
中国科学院昆明動物研究所の胡新天(Hu Xintian)博士らの研究チームは、40ヘルツ(Hz)の音を聞くことでアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβの排出が促進されることを、世界で初めて霊長類を用いて実証しました。この研究成果は2026年1月、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表され、非侵襲的な治療法としての実用化に向けた大きな前進として注目されています。
アルツハイマー病では、脳内にアミロイドβによる老人斑とタウによる神経原線維変化という2種類の病変が出現します。 世界で最も患者数が多く、日本では2022年時点で65歳以上の約12.3%が認知症に罹患しており、患者数は約443万人です。世界的にも2050年までに患者数が1億5,300万人に達すると予測され、喫緊の公衆衛生課題となっています。
40Hz刺激の研究は、米MITのリー・ファイ・ツァイ博士らがマウス実験で効果を初めて報告したことに始まります。その後、聴覚刺激の効果が確認され、グリンパティック系(脳の老廃物排出システム)を活性化するメカニズムが明らかにされてきました。しかし、これらはすべてげっ歯類を対象としたもので、ヒトとは脳の構造が大きく異なる動物での結果にすぎませんでした。
今回の研究では、ヒトにより近い霊長類である高齢アカゲザル9頭(26〜31歳)で実験を実施。研究チームが聴覚刺激を選択した理由は、アルツハイマー病の病変が視覚野よりも側頭皮質(聴覚を処理する領域)でより顕著に現れるためです。
実験ではサルを3群に分け、第1群には40Hzの音を、第2群にはランダムな音を、第3群には音なしの条件を適用。刺激は1日1時間、7日間連続で行い、脳脊髄液中のアミロイドβ濃度の変化に基づき効果を評価しました。その結果、7日間の40Hz刺激により、脳脊髄液中のアミロイドβ濃度が2倍以上に上昇。ランダムな音や無音では変化がなく、この効果が40Hz特異的であると確認されました。
今回の研究で特筆すべきは、アミロイドβ濃度の上昇が5週間以上持続したことです。マウスでは40Hz刺激の効果は1週間で消失すると報告されており、げっ歯類とサルでアミロイドβの代謝に大きな違いがみられました。ヒトへの応用を考えるうえで極めて重要な知見となります。
霊長類研究が示す可能性と課題
40Hz刺激の実用化に向けた動きは既に始まっています。MITの研究グループから生まれた米国の医療スタートアップCognito Therapeuticsは、アルツハイマー病治療用のヘッドセット「Spectris」を開発。1秒間に40回の点滅と音を発生させることで、脳の視覚と聴覚の経路を活性化し、ガンマ波を生成する仕組みです。
日本でも、アルツハイマー病研究の第一人者である新井平伊院長のアルツクリニック東京が、40Hz変調音用の専用スピーカーを設置した「ガンマ波サウンドルーム」を開設しています。
霊長類研究の実用化への期待が高まる一方で、今回の研究ではサンプル数が9頭と限られており、認知機能の改善までは確認されていません。また、もう一つの病因タンパク質であるタウへの効果はみられませんでした。音を聞くだけという非侵襲的でコストの低い治療法であるものの、ヒトでの有効性や最適な刺激条件の確立には、さらなる研究が必要です。








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