大麻ダメ!絶対!薬物事犯の検挙数が年間5000人超!!

「大麻ダメ!絶対!薬物事犯の検挙数が年間5000人超!!」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

日本における大麻規制の理由や大麻のデメリットについて解説します。

日本では大麻を所持することを禁じられており、厳しい取り締まりが行われています。

みなさんは大麻など私には関係ない。そう思うかもしれません。
先日、日大アメフト部大麻事件に関する報道がありました。
知っていますか?
大麻に関する薬物事犯検挙者は30歳未満が65%です。
我々は日本で大麻が規制されていることによって正しい情報が少なすぎるかもしれません。

そんな大麻について、海外では安全だと認められたから合法化されているのでは?
薬物としても使用されているから害などないのではないか?
少ない量なら安全でしょう?

という様な疑問を抱いている方も多くいらっしゃいます。
インターネットで大麻の有害性を軽視した意見の記載が散見され、大麻の有害性は大したことがないという情報を信じている人も多いのですが、大麻を使用することには大きなデメリットが存在し、国内に大麻が蔓延すると国益を大きく損なうほどのインパクトが予想されます。

今回は有害性が少ないと一部でいわれている大麻がなぜ、禁止薬物として厳しく取り締られているのかについて解説していきます。

そもそも大麻にはどの様な作用がある?

大麻の中にはΔ-9テトラヒドロカンナビノールという成分が含まれており、この成分が快楽、幻覚、鎮静、抗不安、鎮痛といった作用を発揮します。
快楽の作用があるために、娯楽用として、鎮静、抗不安、鎮痛の作用があるために、難治性てんかんを始め、医療用として使うことができるという主張があります。
しかし大麻はデメリットが大きすぎるのです。

大麻の有害性について表1にまとめました。

知覚の変化時間や空間の間隔がゆがむ
学習能力の低下短期記憶が妨げられる
運動失調瞬時の反応が遅れる
精神障害統合失調症やうつ病を発症しやすくなる
IQ(知能指数)の低下短期・長期記憶や情報処理速度が低下する
薬物依存大麻への欲求が抑えられなくなる
表1.大麻の有害性1)

大麻の医学的なデメリット

大麻の危険性としてまず挙げられるのが精神依存性です。
2007年にLancetに発表された論文2)で、大麻には覚醒剤やヘロインといった強力な薬剤には及ばないものの、精神依存性が確かに存在することが明らかになっています。
初めは少ない量でも徐々に量が増えていき、最終的には大麻によって得られる快楽のために金銭をつぎ込んだり、その金銭を得るために犯罪を行うことになりかねないのです。

また大麻にはコカインやヘロイン、メタンフェタミン(覚醒剤)にない作用である幻覚作用があります。
色彩が違って見えたり音の聞こえ方が変わったり、視覚の変化が起こったりとさまざまな変化があります。
音がよく聞こえる様な気分になったり、非日常的な感覚を得られたりすることからこれが大麻の娯楽の一部になっているのです。
幻覚がある中で人とコミュニケーションをとることでトラブルや犯罪につながりますし、車の運転や機械の操作の時に幻覚があると大きな事故につながります。

TVなどで、車が事故を起こす。支離滅裂な言動があり、検査をすると違法薬物が検出されるといった報道をみなさんも見たことがあるかもしれません。
非常に怖いものです。

これらの理由から、厚生労働省の地方支分部局である地方厚生局(地方厚生支局を含む)に設置されている麻薬取締部の麻薬取締官(俗名:麻薬Gメン、マトリ)は、麻薬や覚醒剤、大麻、向精神薬、あへん、危険ドラッグを含む指定薬物といった薬物の乱用を防止するため、特別司法警察員として、非合法に取引されている薬物の取締りや、医療用の向精神薬等の不正流通防止のための指導・監督などを行っていますが、大麻事犯検挙人員は増加しています。
また大麻事犯検挙人員のうち、30歳未満が65.0%と高いことも憂うべき事実です。

ここでは薬物事犯検挙人員を表2にまとめました4)

大麻覚醒剤麻薬・向精神薬あへん全薬物事犯
2011年1759120833461214200
2015年216711200516413887
2018年376210030528214322
2019年45708730558213860
2020年527386546401514582
表2.薬物事犯検挙人員の推移

