
ピタゴラスイッチやだんご3兄弟などの作品で知られるメディアクリエイター・佐藤雅彦氏の創作活動を振り返る「佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」が横浜美術館で開催中です。2025年6月28日から11月3日まで、同館のリニューアルオープン記念展として開催されており、11月1日には東京大学安田講堂で佐藤氏本人による特別講演会が行われました。本展覧会は、佐藤雅彦氏の40年にわたる創作活動を一堂に紹介する世界初の大規模個展として、表現者・教育者として世に送り出してきた数々のコンテンツを展示しています。
展覧会では、電通時代に手がけたテレビコマーシャルをはじめとする広告作品、プレイステーション用ソフト「I.Q インテリジェントキューブ」、NHK教育の教育番組「ピタゴラスイッチ」など、多様なメディアを横断した作品群が紹介されています。1988年の湖池屋「スコーン」や1990年の「ポリンキー」、1991年のNEC「バザールでござーる」、1992年のサントリー「モルツ」といった時代を代表するCM作品が展示され、それぞれの制作意図と方法論が解説動画とともに紹介されています。
佐藤氏の創作活動の根幹にある「作り方を作る」という思想に基づき、独創的なコミュニケーションデザインの方法論が明かされています。佐藤氏の独特なアプローチの核は、作品そのものを制作することより「作り方」を構築することにあります。展示を通じて、いかにして汎用的で再現可能な「作り方」が創出されるのか、そして人々が「分かる」ための方法論がどのように組み立てられるのかが、展示資料と解説を通じて理解できるのです。
佐藤氏は1999年から慶應義塾大学環境情報学部教授として教育活動も開始し、2002年には「慶應義塾大学佐藤雅彦研究室」で「ピタゴラスイッチ」を立ち上げました。電通退社後の1994年に企画事務所「TOPICS」を設立してから、プレイステーション向けゲーム「I.Q」は売上本数総計101万本、「だんご3兄弟」のCD売上は380万枚を記録するなど、ジャンルを横断したコンテンツを次々とヒットさせています。本展覧会の後半では、この「佐藤雅彦研究室」での活動に焦点が当たり、教育と創造が一体となった制作プロセスが紹介されます。
東京大学での講演で創作の軌跡を語る
11月1日の講演会では、佐藤氏が自身の創作活動について「表現方法論」として2部構成で語られ、東京大学の安田講堂に多くの聴講者が集まりました。展覧会開催期間中は11月1日午後8時まで開館時間を延長する夜間開館も実施されており、より多くの来館者に対応しています。本展覧会は、単なる作品の展示に留まらず、日本のメディア表現と教育デザインの発展に大きな役割を果たしてきた一人のクリエイターの思考過程と方法論を、実際の制作資料を通じて学べる機会を提供しています。












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