の大手鉄鋼メーカーであるUSスチールの完全買収を完了したことを正式に発表しました。この大型M&Aは約2兆円規模の投資により実現し、1年半という長期間にわたる複雑な交渉プロセスを経て成立に至りました。
買収に際して、日本製鉄は米国政府との間で国家安全保障に関する特別協定を結んでいます。この合意により、米政府は経営の重要な決定事項に対する拒否権を持つ特殊な株式を1株保有することになります。
また、企業運営においては最高経営責任者をはじめとする経営陣の主要ポストや、取締役会の過半数を米国籍者で構成することが義務付けられました。
さらに、企業名の変更や本社機能の海外移転といった重要な変更には制約が課せられます。日本製鉄側は、こうした条件下でも米国の安全保障要求に配慮しながら、USスチールの事業運営における柔軟性と収益性の両立が可能であるとの見解を示しています。
日本製鉄、USスチール買収完了を受けて記者会見を開く
日本製鉄の橋本英二会長は19日、約2兆円規模のUSスチール買収完了を受けて記者会見を開きました。
橋本英二会長は米国市場について「大きな魅力を持っていて今後も伸びていく。中国の安値輸出で世界中が困っているが、この影響も最小化できる極めて大きな有望市場だ」と巨額投資の合理性を強調しました。
この巨額買収が実現した決定的要因として、米国の政権交代が挙げられます。橋本英二会長は政治情勢の変化について「労働組合との関係を最優先するバイデン前政権に理不尽にも却下されたが、トランプ政権において正しい判断を得ることとなった」と発言し、前政権による拒否決定を覆した新政権への謝意を表明しました。
買収条件として特筆すべきは、米政府による経営監視体制の構築です。重要な事業判断に対して拒否権を行使できる特別株式「黄金株」の発行について、橋本英二会長は「当社が世界一に復帰するためには必要かつ有効な戦略で、同時にUSスチールが再生し発展していく唯一の方策」と述べ、日本製鉄側からの積極的な提案であったことを説明しました。
事業運営の独立性に関する質問に対しては、「コミットした設備投資の削減については、削減どころかコミットしたことをさらに追加で拡大していくつもりで全く支障がない」と回答しました。