タバコより害が少ないということを平気でいう人もいますが、そもそもタバコの害と大麻の害は全く別のベクトルの異なるものであり、タバコと精神に変調をきたす大麻の害を単純に強弱つけて論じること自体がナンセンスです。
そもそも医師でタバコを薦める人はほとんどいないので、大麻も禁止されている状況から解禁したほうがいいという医師も非常に少数であると思われます。
医療用大麻についても、鎮静、鎮痛、抗不安の作用を持つ優れた薬剤が多数ある中、あえて大麻を医療に用いることのメリットが全くなく大麻を推奨する医師も全体で見ればかなり少ないのが現状です。

なぜ海外は合法化しているのに日本はダメなのか

これは合法化するメリットが日本にはないことが最も大きいと考えられます。
そもそも諸外国で大麻が合法化したのは、大麻が安全で蔓延しても問題ない成分であることがわかったから、というわけではありません。
合法化された国ではもともと反社会勢力による大麻の売買が問題になっており、大麻の使用率がそれなりに高い地域が存在し、かつ大麻の売買によりそれらの反社会勢力に金銭が流れていたという背景があったのです。
そのため、大麻を合法化して国が管理することで大麻関連の金が反社会勢力に流れない様にしたのです。
大麻蔓延のダメージより、反社会性力の資金を断つというメリットが上回ることから合法化されているのです。
そのため、大麻の合法性について理解を深めるため、G7における大麻の規制状況について表3にまとめました。

国名   医療目的での大麻使用嗜好目的での大麻使用
日本違法違法
アメリカ違法(米国としては違法,36州および4つの地域では合法)違法(米国としては違法,15州および3つの地域では合法)
イギリス合法違法
ドイツ合法違法
フランス合法違法
イタリア合法違法
カナダ合法一定の条件下でのみ可能
表3.G7における大麻規制状況(2020年11月現在)4,5)

日本では古くから大麻については規制がなされており、使用率も高くないため、ここで合法化すると大麻使用率が急上昇し、大麻蔓延のデメリットが非常に大きく、国全体に大きな問題を起こす可能性が極めて高くなります。
海外で合法化されたからといって、安全と思って大麻を吸うのは非常に愚かな行為であると言わざるを得ません。

まとめ

海外で合法化されたことで、大麻の有害性を過小評価するような記載がインターネットで散見されます。
それぞれに国にはそれぞれの国における事情があるため、大麻が海外で吸われているといっても、有害でないというふうに考えるのは間違っています。

「大麻はそんなに有害ではない」という言葉を鵜呑みにすると、人生を変える様な大きな害を被ることになります。
今だけでの問題ではなく、今後の人生に影響が出ることがわかっています。
また、そればかりか他人へ影響を及ぼす可能性があります。
インターネットの記事や使用者の言葉に踊らされずしっかりと自分で情報を見極めることが薬物関連の問題に限らず非常に大切なのです。

参考文献:
1.厚生労働省 今、大麻が危ない
2. David Nutt,Leslie A King,William Saulsbury,et al. Development of a rational scale to assess the harm of drugs of potential misuse. Lancet. 2007 Mar 24;369(9566):1047-53. doi: 10.1016/S0140-6736(07)60464-4
3. Madeline H. Meier madeline, Avshalom Caspi, et.al. Persistent cannabis users show neuropsychological decline from childhood to midlife. PSYCHOLOGICAL AND COGNITIVE SCIENCES 2012;109:E2657-E2664.
4. 厚生労働省医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課. 第6回大麻等の薬物対策のあり方検討会
5. EMCDDA(European Monitoring Centre for Drugs and Drug Addiction) Medical use of cannabis and cannabinoids
6.平成3年 警察白書
7. 正高佑志,三木直子,赤星栄志. 難治性てんかんにおけるカンナビノイド(大麻抽出成分)由来医薬品の治験に向けた課題把握および今後の方策に向けた研究

秋谷進医師

投稿者プロフィール

小児科医・児童精神科医・救命救急士
たちばな台クリニック小児科勤務

1992年、桐蔭学園高等学校卒業。1999年、金沢医科大学卒。
金沢医科大学研修医、国立小児病院小児神経科、獨協医科大学越谷病院小児科、児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科、東京西徳洲会病院小児医療センターを経て現職。
専門は小児神経学、児童精神科学。

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