
物価高騰に賃金上昇が追いつかない中、個人の自己破産申立件数が2024年に約7万6000件に達し、12年ぶりの高い水準となりました。さらに2025年上半期もこの傾向が続き、前年を上回るペースで増加しています。消費者金融などの家計負債も増加傾向にあり、専門家は安易な借り入れの拡大に警鐘を鳴らしています。
司法統計によると、2024年の個人自己破産申立件数は約7万6000件で、2012年(約8万3000件)以来の水準に達しました。多重債務者が社会問題化した2003年には約24万件でピークに達していましたが、近年は再び増加に転じています。
背景には、物価上昇に賃金の伸びが追いつかない状況があります。名目賃金は上がっても物価上昇により生活に余裕がなくなり、返済負担が重くなります。実質賃金は1990年代からほぼ横ばいかマイナスで推移しており、多くの国民が「収入はそれほど増えていないのに日々の生活費だけがどんどん上がっていく」という厳しい現実に直面しています。
消費者金融の貸付残高も増加を続けています。2025年2月の消費者向け無担保貸付残高は前年同月比5%増の4兆4526億円に達し、2022年7月以降32カ月連続で前年同月を上回っています。スマートフォンでの手続きの容易化により、特に若年層の間で借金に対する抵抗感が薄れているとの見解もあります。
第一生命経済研究所の星野卓也主席エコノミストは、「個人の自己破産は100万円~300万円未満の少額負債が原因の例も多い。消費者金融などの残高増加が一定の影響を及ぼしている可能性がある」と指摘しています。
日本弁護士連合会の調査によると、自己破産理由で最も多いのは「生活苦・低所得」で約60%、次いで「病気・医療費」が約23%、「失業・転職」が約18%となっています。30代から50代の働き盛り層が約70%を占め、高齢層(60代以降)の申立も増加しています。
家計破綻リスクが高まる中での対策
物価高騰と賃金低迷の状況が続く中、家計破綻リスクは今後も高まる可能性があります。平均貯蓄残高は前年より約7%減少し、貯金が減ると返済困難者がさらに追い込まれやすくなります。遅延損害金が発生すると経済状況が悪化しやすいため、非営利のクレジットカウンセラーや弁護士への早期相談が推奨されます。自己破産申立には30万円以上の費用がかかる一方、支払不能状態であれば少額債務でも申立可能です。少額の場合は任意整理など他の債務整理も検討するとよいでしょう。


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