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受刑者は普段どんなものを食べている?網走刑務所の管理栄養士に聞く刑務所の食事情

「刑務所ではどんな食事が受刑者に提供されているんだろう?」と気になったことはありませんか?
刑務所の食事=クサい飯というイメージを持たれがちかもしれませんが、実は献立は管理栄養士が考えており、栄養バランスを考慮した給食体制が整えられています。また、網走刑務所管理下の二見ヶ岡農場では農耕が行われている関係で、他の刑務所とは違った食事情の特徴を持っている側面もあります。
「受刑者の献立の内容は?」
「給食はどのように提供されている?」
「刑務所で働いている管理栄養士の仕事内容が知りたい」
そんな疑問に答えるべく、網走刑務所で働く現役の管理栄養士に、刑務所の食事情について詳しくお話を伺いました。
<目次>
受刑者の食事について

令和7年6月現在、網走刑務所では、炊事担当の受刑者15人前後で、約360人分の食事を日々賄っています。作業の習熟の度合いにより複雑な業務を任される面もあり、炊事担当の全員が調理を行うわけではなく、洗い物のみを担っているという受刑者もいます。管理栄養士がすべての献立を作成しています。
制約がある中での献立決め
網走刑務所の食事は、法務省の規定に基づき、全国共通の栄養基準で提供されており、カロリーや栄養バランスは個別に変更できません。献立は受刑者の健康や勤労意欲の維持を重視し、おおよそ3ヶ月前から検討を始め、提供前月の献立会議で決定されます。
また、刑務所の食事では出せないものがあるようです。たとえば串が刺さっているような料理は危険を伴うおそれがあるため、提供されないとのことです。他にも、一般的には調味料の定番であるみりんも、アルコールが含まれているため使用していないそうです。
人気メニュー・不人気メニュー
受刑者を対象としたアンケートからは、人気のあるメニューや、そうでないメニューが明らかになります。網走刑務所で特に好まれているのは甘いもので、二見ヶ岡農場で収穫された小豆を使ったあんこや、そのあんこを使用したかぼちゃの小倉煮が人気です。あんこはパンと合わせて食べるのが好評で、月に1度は提供するようにしています。
二見ヶ岡農場ではかぼちゃも穫れますが、皮が硬く切る際に怪我をするおそれがあるため、二見ヶ岡農場のかぼちゃは網走刑務所では使用していないそうです。
甘いもの以外だと、ボリューム感のあるメニューも人気です。網走刑務所では、二見ヶ岡農場で穫れたジャガイモを、カレーやシチュー、肉じゃが、炒め物などに入れて使用しています。
一方で、あまり好まれないのは、ボリューム感に欠けるメニューです。炒めることでかさが減ったおかずや、野菜中心の料理は不人気な傾向があります。
食糧高騰の影響
世間では食料品の価格高騰が問題となるなか、刑務所も例外ではありません。北海道といえば海産物が有名ですが、高価なため刑務所の給食では扱うことが難しいようです。かつては焼き魚などのメニューを提供していましたが、現在では予算の都合により困難となっています。
また、二見ヶ岡農場で育てられた「監獄和牛」は矯正展などで販売されることもあるようですが、受刑者の食事に使用されることはありません。
受刑者の調理作業の負担を軽減するため、レトルト食品などの既製品が使われることもありますが、これらも価格が上がっているため、使用が難しくなってきています。
刑務所の管理栄養士の仕事
管理栄養士の主な業務は、受刑者に提供する食事の献立作成ですが、それに伴うさまざまな業務も担っています。ここでは、刑務所の管理栄養士が普段どんな風に仕事をしているのか、具体的な仕事内容や、日常の業務の様子について詳しくご紹介します。
1日のスケジュール
1日の勤務で最初に行うのが食料の入荷立会い作業です。ここでは、納品された食料の検品を行います。午後には週に1回、10〜15分程度、受刑者に対する衛生指導の時間が設けられています。その他の時間帯は献立や資料の作成にあてていることが多く、基本的にはデスクワークが中心です。
また、昼食と夕食については、実際に提供する食事を試食し、出来栄えを確認する「検食」を実施しています。
検食が持つ役割
検食において、味付けや出来栄えに改善点が見つかった場合は、調理担当者にフィードバックを行うことになりますが、
これまでの経験上、検食の結果として「提供不可」と判断したことは一度もないそうです。たとえば異物の混入や食材の落下といったアクシデントは、調理段階である炊場において発見されるため、検食では、主に味付け、盛り付けの状態や賞味期限を確認しています。
刑務所の管理栄養士になった理由
刑務所で管理栄養士として働くことになった経緯を尋ねたところ、地元・網走にUターンし、家事と両立できる仕事を探していた際に出会ったのが、網走刑務所の管理栄養士の求人だったそうです。
刑務所で働き始めた当初の印象
実際に刑務所で働き始めてみて、これまでとの環境の違いとして特に感じたのは「制約の多さ」だったそう。炊場で調理にあたる受刑者のなかには、まったくの未経験者も含まれていて、全員が調理経験があるわけではありません。そのため、技術的に難しい料理、調理に時間がかかるもの、盛り付けに手間がかかるものなどは極力避けるようにしながら、献立を考える必要があります。
調理に手間のかからない献立の日を設けて、清掃作業を重点的に行う時間の確保も必要とのことでした。
また、土日・祝日は受刑者にもできるだけ休養を取らせる方針のため、調理の負担を軽減する目的で、レトルト食品などの既製品も使用するそうです。管理栄養士という立場から、「このような食品を出してもよいのだろうか」と最初は戸惑いもあったそうですが、意外にも受刑者たちはこうした既製品の食事を楽しみにしているのだとか。ただし、前述のとおり既製品も価格の高騰が進んでいるため、最近では手作りで比較的手間のかからない献立を工夫して提供することが多くなっているようです。
刑務所の管理栄養士のやりがい
さまざまな制約がある中での献立作成は大変な面もありますが、その分達成感や充実感が感じられるのだそう。また、受刑者を対象としたアンケートで「美味しかった」といった感想が記されていると、純粋にうれしさを感じるといいます。
週に1度実施される衛生指導の時間には、一方的に話をすることとなるものの、話を聞く表情から反応はよく伝わってくるとのこと。「また同じ話か」といった様子でやや退屈そうな人もいる一方で、熱心に耳を傾けてくれる人も多く、短い時間とはいえ、管理栄養士としての思いが届いている実感があるといいます。そうした瞬間に、仕事へのやりがいを強く感じるのだそうです。

<TEXT/小嶋麻莉恵>

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