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自分の生まれた記念日であり、新たな一年を迎える素敵な1日である誕生日。
友人とお祝いしたりプレゼントをもらったり、何かと楽しい日ですが、実は誕生日には死亡率が上がるという恐ろしい統計が存在します。
今回は、そんな恐ろしくも興味深い誕生日と死亡率の関係について、いくつかの文献を紐解きながら見ていきます。
誕生日は死亡率が上がる?
昔から誕生日には死亡率が上がるのか、下がるのかという議論はありましたが、どちらなのかははっきりとしませんでした。そこで、スイスのチューリヒ大学がその疑問に対しての研究を行っています。
この研究は、1969年から2008年のスイスの死亡統計データを分析したものです。
この40年の死亡データの解析の結果、出生日は普段より13.8%死亡が増えるという結果が出ています。この時の死因を見てみると、心血管疾患や脳血管疾患、自殺や事故の増加が見られました。また、当初は予想されていなかった癌による死亡率の増加が見られました。
誕生日などの記念日には、普段よりも興奮したり、食事をたくさん取ったり飲酒量が増えたりすることから、事故や自殺が増えると考えらえます。
また、誕生日と重なって辛い出来事などが起きた時には、アニバーサリ反応と呼ばれる現象が関連し、精神が不安定になることも自殺が増える要因と考えられます。
アニバーサリー反応というのは、辛い出来事を乗り越えたと思っていても、節目の時期になると辛い気持ちが蘇ってくる現象です。誕生日などの明確な記念日の時期に辛いことがあると、よりその辛い記憶を思い出しやすくなるため、自殺などが増える要因になり得ます。
参考
舩木伸江,矢守克也,中村翼. 大災害の当日生まれの青年の苦しみと回復過程.質的心理学研究 2021;20:224 -236
飲酒や暴飲暴食、普段と異なる生活パターンは、心臓血管系の疾患のリスクにもなりこれも死亡率を上げていると考えられます。また、初めて飲酒可能になる年齢でのアルコールに関連する事故などもあり、アメリカでは飲酒が可能になる年齢の誕生日に、警告メールがくる地域が存在します。
癌による死亡率が増えている明確な科学的な説明は、なかなか難しく、今回の研究をまとめた文献の中でも予想外であったと記載されています。
自分の誕生日までは生き延びようとする心理的な要因が、結果として誕生日の死亡を増やしているのかもしれないという仮説がありますが、科学的に証明するのは難しいのかもしれません。
これらの統計や分析を見ていると、誕生日だからといって、羽目を外しすぎるのは控えたほうが良さそうです。
外科医は誕生日に手術を失敗しやすい?
誕生日に手術をすると、普段より死亡率が高い。そんな恐ろしい研究結果が出ています。
この研究は、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校で行われた研究で、2011年から2014年に、一般的な緊急手術を受けた65―99歳のメディケア受給者のを解析対象としています。
4万7489人の外科医が行った98万876例の手術が分析対象となり、そのうち、外科医の誕生日に行われた手術は2,064例でした。
これらの手術での補正後死亡率は誕生日でない例で5.6%、誕生日の例で6.9%となり、外科医の誕生日に手術を行うと、1.3%死亡率が増加するという結果になりました。
このような研究が行われた背景としては、外科医が注意散漫になったり、手術をより早く終えようと急いだりすることで、死亡率が上がるのかの検証が必要であったというのがあります。誕生日は心理的に浮ついたり、何かしらの行事に間に合うように、手術を早く終わらせようしたりする心理が無意識のうちに働いてしまいます。外科医も人間なので、やはり心理状態の変化があるということが分かります。
外科医の手術の失敗率が高まるのと同様に、誕生日に浮ついてしまうことを意図的に避けるのは難しく、仕事での失敗なども増えることが示唆される研究結果となっており、誕生日には絶対に失敗したくない大きな仕事をすることは避けるほうが良いのかもしれません。
誕生日も羽目を外さないように楽しむ
今回は、ハッピーな誕生日に、実はハッピーじゃない出来事が起こりがちという話題でした。
誕生日に限らず、何か大きな出来事があると、自分では自覚がなくても心理状況は変化します。それにより、行動が変化して体の状況も変わっていきます。
その結果、死亡率が増えるという現象が起こるのです。
だからといって、誕生日を不吉なものと捉えるのではなく、いつもと違う1日を楽しむ気持ちは持ちつつ、羽目を外さないようにしていきたいですね。