
イランの最高指導者を選ぶ「専門家会議」(定数88人)は3月8日、米国とイスラエルの軍事攻撃で死亡したアリ・ハメネイ師の後継として、次男のモジタバ・ハメネイ師(56)を新たな第3代最高指導者に選出しました。イランの国営メディアが9日に報じたもので、ハメネイ師が1989年に就任して以来、約37年ぶりの指導者交代です。1979年のイスラム革命以降で初めてとなる「世襲」的な継承として、国内外に大きな衝撃を与えました。
モジタバ師は1969年9月8日、北東部のマシャド生まれ。革命後にテヘランへ移住し、父が最高指導者に就任した1989年以降に神学の学習を始め、1987年にイラン革命防衛隊(IRGC)に入隊してイラン・イラク戦争(1980〜88年)に従軍しています。この兵役の経験が、後の革命防衛隊幹部との強固なネットワーク形成に大きく寄与したとされます。
1999年にはシーア派の聖地コムへ移り神学をさらに深め、その後テヘランに戻って父の最高指導者事務所で側近を務め、長年にわたって実権を握ってきました。公職には一度も就かず、公の場に姿を見せることも極めて少ない、「陰の実力者」として知られています。
革命防衛隊や民兵組織「バシジ」との強固な結びつきも際立ちます。米国は2019年、地域の不安定化や国内の反体制派弾圧への関与を理由に制裁対象に指定。強硬保守派の代表的な人物として国際社会に認識されてきました。
今回の交代劇の発端は、米国とイスラエルが2月28日に実施した軍事作戦でハメネイ師が殺害されたことです。専門家会議は、選出機関の建物が攻撃を受けるなかでも作業を中断せず続けました。革命防衛隊は選出直後に「新たな夜明けで、革命の新段階が始まる」と声明を出し、新最高指導者への全面支持を表明しています。
トランプ米大統領は候補浮上の段階から強く反発し、選出後も強い不快感を示しました。一方、モジタバ師自身も別の攻撃で負傷したと報じられており、妻や母親ら家族も今回の攻撃で犠牲になったとされています。
世襲・資格への疑問 社会の亀裂と強硬路線の行方
今回の選出には、最高指導者の地位が事実上「世襲」となったことへの批判が国内外からあがっています。2025年のイスラエルとの戦争後に父が指名した後継候補3名に次男は含まれていませんでしたが、革命防衛隊がモジタバ師を強く推し、選出が実現したとみられます。
また、イランの憲法が最高指導者の要件とする高位法学者(アヤトラ)の資格についても、宗教的に中位の聖職者とみられており、要件を満たすかは不明です。一方でイランメディアはすでにモジタバ師をアヤトラの呼称で報じており、宗教的権威を高めたい思惑がうかがえます。
国内では体制支持派が選出を歓迎する一方、反発の声もあがっており、社会の亀裂が改めて浮き彫りになりました。革命防衛隊と保守強硬派が結束する限り、強硬路線の継続は必至で、トランプ政権の要求に応じる可能性は低いとみられます。戦時下という異例の状況で、モジタバ師の指導力と中東情勢の行方が注視されます。












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