
東京海上日動火災保険は、要介護認定を受けた親族を持つ社員に対し、介護サービス費用として20万円を支給する「介護態勢構築応援金」制度を2025年10月から導入しました。企業が介護費用を一時金として直接支給する取り組みは珍しく、仕事と介護の両立に悩む社員の離職を防ぐことを目的としています。
背景には、管理職を含む中高年層が仕事と介護の両立に直面している現状があります。経済産業省の試算によれば、2030年時点で介護をしながら仕事をする人は約318万人に上り、経済損失は約9兆円になると予測されています。両立が困難になれば生産性の低下や離職につながるため、企業による支援策の強化が急務となっています。
こうした状況を受けて、厚生労働省は育児・介護休業法を改正し、2025年4月から企業に対して介護と仕事の両立を支援するための研修制度や相談体制の整備を義務づけました。介護に悩む社員の離職を減らす取り組みが、今後さらに広がる可能性があります。
東京海上日動は「要介護1」以上と認定された親族がいる社員を対象に、10月から申請を受け付け、11月の給与にあわせて支給します。支給額は要介護1にかかる介護サービスの自己負担額を考慮して設定されました。同社が2025年1月に実施した調査では、社員の約1割がすでに介護に直面していることが明らかになっています。
しかし介護が必要だと感じない人も多く、認定を取得したり介護サービスを利用したりしない人が多いのが実情です。同社は早期の介護支援を促すため、外部企業向けに一時金にかかる費用を補償する保険の開発も検討しています。
金融業界で広がる介護支援制度
金融機関では介護と仕事の両立に向けた新制度が相次いで導入されています。山口フィナンシャルグループは2025年7月から介護の休業制度を最長3年間に拡充しました。法定制度の通算93日間は雇用保険から賃金の約3分の2が支給され、それ以降は無給となりますが、介護を終えた後に復帰できる環境を整えています。
第一生命ホールディングスは、介護休業を取得した社員の業務を代替した同僚に手当を支給する「産育介休サポート手当」を2025年10月から導入しました。例えば部長級が介護休業を取得した場合、最大95万円を支給し、業務を代替した社員で分配します。明治安田生命保険は、介護支援などが必要な社員が週休3日制を選べるようにしています。
毎年約10万人が介護を理由に離職している現状において、企業による両立支援策の充実は、人材の流出を防ぐだけでなく、社員が安心して働き続けられる環境づくりにつながると期待されています。


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