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「軽度知的障害」とともに生きる。当事者としてYouTubeで発信を続けるえりかんさんが伝えたいこと

「軽度知的障害」という言葉を聞いたことはありますか?軽度知的障害とは、一般的にIQが50〜70程度のことを指し、学習や理解のスピードが平均より遅いことを指します。多くの場合、脳の発達の特性によるもので、生まれ持った影響が大きいと考えられています。適切な教育や支援で、自立や社会参加は十分可能なのが軽度知的障害の特徴です。
本記事のインタビューに応じてくれた「えりかん」さんは、軽度知的障害を抱えながらも、自身の経験をYouTubeで発信し、オフ会などを通じて仲間とのつながりを広げています。発信に込めた思いや活動の背景を語ってもらいました。
<目次>
軽度知的障害の当事者として

ーはじめに、えりかんさんご自身のこれまでの経験や活動について、自己紹介をお願いします。
私は2001年生まれの24歳です。IQ70の軽度知的障害で、noteやTikTok、YouTubeなどのSNSを活用して発信し、当事者の方に届ける活動をしています。
その傍ら、障害者雇用でグローバルチェーン店のカフェでも働いています。主な仕事内容は、バックヤードでドリンクの仕込みです。今年の3月に勤務を始めてから半年が経過しました。最初はやりがいを感じられない時期もありましたが、徐々に仕事の幅を広げてもらい、話せる人も増えてきたので安心しています。
高校卒業後は、すぐに進路が決まらず、まずB型作業所で働き始めました。その後、特例子会社でハーブの栽培を経験し、家の近くのカフェでアルバイトも経験しました。実家を出てリゾートバイトとしてお皿洗いを担当したこともあります。
一人暮らしを始めるチャンスもあり、横浜で就労移行支援のアルバイトに挑戦しましたが、スキル不足が原因で退職することに。その後はコスメストアでのアルバイトをしていたのですが、こちらも社内ニート状態で辞職…。
他にも、IT企業のカフェスペースでのウォーターサーバーの管理やコーヒーの補充、倉庫で障害者雇用として簡単な事務作業や箱詰めの仕事など、さまざまな仕事を経験しました。たくさんの仕事の経験があったからこそ、今の自分がいます。
一番大変だったのは、とにかく業務が忙しかったことですね。説明も口頭で一気に伝えられることが多く、ゆっくり話してくださっても、ハンデがあるのでメモを取るのが難しいんです。なので、次の日の朝礼で必ずわからなくなったことを相談するようにしていました。ため込むのはよくないので、相談したり本音を伝えたりすることを今でも大切にしています。
ー学生時代の頃のお話をお聞かせください。
勉強についていけなくなったのは、小学1年生のころからです。特に中学生になると、周囲との学力差をより強く意識するようになりました。「みんな、これで本当に理解できているの?」と不思議に思うことも多かったです。当時は塾にも通い、「みんなと同じくらい頑張れば、きっと自分もできるようになる」と信じていましたが、なかなか理解が追いつきませんでした。
また、軽度知的障害や発達障害の特性により、うまくコミュニケーションが取れず、「えりかって変な子、おかしい子」と言われ、いじめられることもありました。
いじめられた経験もありましたが、楽しい思い出もたくさんあります。たとえば、中学校のときの楽しい思い出のひとつは、パソコン部に所属していて、休日には自転車で隣町のショッピングモールまで出かけたことです。また、家に友達を呼んで一緒に過ごした時間も、今でも心に残る楽しい思い出です。
YouTubeで軽度知的障害について発信

ーYouTubeやオフ会・イベントを始めたきっかけや、印象に残っている出来事があれば教えてください。
高校2年生の頃にYouTube活動を始めました。主にエンタメ系の動画を投稿し、当時は障害などのハンデについては発信しておらず、むしろハンデについて発信するという発想自体ありませんでした。
その後、「もしかして、軽度知的障害や発達障害を持っている人は実はたくさんいるのではないか?」と疑問に思うようになり、少しずつ自分のハンデについても発信していきたいと考えるようになりました。味を占めたわけではないのですが、多くの人に見てもらえることが素直に嬉しく、「これだ!」と手応えを感じました。純粋に喜びを感じる自分がいたことも、大きな理由のひとつです。
オフ会では少人数で集まり、カフェでお茶をしながらお話をしたり、情報交換をしたりしています。参加者は、ほとんどが私のフォロワーさんですね。これまでに、ゴミ拾いオフ会や、最近では「発達バー」イベントなども開催しています。「こくちーず」というサイトで募集しているため、誰でも参加可能です。
これまで出会ったなかで、特に印象に残っている人が2人います。1人は、境界知能を抱えながらも仕事を頑張り、車で運転したり旅行を楽しんだりしている方です。もう1人は、ハンデを抱えながらも家庭環境に恵まれず、さらには親からも愛されず、大学を中退してしまった過去を持つ方です。
後者の方は、暴言を受けたり支援を受けられなかったりするなかで、家を早く出るために風俗の仕事をしていたこともあるそうです。現在は結婚され、仕事をやめて生活されているとのこと。こうしたさまざまな経験を持つ方々に出会い、とても刺激を受けました。
当事者の居場所となる「発達バー」

ー社会人になってから始めた活動や、そこから得た学びについて教えてください。
障害を持っている当事者の方を対象にした「発達バー」イベントを始めました。お酒を飲める年齢になったこともあり、以前から憧れがあったんです。発達障害や境界知能、知的障害を持つ方が、自分らしくいられるラフな時間を提供しています。さらには、運転免許や小型二輪のバイクの免許も取得しました。
発達バーのお客さんは本当にさまざまで、20代からご年配の方まで、老若男女問わず幅広い層の方が訪れます。仕事関係で関わっている方や娘さんが障害を持つという女性もいらっしゃいます。
会話を重ねるなかで、皆さんがそれぞれハンデや壮絶な過去、さまざまな体験を持ちながらも、仕事や生活を頑張っている姿から多くを学びました。今を楽しく生きている方もいれば、これまで出会ったことのないような人生や体験を持つ方もいて「世の中にはいろんな人がいるんだな」という印象を受けます。
ー今後に挑戦したいこと、周囲に伝えたい思いを教えてください。
いつかは本を出してみたいと考えています。YouTubeでは、いろいろな人が動画を見てくれることがとても嬉しいです。今後も、ご家族や当事者、教育関係者など、悩んでいる人にも動画を通して誰かの力になれたらと思っています。
スマホを通じて、直接会えなくてもエールを送ることができるのはありがたいことです。動画を見て、少しでも多くの人が勇気を出して一歩踏み出すきっかけにしてくれると嬉しいですね。
また、普通二輪バイクの免許を取得し、バイクに乗っていろいろな場所を訪れることにも挑戦したいです。訪れた場所のおすすめをSNSで発信して、皆さんに伝えられたらいいなとも思っています。
これはあくまで私の価値観でしかありませんが、もし周りに軽度知的障害の方がいたら、なんでもいいので簡単な会話をしてもらえたらなと思います。距離を取らない、壁を作らないようにし、些細なコミュニケーションを取っていただきたいです。どんなに小さいことでも頑張る力になると思いますし、本人も生きやすくなると信じています。


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