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結婚式場から文化の発信拠点へ…リニューアルした八芳園が描く日本の未来
- 2025/10/26
- コラム・インタビュー, マネー・ライフ
- リニューアル, 東京都港区
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東京の三大結婚式場として知られる「雅叙園東京」「椿山荘東京」そして「八芳園」。そのなかのひとつ八芳園は、7か月ものリブランディングに伴う休館および改修を経て、2025年10月1日にグランドオープンしました。そこには結婚式場にとどまらない、新たな文化や価値を創造するライフイベントプロデュース企業へのアップデートがありました。
<目次>
日本の美意識を凝縮したメインロビーは圧巻
東京港区白金台という都内随一の一等地に、1万2,000坪もの広大な敷地を持つ八芳園。江戸時代からの約400年の歴史を持ち、大正時代に実業家が築いた日本庭園を中核として、1943年に創業しました。

今回のリニューアルでは、コンセプトに「日本の、美意識の凝縮」、テーマには「継承と創造」を掲げています。既存の建物をできるだけ壊さず、より良い形で継承していくことで日本庭園との親和性をより深めることを目指しました。八芳園の日本庭園を象徴する樹齢400年の1本の赤松を構想の中心に据え、自然を整えるという信念のもと、日本の美意識を凝縮した内装に仕上げています。

来客を迎えるメインロビーは、日本庭園と向き合うように高さ約4メートルにも及ぶ圧巻の組子アートが迎えてくれます。これは水墨画家の小林東雲氏と福岡県大川市の組子職人・木下正人氏のコラボレーション作品。八芳園に息づく景色を描いた小林氏の水墨画をもとに、木下氏が緻密な組子細工で表現しており、日本の伝統美を堪能できる特別な時間が過ごせます。

また、八芳園の庭園を象徴する松をモチーフに、福岡県大川市の創作家具職人・西田政義氏が手がけたシンボルツリーも設置されています。過去から未来へと伝統を受け継ぎながら日本文化の精神を映し出し、人々の心に深く刻まれることを目指している作品です。
八芳園らしさを五感で感じられる新しい施設も

エントランスにあるのは、上層階へ続く新設のエスカレーター。日本庭園と建物の境界線を限りなくなくすことで、より一体化した空間を演出しています。

エスカレーターを上ると、目の前に広がる日本庭園の色合いや香りを五感で感じ、季節ごとに移ろう風や空気までも体験できる空間となっています。

このほかメインロビーから続く3階には、新しいレストラン「ALL DAY DINING FUDO」がオープンしました。同レストランの食材では、新鮮な果物や野菜、限られた時期にしか取れない魚介類など、八芳園と連携協定を結ぶ自治体の生産者から直送される厳選素材を使用。さらには供給方法や業態、場所、調理技術を駆使し、新しい価値で提供することを可能にしています。
また婚礼事業においてはブライダルだけにとどまらず、ライフイベントプロデュース事業へとアップデート。ブライダルでは各プロフェッショナルが集結し、2人のためだけの専門チームを形成してもっと特別な1日を演出するプランを創出します。
そして新たに新設した「インスピレーションサロン」では、VRを使って披露宴をイメージできるショーケース、花材やコーディネートを実際に見て触れて選ぶことができる装花アトリエ、試食しながら披露宴メニューを打ち合わせることができるシェフズキッチンなど、五感を通じて結婚式準備ができる環境が整えられています。
婚礼依存型の事業モデルからの脱却
結婚式場のイメージが強い八芳園ですが、実は運営する株式会社八芳園は、婚礼事業だけでなく、レストラン事業、フード開発事業、エリアプロデュース事業と幅広く事業を展開しています。
今回のリニューアルでは、婚姻数が減少する時代においても、結婚式の価値をさらに深め、多様なライフイベントに寄り添う婚礼事業の強化を図っています。同時に、地域に根差した日本文化の継承と創造を担う「エリアプロデュース事業」の中心地としての役割も持っているそうです。
実際に、株式会社八芳園の事業構成にも変化がみられています。2013年9月期の売上高94億円のうち婚礼事業が82%、その他事業が18%だったのに対し、2024年9月期は売上高95億円のうち婚礼事業が66%、その他事業が34%にまで拡大。確実に婚礼依存型の事業モデルからの脱却が進んでおり、2030年9月期にはこれらの事業が非婚礼事業の売上高を6割へ引き上げることを目指しています。
日本の人口や婚姻数が減少している昨今、結婚式の価値を実感してもらうことで、婚礼やその他事業での収益化アップを目指しています。

今後さらに力を入れていくエリアプロデュース事業としては、日本文化や地域の伝統を世界に向けて発信していく事業を展開していくとのこと。実際に2025年9月8日にはJR東日本と「共創パートナーシップ協定」を結びました。白金・高輪エリアにおける地域食材や郷土料理、伝統工芸などの有形資産から、職人技術や祭りなどの無形資産まで日本の文化資産発信のために両社がタッグを組んだ形です。
白金台がエリアプロデュース事業の中核拠点に

八芳園は、さまざまなコンテンツやイベントを展開する一方で、2025年9月12日に高輪ゲートウェイ駅に開業した「ニュウマン高輪」に、「割烹 BUTAI」と「八芳園洋菓子店」を出店しました。
また、古くから交流のある地域とは包括的連携協定を結びながら、地域とともにプロデュースを進めています。今回のリニューアルでメインロビーに携わった福岡県大川市では、移動型組み立て式茶室「無常庵 MUJYOAN」や、移動型組み立て式やぐら「KAGURA」を開発。さらに、木工・組子体験などを通じて、訪日外国人に向けた日本文化体験の創出にも取り組んでいます。

現在、こうしたエリアプロデュースの一環として、山形県の長井市や栃木県の那須塩原市に営業所を構え、さまざまなプロジェクトを展開しています。今後は、新たに4拠点ほどを増設する計画も進行中です。
さらに、東京以外の地域にもフードプロデュースチームを派遣し、八芳園が得意とする「食」をテーマに、地域の素材を生かしたメニュー開発や、店舗運営支援といった取り組みも強化していくとのことです。
今回のリニューアルを通じて、八芳園グループがこれまで培ってきたノウハウと強みが、全国各地の課題解決や日本文化の継承・発展に貢献していくという力強い展望が感じられました。結婚式企業にとどまらず、総合プロデュース企業として、創業100周年を迎える2043年を見据えた八芳園グループのさらなる飛躍に、今後も注目が集まります。


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