オゾン層が数十年後に完全回復の見通し 南極では2066年、北極では2045年ごろ

1月9日に発表された国連の報告書によると、オゾン層が今後数十年で完全に回復する見通しが明らかになったとのことです。これまでも国連は4年ごとに発表される報告書で、オゾン層が回復傾向にあることを明かしていましたが、新しい予想では現在の政策が維持されれば、南極では2066年ごろ、北極では2045年ごろ、そのほかの地域では2040年までにオゾン層の回復が見込まれています。

オゾン層の破壊はこれまで、代表的な環境問題として度々取り上げられてきました。オゾン層の穴「オゾンホール」が1985年に確認され、1980年代から1990年代半ばにかけて急激に拡大。

オゾン層破壊の原因は「フロン」という物資であり、これはエアコンや冷蔵庫の冷媒、スプレーの噴射剤などが大きく影響しています。フロンによる規制は経済に大きな影響を与えることから、すぐに大規模な政策が取られることはありませんでした。

しかし最新の報告書によると、オゾン層破壊の原因物質であるフロンなどの全廃に向けた「モントリオール議定書」が発効した1989年以降、破壊物質は99%削減されたとのことです。

世界気象機関のターラス事務局長「気候行動の前例になる」

世界気象機関(WMO)のターラス事務局長は、オゾン層の回復について「オゾン層への行動は気候行動の前例になる」とコメントしました。また、「オゾン層の破壊物質の排除に成功した例から、化学燃料から脱却し、温室効果ガスの削減や気温上昇を抑えるために、私たちに何ができるのか、何をしなければいけないのかを知ることができる」と、強調しています。

オゾン層を破壊するガスは温室効果ガスの一種でもあり、英科学誌ネイチャーに掲載された2021年の研究によると、禁止されていなければ気温上昇が産業革命前比でさらに一度、上乗せされていた可能性があるとされます。「成層圏に太陽光を反射する物質を散布して気温上昇を抑える」という方法も検討されましたが、副作用のリスクがあるとして警告しています。

オゾン層回復の見通しが立ったことに対し、ネット上では「これは人類が初めて乗り越えた環境破壊問題だ」「地球温暖化対策にも役に立つと期待したい」「主な原因が完全に取り除かれているわけではないので、これからも注意が必要だ」などの意見があがっています。今後のオゾン層回復の動向に注目が集まります。

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